DOACから他のDOACへの切り替えの考え方は?

【質問】DOACを服用していて血栓症が発症した場合に他のDOACに切り替えることがあるかと思いますが、その切り替え方法の考え方についてご教示ください。よろしくお願いいたします。

【回答】DOACの切り替えを検討する際は、作用機序の違いを理解することが重要です。DOACには直接トロンビン阻害薬であるダビガトラン(プラザキサ)と、Xa阻害薬であるアピキサバン(エリキュース)、リバーロキサバン(イグザレルト)、エドキサバン(リクシアナ)があります。また、1日1回投与か2回投与かという服用方法の違いがアドヒアランスに影響を与える可能性があるため、患者の生活スタイルに合わせた選択が必要です。さらに、副作用の有無や出血リスク、腎機能等の臓器機能といった患者背景も考慮に入れる必要があります。下記の通り、DOACの直接比較による明確な優位性は確立していませんが、メタ解析等の結果からは、消化管出血リスクについてはアピキサバンが最も低く、エドキサバンとリバーロキサバンが中間的、ダビガトランが比較的高いという傾向が報告されています。

DOACの主な違い

  • 直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン : 商品名 プラザキサ)は1日2回投与で、胸焼けなどの消化管症状が起こりやすい。出血性合併症の場合に中和剤である特異的拮抗薬(イダルシズマブ : 商品名プリズバインド静注)があり、重大な出血時にコントロールがしやすいことがメリット。
  • アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン(Xa阻害薬)はいずれも血液凝固カスケード(凝固系)の中心的な役割である第Xa因子を阻害する。アピキサバンは通常1日2回、リバーロキサバンとエドキサバンは1日1回で、腎機能や体重に応じて減量基準が設定されている。
  • リクシアナは低用量規格の15mgがあり、通常用量の60mgに加え、低用量規格の15mgがある。15mgの低用量は出血リスクが高い患者(高齢、低体重、腎機能低下など)で使用しやすい。( N Engl J Med. 2020;383(18):1735-1745.)
  • DOAC同士の優位性は大きくは差がないとされるものの、解析によってはアピキサバンがやや出血リスクが低いことが示されている。 (Front Med (Lausanne). 2020;7:107.) https://dig.pharmacy.uic.edu/faqs/2022-2/may-2022-faqs/what-is-the-strength-of-evidence-available-on-the-risk-of-gi-bleeding-with-direct-oral-anticoagulants/
  • 高齢の心房細動患者(75歳以上)では、脳卒中予防効果が最も高かったのはアピキサバンで、次いでリバーロキサバン、エドキサバンの順であったが、これらの違いは統計的に有意ではなかった。(A network meta-analysis. Front Med (Lausanne). 2020;7:107.)
  • 消化管出血リスクはアピキサバン(最もリスクが低い)<エドキサバン, リバーロキサバン<ダビガトランとの報告。(https://dig.pharmacy.uic.edu/faqs/2022-2/may-2022-faqs/what-is-the-strength-of-evidence-available-on-the-risk-of-gi-bleeding-with-direct-oral-anticoagulants/)
  • ダビガトラン150mgは脳卒中抑制効果が高い可能性があるという報告もあるが、全体的にはDOACはすべて脳卒中予防に有効であることが示されている。( PLoS One. 2014;9(6):e99276.
  • リバーロキサバンやエドキサバンは服用回数が1日1回と服薬しやすい。
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