【質問】TPN継続による肝機能悪化について機序、対応が知りたいです。
【A】高カロリー輸液 (TPN) による肝障害によりASTやALTの上昇がみられることがあります。この発症機序についてはまだ明らかにされていませんが、いくつかの要因が考えられます。
1. エネルギー量の増加によるもの
TPN開始時により、エネルギー量が急速に増加し、エネルギー量が過剰になるため発症する。
→この場合、投与量を減らしたり、時間が経過すると改善します。経験則的にAST、ALTが100 IU/L 未満程度であれば継続しても問題ないと考えられます。
2. トリグリセリド産生による脂肪肝の促進
TPNによるグルコース過剰によって、トリグリセリドが産生されるため発症する。グルコースは肝臓内でグリコーゲンとして蓄積され、さらにトリグリセリドが過剰産生されて、肝臓に脂肪として蓄積される。
3. 高インスリンによる脂肪肝の促進
グルコース過剰による高インスリン血症となるため発症する。インスリンは中性脂肪の合成を促進、分解を抑制するため、脂肪肝の促進につながる
→2. 3 を抑制するには、投与カロリーの20〜30%を脂肪乳剤で投与することが必要です。脂肪乳剤を投与することで、グルコース過剰が抑制され、肝障害が低下すると考えられます。
以上をまとめると、TPNによる肝障害を防止するには、1. 適切なエネルギー量のTPNの選択、2. 脂肪乳剤の併用、3. 経口経腸栄養への切り替えなどが挙げられます。
(参考 : Nutrition Care vol.12 (2), 2019 静脈経腸栄養ガイドライン)