【Q】心不全におけるファンタステック4とは?それぞれの投与の順番は?

【A】心不全(左室駆出率の低下した心不全=HFrEF(ヘフレフ))に対して「βブロッカー」「SGLT2阻害薬」「ARNI」「MRA」の4剤を投与することが全死亡の減少に有効であると数々の文献で、報告されています。

・日本の「2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」や、2021年のESC Guidelinesにもこの4剤の使用が推奨されています。European Heart Journal 42, 3599-3726, 2021 (2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure)

95,444人の参加者を対象とした75の関連試験において、【ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、ジゴキシン、hydralazine-isosorbide dinitrate、ARNI、SGLT2阻害薬)、vericiguat、omecamtiv-mecarbil】の中でARNiARNI、SGLT2阻害薬、β遮断薬、ARNIの併用が最も全死亡の減少に有効であることが報告されています。(JACC Heart Fail.10(4):295-296.2022)

・4剤の併用はACE阻害薬とβ遮断薬の併用と比較して、心血管死や最初の心不全入院から8.3年、さらに6.3年の生存期間を延長させると報告されています。(European Heart Journal, Vol42 (6),681–683,2021)

・ファンタスティックフォーは、アメリカのコミックに登場するヒーローの名前と同じです。文献のタイトル「Heart failure drug treatment: the fantastic four」(European Heart Journal, Vol42 (6),681–683,2021)に心不全の薬物治療がまとめられています。

・SGLT2阻害薬‥現在、心不全に適用があるのはフォシーガ錠、ジャディアンス錠のみ
・ARNI(アーニー)‥エンレスト錠。これまでは第一選択であったACE阻害から切り変えて使用する
・MRA‥アルダクトン、エプレレノン(セララ)、エサキセレノン(ミネブロ)、ケレンディア(フィネレノン)

ファンタスティックフォー「βブロッカー」「SGLT2阻害薬」「ARNI」「MRA」の投与の順番は?

投与の順番には、統一された見解はありませんが以下の報告があります(2022年10月現在)。

  • β遮断薬とSGLT2阻害薬を同時に開始し,1〜2週間後にサクビトリル/バルサルタンを開始し、その1〜2週間後にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を開始するという3ステップが報告されています。4週間以内に4剤を開始するいうことです。
  • 「βブロッカー」「SGLT2阻害薬」「ARNI」「MRA」は2〜4週間以内に4剤の全てを導入します。
  • 4剤の効果はそれぞれ独立しており、患者背景や安全性などで投与の順序を変更します。
  • 4剤はいすれも低用量で効果があり、個々の薬剤の増量よりも4種類の導入が推奨されます。

(Eur J Heart Fail. Jun;23(6):882-894.2021, Circulation. 143:875-877, 2021)

 

ファンタステック4

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