大腸検査前の下剤服用時でも常用降圧剤の効果は維持されるか?

【質問】大腸検査時に常用薬の降圧剤などは内服するよう指示が出ることがあると思いますが、前夜・当日に下剤を内服するから降圧剤などを飲んだとしても(直ぐに便として流れて?)効果がないのではないか?と質問を受けましたが、何となく納得させる感じの返答しか出来ませんでした。 今後の参考までにご教示頂けると幸いです。

【回答】下剤使用により経口薬の消化管通過が早まり、吸収時間が短縮される可能性があります。

モビプレップの添付文書には「薬剤の吸収に及ぼす影響:本剤による腸管洗浄が経口投与された薬剤の吸収を妨げる可能性があるので、投与時間等に注意すること。」と記載されています。

また、モビプレップと類似薬で米国で発売されているColyteという薬剤の添付文書には「Oral medication administered within one hour of the start of administration of Colyte may be flushed from the gastrointestinal tract and the medication may not be absorbed properly. 投与開始から1時間以内に経口投与された薬剤は、消化管から排出される可能性があり、薬剤が適切に吸収されない可能性があります。」と記載されています。

そのため、内服薬は下剤服用の少なくとも1〜2時間前に服用することで、ある程度の吸収は維持できると考えられます。

特に徐放剤は排出が速いと有効成分が放出・吸収される前に体外へ出てしまう可能性があります。実際、ニフェジピン徐放錠(高血圧治療薬)を検査当日に服用した患者で、溶け残った錠剤が大腸内視鏡中にポリープ様に見える事例が報告されています​。(American Journal of Gastroenterology 106:p S331, October 2011.) このケースではポリエチレングリコール(マクロゴール)により、錠剤のまま大腸まで到達し、十分に有効成分が放出されないまま排出されたと考えられます​。

まとめると、モビプレップなどの下剤、腸管洗浄剤によって経口薬の吸収は低下する可能性がありますが、服用タイミングを工夫すればある程度の吸収は維持できると考えられます。また、薬剤の種類によっては消化管での主な吸収部位が小腸であり、完全に排泄される前に吸収される可能性もあります。さらに多くの降圧薬は半減期が長めで前日の血中濃度が残っているものも多く、朝の一回分が吸収低下しても薬効が全く失われるわけではないと考えられます。

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