【質問】 ニキビ治療でビブラマイシン(ドキシサイクリン)とロキシスロマイシンが長期的に交互に処方されているのですが、どれくらいで耐性菌が出るのか教えていただけますか?同じ薬を長期的に服用するよりも、交互に服用した方が耐性菌ができにくくなるのでしょうか?
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結論
尋常性ざ瘡における耐性菌は「数か月」で有意に増加します。具体的には、連続使用期間が6~18週で6.25%、24~52週で21.6%に上昇するという報告があります (1)。したがって、12週 で効果を評価し、原則として短期使用が基本方針となります。交互 (ローテーション)投与は耐性抑制策として推奨されません。BPO (過酸化ベンゾイル)の併用と抗菌薬の使用期間短縮が国際標準となっています。BPO酸化的殺菌で臨床的耐性が報告されていないとされ、耐性回避に有用であることが明記されています。
日本の規制面では、ロキシスロマイシンには「ざ瘡 (化膿性炎症を伴うもの)」の適応がありますが、ドキシサイクリン (ビブラマイシン)には「ざ瘡」の適応記載がないため、ニキビへの使用は適応外となります。ただし、日本皮膚科学会の推奨度は高くなっています。
背景
尋常性ざ瘡 (ニキビ)は日本人の大多数が経験する炎症性疾患で、C. acnesや皮膚常在菌が関与しています。
抗菌薬の単剤使用や長期使用により耐性化が進行し、常在菌叢への影響が問題となります。日本を含む各国のガイドラインでは「BPO/レチノイド併用+抗菌薬は短期使用」を一貫して推奨しており、3か月で効果を見直し、6か月を超える使用は例外的とされています。日本皮膚科学会 (JDA)はドキシサイクリンとミノサイクリンを強く推奨し、BPOは耐性が見つかっていないと明記しています。
報告
日本皮膚科学会(JDA)
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン (2023) では、炎症性皮疹に対してドキシサイクリン (推奨度A)とミノサイクリン (推奨度A)を推奨しています。BPOやレチノイドの併用を推奨し、外用抗菌薬の長期維持は推奨していません。BPOは耐性菌が見つかっていないことが明記されています(2)。
NICE NG198 (2021)
英国のガイドラインでは12週で効果評価を行い、6か月を超える継続は例外的としています。抗菌薬の単剤療法を避け、BPO/レチノイドとの併用を推奨しています (3)。
AAD(米国皮膚科学会)ガイドライン(2024)
経口ドキシサイクリンを強く推奨し、抗菌薬は最短期間の使用とし、併用療法を推奨しています (4)。
臨床研究
Tan HH, et al. (2001) 前向き観察研究では、抗菌薬未使用では0%、6~18週使用で6.25%、24~52週使用で21.6%と、期間依存的に耐性分離率が上昇することが示されています (2)。
Leyden JJ, et al. (1983) 観察研究では、長期テトラサイクリン使用で平均MICが4–5倍となり、臨床反応不良と関連することが報告されています (5)。
Ross JI, et al.(1997). 分子疫学研究では、23S rRNA変異によるマクロライド耐性が同定され、リンコサミドとの交叉耐性の基盤が解明されています
添付文書情報
ロキシスロマイシンには適応症として「ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)」が記載されていますが、ドキシサイクリンには「ざ瘡」の記載がなく、皮膚感染症等のみとなっています
関連した質問
Q: どれくらいで耐性が出ますか?
A: 厳密な週数の断定は困難ですが、6~18週で6.25%、24~52週で21.6%と、数か月で有意に増加します。そのため12週での評価が妥当とされています。
Q: 交互(ローテーション)投与は有効ですか?
A: 推奨されません。耐性抑制にはBPO併用と最短期間使用が基本です。ローテーションは交叉耐性を広げる恐れがあります。
Q: BPOはなぜ必須?
A: BPOには耐性が見つかっておらず、C. acnesの抑制と再燃予防に寄与します。そのため抗菌薬単剤は避けるべきとされています。
Q: 日本の適応上、ロキシスロマイシンとドキシサイクリンの位置づけは?
A: 日本の適応ではロキシスロマイシンに「ざ瘡」が明記されていますが、ドキシサイクリンには明記されていません。ただし日本皮膚科学会は臨床上ドキシサイクリンを強く推奨しています。
まとめ
抗菌薬は12週で評価し、最短期間で終了することが重要で、6か月を超える使用は例外的です(3)。BPOまたは外用レチノイドを必ず併用し、抗菌薬単剤や長期維持を避けることが基本となります(2,3)。
交互投与 (ローテーション)での耐性抑制は期待できず、交叉耐性に注意が必要です (6)。日本の規制と実務では、ロキシスロマイシンは「ざ瘡」適応がありますが、ドキシサイクリンは適応外となります。
避けるべきこととして、抗菌薬の単剤治療、BPOなしでの処方、漫然とした使用期間の延長、交互投与の正当化が挙げられます(2,3)。
引用文献
- Tan HH, et al. Ann Acad Med Singap. 2001;30(1):22–25. (PMID:11242619).
- 日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. 日皮会誌 133:407–450.
- NICE. Acne vulgaris: management (NG198). 2021.
- Reynolds RV, et al. JAAD. 2024;90(5):1093–1114. (PMID:38300170)
- Leyden JJ, et al. J Am Acad Dermatol. 1983;8(1):41–45. (PMID:6219134)
参考文献
各社 添付文書









