外来の妊婦に対するインフルエンザ治療薬の選択は?

【A】オセルタミビル(商品名 : タミフル)は妊婦に対して安全かつ効果的であるとの豊富な情報1,2があります。また、吸入薬であるラニナニビル(商品名 : イナビル)は、体への暴露が少ないため、問題ないとされており、2014年の後ろ向き研究による妊娠初期を含む約100人を対象とした研究では、妊娠や胎児への有害な影響が増加しない3ことが報告されている。同様にリレンザ (商品名 : ザナミビル)は吸入薬であり、同様に妊娠や胎児への有害な影響が増加しない2ことが報告されている。一方で、バロキサビル マルボキシルについては、安全性と有効性に関するデータが不足しているため、妊娠や産後の患者には現在、推奨されていない1

処方医には妊婦に対する情報が豊富なオセルタミビルの使用が最も推奨されている。利便性を考慮するのであれば、ラニナニビルも選択肢の一つである。

妊娠中や産後の女性は、インフルエンザによる入院リスクが高まる4,5ため、特に注意が必要であることも説明を行い、薬に使用に対する不安を解消し、服薬への安心感をもてるように配慮する必要がある。

追記、イナビルの報告は日本でのみの発売であり、下記の論文だけのようです。

この研究は、ラニナミビル投与を受けた112人の妊婦の妊娠成績を後ろ向きにレビューし、流産、早産、胎児奇形などの有害事象を評価しました。妊娠22週未満で治療を受けた女性のうち1.8%が流産し、生存可能な乳児を出産した女性の8.8%が早産しました。新生児の2.7%が奇形を示し、その他の一部は治療を必要としましたが、ラニナミビルの使用が有害な妊娠や胎児の転帰を増加させなかったことが示唆されました。

(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25074683/)

1. Chow EJ, Beigi RH, Riley LE, Uyeki TM. Clinical Effectiveness and Safety of Antivirals for Influenza in Pregnancy. Open Forum Infect Dis. 2021;8(6):ofab138.

2. 伊藤, 真也(医学, 村島温子. 妊娠と授乳: 薬物治療コンサルテーション. https://cir.nii.ac.jp/crid/1130003901217672960

3. Minakami H, Kubo T, Nakai A, Saito S, Unno N. Pregnancy outcomes of women exposed to laninamivir during pregnancy. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2014;23(10):1084-1087.

4. Prasad N, Huang QS, Wood T, et al. Influenza-Associated Outcomes Among Pregnant, Postpartum, and Nonpregnant Women of Reproductive Age. J Infect Dis. 2019;219(12):1893-1903.

5. Uyeki TM, Bernstein HH, Bradley JS, et al. Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America: 2018 Update on Diagnosis, Treatment, Chemoprophylaxis, and Institutional Outbreak Management of Seasonal Influenzaa. Clin Infect Dis. 2019;68(6):895-902.

会員登録していただくとできること
記事を全文閲覧できます。 記事を全文閲覧できます。
記事の全文が検索できます 記事の全文が検索できます。
週1回メルマガが届きます 週1回メルマガが届きます
質問投稿することができます 質問投稿することができます

関連記事

外来の妊婦に対するインフルエンザ治療薬の選択は?

【A】オセルタミビル(商品名 : タミフル)は妊婦に対して安全かつ効果的であるとの豊富な情報1,2があります。また、吸入薬であるラニナニビル(商品名 : イナビル)は、体への暴露が少ないため、問題ないとされてお...

【Q】抗インフルエンザ薬と新型コロナ治療薬は併用可能か?

【A】抗インフルエンザ薬と新型コロナ治療薬が併用禁忌でなければ、併用は可能と考えられます。そのため、現在発売されている下記の抗インフルエンザ薬や経口新型コロナ治療薬の併用は可能です。 抗インフルエン...

新着記事

ホルマリンアルコールはどのような成分か?

【質問】ホルマリンアルコールというものを最近知りました。消臭効果が見込めるというような記載を見つけましたが、それ以上の詳しい情報が見当たらず、作用機序などわからずこちらでご質問させていただけますと...

シングリックス接種間隔は1か月でもいい?2か月に設定されている理由は?

【質問】 シングリックス筋注用の投与間隔について調べています。添付文書では、通常の方は初回と2回目の接種間隔が2か月、「帯状疱疹にかかりやすい18歳以上の方」の場合は1か月まで短縮できるとなっています。...

ループ利尿薬の併用目的・用量設定・降圧効果は?

【質問】 ループ利尿薬の使い分けについて。フロセミド+アゾセミド/フロセミド+トラセミド、時に3剤の併用を見かけます。どのような目的で併用しているのでしょうか?用量設定の目安は?また、降圧効果の比較...

新着記事をもっと見る

医薬品供給状況

【供給停止】イミダフェナシンOD錠0.1mg「トーワ」【限定出荷】アトモキセチンカプセル10mg「VTRS」、他9品目【限定出荷解除】カルベ…

2025年10月22日 供給状況の変更情報 【供給状況の変更】 供給停止に移行:1品目 限定出荷に移行:10品目 限定出荷解除に移行:9品目 【その他情報(理由・見込み)の更新】 限定出荷中の品目:1品目 ============...

過去の供給情報を見る

週間ランキング

ランキングをもっと見る