【質問】骨軟部組織感染症に対する局所高濃度抗菌薬灌流療法においてゲン
【回答】骨軟部組織感染症へのCLAP療法では、腎機能低下時でも全身投与とは考え方が異なり、局所での治療効果を最優先します。そのため灌流液濃度は維持しつつ、安全のためにTDM(週1〜2回、目標トラフ値<2µg/mL)で全身への影響をモニタリングします。下記に示す通り、臨床経験上、多くの腎機能低下例で血中濃度が危険域に達することは稀と考えられますが、デブリが大きいなど薬剤が全身循環に乗りやすいハイリスク例では、特に綿密な管理と腎毒性薬の併用回避が重要です。
AI-PHARMAより回答
①いわゆるCLAPですが、週1回はTDMすることを考案された先生は推奨しておりますが、腎機能低下時の指針は現時点では十分ではないかと思いますが、自験例では非低下例と大きく差はない印象です。ただ、局所投与ですので、手術時に大きくデブリしていたり血管を傷つけている場合には循環にのるため、より綿密なTDMが必要かと思います。また、キノロン等の全身投与との併用は避けるように対応しています。(AI-PHARMAより回答 https://aifaq.aipharma.jp/user/#/searchBulletinBoard?id=1778&code=sWBX58LNPAHy387 )
②当院では適応外使用としての申請の際、週2回血中濃度を測定し、2μg/mLを超えていないことを確認することになっています。高齢者が多く、年相応に腎機能低下のある患者がほとんどですが、今まで2を超えた事例はありません。確かに循環にのる可能性が高いケースは要注意かと思います。
(AI-PHARMAより回答 https://aifaq.aipharma.jp/user/#/searchBulletinBoard?id=1778&code=sWBX58LNPAHy387 )
③腎機能が低下している患者様へCLAPでゲンタマイシンを使用する場合、その用量設定の考え方は全身投与とは異なります。局所での治療効果を最大限に得るため、灌流液中のゲンタマイシン濃度を腎機能に応じて直接減量することは一般的ではありません。その代わり、局所から全身へ吸収される薬物による副作用を防ぐため、治療薬物モニタリング(TDM)の実施が強く推奨されます。
1. 腎機能低下時の用量設定
CLAP療法は、全身投与では安全に到達できない極めて高い濃度の抗菌薬を感染局所に直接送り込み、バイオフィルムを形成した難治性の細菌を根絶することです。「局所での圧倒的な高濃度」が重要であるため、腎機能が低下していることを理由に灌流液の濃度を下げてしまうと、期待される治療効果が得られなくなる可能性があります。
そのため、CLAPにおける用量設定は、腎機能に応じて投与量を厳密に調整する全身投与とは異なっています。
- 全身投与の考え方:腎機能に応じて投与量や投与間隔を調整し、全身の血中濃度を「有効かつ安全な範囲」に保つことを目指します。
- CLAPでの考え方:まず「局所での十分な治療効果」を目的として高濃度の灌流液を使用します。その上で、局所から全身へ漏れ出てくる薬物量を「安全な範囲」に抑えることを考えます。
つまり、CLAPにおける「調整」とは、灌流液の濃度そのものを変更するのではなく、TDMによって全身の血中濃度を監視し、もし薬物が体内に蓄積して危険なレベルに近づくようであれば、灌流時間を短縮したり、一時的に休薬期間を設けたりすることで、全身への総曝露量をコントロールします。
2. TDMの必要性
CLAPは局所療法ですが、灌流部位からゲンタマイシンが全身の血流へ吸収されることは避けられません。腎機能が正常であれば、吸収された薬物は速やかに排泄されます。しかし、腎機能が低下している患者では排泄が遅れるため、薬物が体内に蓄積し、腎毒性や聴器毒性(めまい、難聴など)のような全身性の副作用を引き起こすリスクが高まります。
このリスクを管理するために、TDMが重要です
- TDMの目的:CLAPにおけるTDMは、全身投与のように「治療効果のある血中濃度」を確認するためではありません。意図せず全身に吸収されたゲンタマイシンが蓄積していないかを確認し、毒性を予防するためです。
- モニタリングの対象:特に、薬物の蓄積と関連が深い血中トラフ濃度を注視します。目標値としては、副作用リスクが低いとされる2.0 µg/mL未満、可能であれば1.0 µg/mL未満に維持することが推奨されます。
TDMで血中濃度の上昇や腎機能の悪化が認められた場合は、前述の通り、灌流計画(灌流時間や頻度など)の変更を迅速に検討する必要があります。