【質問】欠食は、
【回答】
欠食による水分摂取量の減少は、SERM (選択的エストロゲン受容体モジュレーター)の静脈血栓塞栓症、活性型ビタミンD3製剤の高カルシウム血症という、それぞれの副作用のリスクを高める可能性が考えられます
製品の添付文書に「脱水」に関する直接的な注意喚起はありませんが、その背景にある医学的なメカニズムから、水分補給の重要性はありそうです。
① SERM製剤と静脈血栓塞栓症のリスク
SERM製剤(ラロキシフェン、バゼドキシフェンなど)は、その薬理作用により血液凝固系のバランスを変化させ、血液が固まりやすい状態を作り出す可能性があります。これが静脈血栓塞栓症のリスクを増加させる理由です。
ここに「欠食による水分不足」が加わると、リスクはさらに高まります。食事を1回抜くことで約400mlの水分摂取が滞ると、体は脱水傾向になります。脱水は体内の血液から水分を減少させ「血液濃縮」を引き起こします。血液が濃縮されると、赤血球や凝固因子などの成分の濃度が高まり、血液の粘稠度が増します。この血液の粘稠度の増加は、血栓形成の主要な要因となります。
② 活性型ビタミンD3製剤と高カルシウム血症のリスク
活性型ビタミンD3製剤(エルデカルシトール、アルファカルシドールなど)は、腸管からのカルシウム吸収を促進することで骨を丈夫にしますが、血中カルシウム濃度が上昇する可能性があります。
この状態で「欠食による水分不足」が起こると、高カルシウム血症のリスクが増大すると考えられます。
- 相対的なカルシウム濃度の上昇:脱水により血液全体の水分量が減るため、血液が濃縮され、相対的に血中カルシウム濃度が高くなります。
- 腎臓からのカルシウム排泄の低下:脱水状態では、体は水分を保持しようとして腎臓への血流を減らし、尿量を減らします。これにより、カルシウムを尿中へ排泄する腎臓の能力が低下し、血中にカルシウムが溜まりやすくなります。
高カルシウム血症の症状として多尿(尿量の増加)があり、これがさらなる脱水を招きます。そして、その脱水が腎臓からのカルシウム排泄を一層困難にし、高カルシウム血症をさらに悪化させることもあります。
参考文献
・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版
・The effect of raloxifene on risk of breast cancer in postmenopausal women: results from the MORE randomized trial. JAMA. 1999;281(23):2189-97.