【Q】ラゲブリオカプセルは脱カプセルや簡易懸濁法は可能か?

【A】ラゲブリオカプセルの服薬が困難であれば、脱カプセルし、水に溶解して、懸濁液として投与することも選択肢の一つと考えられます。ただし、カプセルをそのまま微温湯で簡易懸濁したデータはありません。

  • ラゲブリオカプセルは0号カプセルであり、長径2.17cmと大きいため、高齢者などが服薬できないケースが臨床現場において散見されます。2022年2月に発売された当初は、脱カプセルの安定性データは開示されておりませんでした。発売されてからしばらく経過した後に、MSD株式会社のWebsiteにおいてラゲブリオカプセルの脱カプセルのデータが公開されました。この中で、ラゲブリオカプセルを脱カプセル後、水に溶解させた懸濁液として投与しても、カプセル投与同等のAUCであったと報告されています。
  • ラゲブリオカプセルの脱カプセルのデータが公開されたことにより、脱カプセル後に水に溶解して、懸濁液として経口投与することも選択肢の一つとなりました。ただし、ラゲブリオカプセルを水で溶解せずに粉末状態のまま服薬したデータはありません。
  • 妊婦、妊娠の可能性がある女性への曝露に注意が必要と考えられるため、脱カプセル時に被曝しないよう注意する必要があります。さらに、安定性の観点から、懸濁後の投与はできるだけ早く行うことが必要と考えらます。
  • ラゲブリオカプセルの脱カプセルは、承認外の用法用量であるため、脱カプセルが推奨されていないことは念頭に入れておかなければいけません。カプセルが大きくて服薬困難な高齢者などに対しては、脱カプセルも現場の判断で選択肢の一つであるという程度にしておく必要があります。
    (参考 : ラゲブリオカプセル 製品基本Q&A)

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以下にMSD株式会社Websiteのラゲブリオカプセルに関する記載内容を示しました。

 

脱カプセル・懸濁・簡易懸濁投与の可否、使用経験は?
本剤を脱カプセルや懸濁、簡易懸濁して投与することは、十分に検討したデータがないため、やむを得ない場合を除き、おすすめしていません。これまでの臨床試験における使用経験は以下のとおりです。

<使用経験:懸濁液の経口投与※(1)>
第Ⅰ相臨床薬理試験において外国人健康成人にボトル入りの粉末製剤を水に溶解した用時調製の懸濁液を、モルヌピラビルとして50~800 mg※の用量で単回経口投与しました。
その結果、懸濁液を単回投与した被験者の血漿中NHC (1) の曝露量 (AUC) は、カプセルで同じ用量のモルヌピラビルを単回投与した他の被験者の血漿中NHCの曝露量と類似していました。
なお、評価したすべての用量のモルヌピラビルの忍容性は概して良好で、重篤な有害事象は認められませんでした。

<使用経験:脱カプセル後に懸濁し、経鼻胃管/経口胃管で投与※>
外国人入院患者を対象とした臨床試験(001試験)(2)では、カプセルを嚥下できなくなった患者には、本剤の懸濁液(3)を経鼻胃管又は経口胃管にて投与することが許容されていました。懸濁液を経管投与された5症例のNHCの血中濃度は、カプセル製剤を経口投与された患者の血中濃度の範囲内であり投与方法による差は示唆されませんでした。なお、脱カプセルした粉末を直接経口投与した経験はありません。また、簡易懸濁法(カプセル剤そのままを微温湯に入れる)での投与経験もありません。

(1) NHC: モルヌピラビルの主要代謝物。N-ヒドロキシシチジンの略。
(2)001試験: SARS-CoV-2による感染症患者(入院患者)を対象とした国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験 (MOVe-IN試験)
(3)懸濁液の調製、投与: 個人防護具(4)を着用の上、4カプセルを脱カプセルし、滅菌水40mLを調製用ボトルに加え調製。懸濁液の投与は調製後できるだけ早く、遅くとも調製後2時間以内に行うこと。なお、懸濁後の安定性データはありません。
(4)個人防護具:ゴーグル、マスク、手袋、長袖ガウン、帽子など(妊婦、妊娠の可能性がある女性への曝露を避けるため)

※承認外の用法・用量を含みます。
本剤のご使用にあたっては最新の製品添付文書をご確認ください。
本剤の承認された用法・用量は「通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800 mgを1日2回、5日間経口投与する。」です。

<引用>
(1)治験薬概要書 5.6.1 臨床薬理試験のまとめ、5.6.3安全性のまとめ)

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