【Q】ドキシルは壊死性 or 炎症性抗がん剤のどちらか?血管外漏出時にサビーンは使用可能か?

【質問】血管外漏出時の分類について質問です。ドキソルビシンは壊死性とされていますが、リポソーム化ドキソルビシン  (商品名ドキシル) は炎症性薬剤に分類されています。理由を知りたいです。また、ドキシル漏出時にサビーンを使用することは必要なのでしょうか?

【A】リポソーム化ドキソルビシン  (商品名ドキシル) が「炎症性抗がん剤」に分類されている理由は明らかにされていませんが、血管外漏出時には「壊死性抗がん剤」と同様に注意が必要と考えられます。また、ドキシルの血管外漏出時にサビーン点滴静注の使用は可能と考えられます。

リポソーム化ドキソルビシンとは?
リポソーム化ドキソルビシン (商品名 : ドキシル) はMPEG-DSPEで修飾されたSTEALTHリポソームに、ドキソルビシン塩酸塩が封入された製剤です。
MPEG-DSPE:水溶性の高分子ポリエチレングリコール

ドキソルビシンにリポソームが封入されることにより以下のようなメリットがあります。
・ドキソルビシンの腫瘍組織内滞留時間を延長させ、腫瘍組織内濃度を高める→有効性を改善
・血漿中の遊離型ドキソルビシンの濃度を抑える→骨髄抑制・脱毛・心毒性等の有害反応が軽減

 

リポソーム化ドキソルビシンが炎症性抗がん剤に分類されている理由は?
薬剤の組織障害性によって壊死性、炎症性、非壊死性に分類されます。リポソーム化ドキソルビシンの分類は「炎症性抗がん剤」ですが、主薬のドキソルビシン塩酸塩は「壊死性抗がん剤」に分類されています。リポソーム封入することにより、毒性が低下していることと考えられますが、「炎症性抗がん剤」に分類された理由は明らかにしていません。

ESMOの臨床診療ガイドラインにおいても、ドキソルビシンは「壊死性抗がん剤」に分類されており、リポソーム化ドキソルビシンは「炎症性抗がん剤」に分類されています。
(Management of chemotherapy extravasation: ESMO–EONS Clinical Practice Guidelines. Annals of Oncology 23 (Supplement 7): vii167–vii173, 2012)

ドキシル注20mgの適正使用ガイド (持田製薬) には以下の通り記載されています。

ドキシルの分類は炎症性抗がん剤(irritant drug)ですが、主薬のドキソルビシン塩酸塩は起壊死性抗がん剤(vesicant drug)に分類されています。国内市販後において、ドキシルとの関連が否定できない血管外漏出による注射部位壊死及び重篤な皮膚障害が報告されていることから、静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れないよう注意してください。

一方で、「リポソーム化ドキソルビシン」が「壊死性抗がん剤」に分類された資料もあります。(抗がん剤の血管外漏出予防と対応ガイド キッセイ薬品工業株式会社)

 

ドキシル漏出時にサビーンを使用することは必要か?
サビーン点滴静注用500mgの臨床試験 (安全性評価例 1例) において、「リポソーム化ドキソルビシン」の血管外漏出時に対して使用されています。また、病院内規において、サビーン点滴静注用500mgの使用を可能と明記されているものもあります。

サビーン点滴静注用500mgの保険適用も「アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出」であり、アントラサイクリン系である「リポソーム化ドキソルビシン」に対する使用も可能と考えられます。

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