【質問】「開封後はなるべく速やかに使用」と水剤や貼付剤に記載されていますが、目安となる期間はどれくらいなのでしょうか? 薬局の大瓶は期限いっぱいまで使っていますか?
【A】貼付剤はインタビューフォームに記載がある「製剤の各種条件下における安定性」を確認することで開封後の期限の目安がわかります。また、点眼剤や水剤は開封後28日間が目安の期限と考えられます。以下、詳細を記載させていただきます。
貼付剤
リバスタッチパッチは「使用期限内であっても、開封後はなるべく速やかに使用すること」と記載されています。インタビューフォームを確認するとリバスタッチパッチ4mg製剤は【25°C・60%RH・700lx】の条件で2週間86.4%、3週間で78.8%まで含量が低下してしまいます。このように、貼付剤に関しては、「製剤の各種条件下における安定性」を確認することで、開封後の具体的な期限を予測できることもあります。
点眼剤
フラビタン点眼液やケタス点眼液、クロモグリク酸Na点眼液の添付文書には「開封後1ヵ月経過した場合は、残液を使用しないこと。」と明確な使用期限が記載されている薬剤が多くあります。これらの理由は、含有成分の低下ではなく、主に微生物混入の懸念から使用期限を設定されていると考えられます。
これらの記載がない点眼液に関しては、保存効力試験法の内容から目安がわかります。
保存効力試験法とは点眼剤や注射剤などに対する「製剤に添加された保存剤の効力を微生物学的に評価する試験」です。この試験では、28日目に混合試料中の生菌数や菌種を調査し、微生物汚染されていないかを確認します。つまり、点眼剤や注射剤は保存効力試験法をクリアしており、開封後28日間において微生物汚染されずに保存できるということです。よって点眼剤は開封後28日間を期限の目安と考えることができます。
水剤
カテゴリー1C (以下に詳細は記載)に分類されていますが、点眼剤と同様に28日後の保存効力試験を行なっており、開封後は28日間が期限と考えられます。
保存効力試験法とは?
保存効力試験法については、日本薬局方で定められており、具体的には「多回投与容器中に充塡された製剤自体又は製剤に添加された保存剤の効力を微生物学的に評価する方法である。製剤に試験の対象となる菌種を強制的に接種、混合し、経時的に試験菌の消長を追跡することにより、保存効力を評価する。」と定められています。
保存効力試験法で検査する菌種は?
寒天培地にて大腸菌 (Escherichia coli)、緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)、カンジダ (Candida albicans) 、アスペルギルス (Aspergillus brasiliensis) (真菌)、を追加して、生菌数が適正な値であるかを確認する。シロップ剤等の高糖濃度製剤には耐塩性酵母 (Zygosacchromyces rouxii)が用いられます。
保存効力試験法の評価方法は?
14及び28日目に混合試料中の生菌数を測定する。上記の期間中、混合試料に顕著な変化 (例えば、色調の変化、異臭の発生、カビの発生等) が観察されたときは記録し、 当該製剤の保存効力について評価検討する。無菌製剤に接種菌以外の菌が発見されたときは、重大な微生物汚染が起こったとする。
保存効力試験法のカテゴリー分類について
試験をする剤形の違いにより、カテゴリーに分類され、それぞれにおいて試験内容が異なります。以下に例を示します。
カテゴリー1A (注射剤・無菌の製剤 (点眼剤) など)
細菌
・7日後 : 接種菌数に比べ 1.0log以上の減少
・14日後 : 接種菌数に比べ 3.0 log以上の減少
・28日後 : 14日後の菌数から増加しないこと
真菌
・ 7日後、14日後、28日後 : 接種菌数から増加しないこと
カテゴリー1B (水性溶剤に溶解又は分散、若しくは水溶性の基剤に混和させた非無菌の局所投与製剤 (点耳剤、点鼻剤、吸入剤、その他粘膜に使用される製剤等を含む))
細菌
・14日後 : 接種菌数に比べ2.0log以上の減少
・28日後 : 14日後の菌数から増加しないこと
真菌
・14日後、28日後 : 接種菌数から増加しないこと
カテゴリー1C (水性溶剤に溶解又は分散、若しくは水溶性の基剤に混和させた制酸剤以外の経口投与する製剤及び口腔内に適用する製剤)
細菌
・14日後 : 接種菌数に比べ1.0 log以上の減少
・28日後 : 14日後の菌数から増加しないこと
真菌
・14日後、28日後:接種菌数から増加しないこと
カテゴリー1D (水性溶剤又は水溶性の基剤で調製した制酸剤)
細菌
・14日後、28日後 : 接種菌数から増加しないこと
真菌
・14日後、28日後 : 接種菌数から増加しないこと