【A】2015年度版 乳がん診療ガイドラインには「タモキシフェンにアロマターゼ阻害薬を併用することの有用性はない (グレードD)」、「ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。」と記載されていた。
2018年度版 乳がん診療ガイドラインにはこれらの記載は削除されている。2018年度版 乳がん診療ガイドラインの改定にあたり以下の記載がある。
2018年のガイドラインの改定にあたり、「益 (生存期間など)と害 (毒性など)」のバランスを考慮して、2015年までの作成手順を変更した。推奨度の強さを前回までの科学的根拠だけではなく、日常臨床で介入することによって起こる益と害のバランス、患者希望の一貫性、経済的視点を踏まえて決定された。
前版でのグレードの推奨グレード(A、B、C1、C2、D)から推奨の強さ(1、2、3、4)に変更とした。 (参考 : 乳がん診療ガイドライン 2018年度)
2018年度版でアロマターゼ阻害薬使用時のSERMの併用の記載が削除された理由は不明である。
しかし、2020年度に追補された乳がん診療ガイドラインには再び、「ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。」と記載された。
以下に詳細を記載する。
ラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかし,ATACにおいてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し,しかもアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時にラロキシフェンを併用することは推奨されない。(乳がん診療ガイドライン 2015年度)
→2018年度版では削除→2020年度改訂版では同内容であるが、以下に変更タモキシフェンと同様に選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)であるラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されている。しかし,ATAC試験においてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し,さらにアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが明らかとなった。ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時のラロキシフェン併用は推奨されない。 →(乳がん診療ガイドライン 2020年度改訂版)