【質問】小児の採血結果でクレアチニンがかなり低く、eGFRが1000を超えるような数値を見たのですが、こういったケースの要因、また本来の腎機能は何を目安にすればいいのか教えてください。
【A】「eGFRが1000を超えるような数値」は、eGFRが体表面積あたりに換算されていない数値と考えられます。小児におけるGFRは、血清クレアチニン値に加えて、「身長から算出する血清クレアチニン基準値」で補正して計算する必要があります。
大まかには、小児の体表面積あたりのGFRは、出生時は成人のおよそ1/5程度であり、2歳前後で成人と同程度になります。
「身長から算出する血清クレアチニン基準値」で補正した小児のGFRの計算は複雑であり、通常の計算機などでは計算できないため、日本腎臓病協会の「小児CKD-eGFR計算アプリ」をダウンロードして、計算することが必要です。
ただし、これらは小児 CKDの診断のために使用されるものであり、投与量の設定に用いるものではないことに注意が必要です。
血清クレアチニン値から評価
・血清クレアチニン値を確認後、基準値を大きく上回っていれば腎機能障害を疑う。
・小児の腎機能障害の血清クレアチニン値の中央値のマイルストーン 4歳 0.3mg/dL 8歳 0.4mg/dL
・2歳以上12歳未満の血清クレアチニン予測基準値(mg/dL) 身長(m) × 0.3
血清クレアチニン値の欠点
・重症心身障害児、神経筋疾患、低栄養など筋肉量が著しく少ない場合→低下する
・スポーツ選手のように筋肉量が多い場合→上昇する
これらの場合は血清シスタチン Cやβ2ミクログロブリンを用いたeGFR計算も兼用する。
血清シスタチンCの欠点
・甲状腺機能亢進症、ステロイド使用→上昇する
・甲状腺機能低下、HIV感染、シクロスポリン使用→低下する
β2ミクログロブリンの欠点
甲状腺機能亢進症、炎症性疾患、悪性腫瘍、自己免疫疾患→上昇する
甲状腺機能低下症→低下する
それでも信頼性に欠ける場合は、尿中クレアチニンを測定した計算式を用いて計算する方法や、イヌリンクリアランスを測定する方法がある。
(参考 : 小児の「腎機能障害の診断」と「腎機能評価」の手引き)