【Q】点鼻薬のステロイドランクは?効果の違いは?

【A】現在、点鼻薬のステロイドは4種類しか発売されていません。(2020年3月現在)

  • エリザス点鼻粉末200μg (成分名 : デキサメタゾンシペシル酸エステル噴霧剤)
  • アラミスト点鼻液27.5μg (成分名 : フルチカゾンフランカルボン酸エステル液)
  • フルナーゼ点鼻液50μg (成分名 : フルチカゾンプロピオン酸エステル液)、各後発品
  • ナゾネックス点鼻液50μg (成分名 : モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物液)、各後発品

これらの4種類の各ステロイド成分の比較データはありません。そのため、臨床現場においてはステロイド成分の強弱ではなく、用法やデバイスの違いによって使い分けていると考えられます。

各製剤 (エリザス、アラミスト、ナゾネックス)の臨床試験をインタビューフォームで確認すると、フルナーゼ点鼻液50μg (成分名 : フルチカゾンプロピオン酸エステル液)を比較試験の対象薬としています。その結果から、

効果 : エリザス点鼻粉末200μg ≒ アラミスト点鼻液27.5μg ≒ ナゾネックス点鼻液50μg  > (or =)フルナーゼ点鼻液50μg

と推測されます。

また、明確なデータはありませんが、点鼻薬は「使用法」によって、効果に差が出る可能性があります。例えば、「使用前に鼻をよくかむこと」「頭をうつむき加減にして噴霧すること」「使用前によく振ること(霧状の点鼻薬)」などが、効果の差に影響を与えると考えられ、患者に対する適切な使用方法の指導が必要となります。

以下に詳細を記載します。

エリザス点鼻粉末 (デキサメタゾンシペシル酸エステル)
・「デキサメタゾンシペシル酸エステル」は脂溶性官能基の導入により局所での高い貯留性、抗炎症効果の持続性がある。
・「デキサメタゾンシペシル酸エステル400μg/日」は「フルチカゾンプロピオン酸エステル200μg/日(分2)」と比較しては非劣性(効果、副作用など)である。
・「デキサメタゾンシペシル酸エステル」はモルモットアレルギー性鼻炎モデルにおいて、点鼻投与24時間後に誘発した鼻炎症状のくしゃみ回数及び遅発相の鼻閉を抑制した。その抑制作用は「フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)」と同程度以上であった。
(参考 : エリザス点鼻粉末200μg インタビューフォーム )

→「エリザス点鼻粉末200μg」の効果は「フルナーゼ点鼻液50μg 」と同等もしくはそれ以上であることがわかります。

 

アラミスト点鼻液 (フルチカゾンフランカルボン酸エステル)
・「フルチカゾンフランカルボン酸エステル」は「フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)」点鼻液と同等以上の有効性及び安全性を有し、 効果がより長時間持続する点鼻液を得ることを企図して開発されたものである。
・「フルチカゾンフランカルボン酸エステル」のグルココルチコイド受容体に対する親和性は「フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)」の約1.7 倍で、核移行促進作用はFP よりも早く、長時間持続する。
・国内において季節性アレルギー性鼻炎を対象として、本剤(110μg/日、1 日1 回)、フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP、200μg/日、1 日2 回)又はプラセボを2 週間投与する比較試験を実施した。その結果、3 鼻症状合計スコア平均の変化量(調整済み平均値)は、本剤110μg 群で-1.23、FP 200μg 群で-1.06 であり、本剤のFP に対する非劣性が検証された。

グルココルチコイド受容体(GR)に対する親和性(in vitro)
ヒト肺組織のサイトゾル分画を用いて3H-フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)、3H-フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)または3H-デキサメタゾンの結合試験を行い、それぞれの解離定数を算出し、デキサメタゾンのグルココルチコイド受容体への親和性を100 とした場合の相対的受容体親和性を求めた。その結果、FF はヒトGR に対して高い結合親和性を示し、その親和性はFP の約1.7 倍、デキサメタゾンの約30 倍であった。

・グルココルチコイド受容体(GR)の核移行促進作用(in vitro)
YFP-GR を導入したCOS-1 細胞もしくはBEAS-2B ヒト気管支上皮細胞を、FF もしくはFP10nM 存在下でインキュベートしてYFP-GR の核移行を共焦点顕微鏡で観察した。その結果、両剤とも10nM の濃度でYFP-GR の核移行を促進させたが、FF はFP と比べ核移行速度は速く、移行率は高く、核移行の促進作用は長時間持続した。
(アラミスト点鼻液27.5μg インタビューフォーム )

→in vitroでの試験によると、「アラミスト点鼻液27.5μg」はグルココルチコイド受容体への親和性が「フルナーゼ点鼻液50μg 」と比較して高く、さらに、核移行の促進作用は長時間持続しています。よって、アラミスト点鼻液27.5μg」の効果は「フルナーゼ点鼻液50μg 」と同等もしくはそれ以上であることがわかります。

 

 

ナゾネックス点鼻液50μg
・モメタゾンフランカルボン酸エステルはグルココルチコイド受容体に対する親和性が高く、強い局所抗炎症作用を示す。
・年性アレルギー性鼻炎患者(成人)を対象として、本剤200μg/日(分1)、フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)200μg/日(分2)あるいはプラセボを2週間投与した。その結果、4鼻症状スコアの投与前値及び投与終了時の変化量において本剤のFPに対する非劣性が検証された。
・モメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)はヒトグルココルチコイド受容体に対して親和性を示し、受容体に結合後、遺伝子転写活性を誘導する。それらの親和性はモメタゾンフランカルボン酸エステル>フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)>ブデソニド(BUD)の順であった。
・モメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)は、能動感作ラットの抗原惹起による鼻掻き行動(鼻そう痒感)及びくしゃみ反応に対して、フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)のそれぞれ約5.0 倍及び6.9 倍の抑制作用を示した(in vivo)。

→「ナゾネックス点鼻液50μg」は、ヒトグルココルチコイド受容体に対して親和性が高いことやラットを使った試験から、「フルナーゼ点鼻液」と比較して、効果が高い可能性があります。

 

以上をまとめると、「エリザス点鼻粉末200μg 」、「アラミスト点鼻液27.5μg 」、 「ナゾネックス点鼻液50μg」のそれぞれの効果の差に関するデータはありませんが、少なくとも「フルナーゼ点鼻液」と同等、もしくは効果が高い可能性があります。

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