デエビゴ錠 添付文書のCmaxと半減期が図と合わないのはなぜ?

【質問】デエビゴの添付文書 薬物動態の血中濃度のグラフについて。本剤10mgを反復投与した時の投与後14日目の血中濃度推移の図1にあるが、表1の薬物動態パラメータと見比べると、図1と値が一致しないように思い図1の見方に悩んでいます。 例えば表1ではcmaxは70.2ですが、図1で見ると約50ほどに見え、t1/2は表147.4hrに対して図1で見ると5hrほどに見えます。 調べましたが表1がなぜ図1のようなグラフになるのかがどうしても分からず。非常に初歩的な質問となり恐縮ですがよろしければご教示いただけますと幸いです。

【回答】

(エーザイ 株式会社 デエビゴ錠  添付文書より)

デエビゴ錠の添付文書には、薬物動態パラメータを示した表1と、投与後14日目の平均血中濃度推移を描いた図1が載っています。

  • 表1のCmax:約70 ng/mL

  • 図1のピーク:約50 ng/mL

  • 表1の消失半減期:約47時間

  • 図1のカーブから読み取る半減期:約5時間?

この「数字の違い」は、間違いではなく、「計算方法とグラフの描き方がそもそも別」だからです。


Cmax

・表1の70 ng/mLは「6人の被験者それぞれが出した最高血中濃度」を平均化したものです。一方、図1は各時刻ごとに6人の濃度を平均して曲線を描き、その曲線を読んでいるということです。

  • 表1の 70 ng/mL
    → 6人それぞれで「いちばん高かった濃度」を取り出し、その6つを平均した値です。

  • 図1で見えるピーク
    → 測定した各時刻ごとに6人の濃度を平均し、その平均値で描いたカーブを読んでいます。

半減期

図1は投与後24時間までのデータしかありません。グラフ上で血中濃度が半分になるのは5時間くらいに見えますが、これは「分布相 (α相)」です。つまり、血液中の薬が組織へ移動していく早い段階の変化です。

一方、表1の「約47時間」というのは、「消失相 (β相) 」の半減期です。薬が代謝・排泄される“本当の”時間スケールを表しています。レンボレキサントは3コンパートメントモデルで動くため、このように分布相と消失相がくっきり分かれるということです。


レンボレキサントは定常状態での「半減期(図1)が17~19時間とされ、夜に服用しても翌朝にはかなり濃度が下がります。だから「持ち越しの眠気」が起こりにくいという利点があります。

ただし、最終半減期(表1)が長いということは、「体内に蓄積しやすい」ということでもあります。数日間飲み続ければ、薬が抜けるまでに時間がかかります。休薬期間や投与設計では、この点に注意が必要かもしれません。


まとめると、図1は「平均的な形」を直感的に示すビジュアル、表1は「個々のデータを統計処理した公式な数値」ということです。。ピークや半減期をグラフから確認するときは、「平均のピーク」と「ピークの平均」を取り違えないこと、多相性の薬では観察時間が短いと本当の消失相が見えくなっています。

平均のピーク
各測定時点における全被験者の血中濃度を平均し、その平均値を連続的にプロットして得られた曲線の頂点のことです。つまり、「平均された曲線の中で最も高い点」を意味します。図1のピーク。

ピークの平均
各被験者が記録した最大濃度(Cmax)を個別に取り出し、それらの値を平均したもの。
つまり、「一人ひとりのピーク値」を集めて、その平均を出したものが表1のCmax。

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