【Q】カリウム製剤の換算は?塩化カリウム徐放錠と散剤の常用量が大きく異なる理由は?

【質問】簡易懸濁でアスパラKが処方された場合は、塩化カリウムの散剤への切替を推奨しています。体内利用率などの違いで、常用量換算で切り替えると思います。
・散剤の塩化カリウム 26~130mEq/日
・塩化カリウム徐放錠600mg 32mEq/日
と添付文書に記載あり
錠剤と散剤でかなりの違いがあるのですが、成分は同じのため、錠剤のカリウム値で換算し、アスパラKの2倍のmEq量で散剤の塩化カリウムに切り替えていますが、どう思われますか?徐放化されることで吸収率なども変わってくるのでしょうか?

【回答】カリウム保持性利尿剤の有無や腎機能低下患者などの背景を考慮した上で、換算量を参考とした添付文書に沿った用量からスタートし、血中カリウム値を随時モニタリングしながら用量を調整することが必要です。質問にあるように「錠剤のカリウム値で換算し、アスパラカリウムの2倍のmEq量で散剤の塩化カリウムに切り替え」で問題ないと考えられます。塩化カリウム徐放錠は消化管粘膜への刺激を軽減する理由でマトリックス構造の徐放錠となっており、吸収率などを考慮した用量設定はされていないと考えられます。

(1)文献
42歳〜69歳の7名の低カリウム血症患者に対して行われた症例から、アスパラギン酸カリウムは塩化カリウム(無機カリウム)の1/4~1/2のK含有量以下で治療効果が充分であることが報告されています。

→塩化カリウム(無機カリウム)はアスパラギン酸カリウムに換算すると2〜4倍のmEq量となります。

(2) 添付文書

・塩化カリウム徐放錠 (ケーサプライ錠600mgの常用量):32mEq/日
・アスパラギン酸カリウム (アスパラカリウムの常用量) :  カリウム5.4~16.2mEq/日

であり、1日量の最大投与量から

塩化カリウム徐放錠 : アスパラギン酸カリウム = 32mEq : 16.2mEq

→塩化カリウム徐放錠 (mEq)= アスパラギン酸カリウム ×2 (mEq)

となります。

(3) 動物を用いた試験

イヌを用いた試験によると アスパラギン酸カリウムをKとして1mEq/kg/hrを2時間静脈内持続投与において,3 時間後の体内保有率は約70%であり、塩化カリウム(約30%)より良好であった と報告されています。

以上をまとめると、塩化カリウム徐放錠 (mEq)= アスパラギン酸カリウム(mEq) ×2 が目安と考えられます。

アスパラギン酸カリウムは塩化カリウム(無機カリウム)と比較して、組織移行性や生体内利用率が高いためと考えられます。

 

塩化カリウムの徐放錠について
塩化カリウム徐放錠600mgは消化管粘膜への刺激を軽減する理由でマトリックス構造の徐放錠にしており、薬物の吸収や用量設定については言及されたものはありません。

入院患者において、低カリウム血症の治療として、カリウムを投与した後、6人に1人の患者が軽度の高カリウム血症を発症していることも報告されているなど(Nephrol Dial Transplant. 22(12):3471-7, 2007)、高カリウム血症のリスクが存在し、添付文書に沿った用量かつ少ない用量で開始することが、適切と考えられます。

よって、質問にあるように、【「錠剤のカリウム値で換算したアスパラKの2倍のmEq量」の散剤の塩化カリウム】で問題ないかと思います。

以上をまとめると、カリウム保持性利尿剤の有無や腎機能低下患者など考慮した上で、換算量を参考とした添付文書に沿った用量からスタートし、血中カリウム値を随時モニタリングしながら用量を調整することが適切なのではと思います。

 

入院患者において、低カリウム血症の治療として、カリウムを投与した後、6人に1人の患者が軽度の高カリウム血症を発症していることも報告されており、カリウムの投与量については十分に注意する必要があります。腎機能低下や悪性腫瘍により、カリウムが上昇したことも理由の一つにあげられる。 (Nephrol Dial Transplant. 22(12):3471-7, 2007)

高濃度カリウムが局所に蓄積することにより消化管潰瘍や消化管出血を発症するため、徐放性の錠剤は忍容性が高くなっている。 (Arch Intern Med. 160(16):2429-2436, 2000)

 

塩化カリウム散
塩化カリウムとして,通常成人1日2~10gを数回に分割し,多量の水とともに経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
1 g中 日本薬局方 塩化カリウム 1g (カリウムとして13.4mEq)

塩化カリウム徐放錠600mg
通常成人には1回2錠 (塩化カリウムとして1,200mg) を1日2回食後経口投与する。
1錠中「日本薬局方」塩化カリウム600mg(カリウムとして8mEq)

アスパラカリウム錠300mg / アスパラカリウム散50%
L -アスパラギン酸カリウムとして、通常成人1日0.9〜2.7g (錠:3〜9錠、散:1.8〜5.4g) を3回に分割経口投与する。 なお、症状により1回3g (錠:10錠、散:6g) まで増量できる。

(各社 添付文書)

 

 

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