【質問】アミオダロンの使い方についてご教示ください。
①持続点滴から内服への切り替え方法について 持続点滴の投与期間により切り替えの内服用量は異なりますが、切り替えのタイミングはどのように対応されていますか? 内服の前に点滴を終了する、内服と同時に点滴を終了する、点滴をしばらく(どのくらい?)継続しながら内服を開始する(つまり持続点滴と内服をしばらく併用する)、など、推奨されている方法はあるのでしょうか?他のご施設ではどのように対応されていますか?また、もし持続点滴と内服を併用した場合は保険適応的にはどうなのでしょうか?
②基本は負荷投与を行い維持用量へ切り替えとなりますが、初回で負荷投与を行わない使い方もすることがあるのでしょうか。(初回なのに持続点滴から開始されていた症例に遭遇したのですが・・・何か理由があるのかと?)
アミオダロンの処方にあまり遭遇することがなかったため、ご教示頂けると幸いです。
【回答】
結論
持続点滴から内服への切り替えは臨床的に心拍数・血圧が安定し(TDMは原則不要)、再発所見がないことを確認後に速やかに行います。持続点滴と内服の重複は必要最小限(同時〜数時間程度)に留めるようにします。観察研究においては、重複の有効性は示されていません。内服薬の開始用量は点滴の期間により異なり、1週未満は800-1600mg/日、1-3週は600-800mg/日、3週を超えると400mg/日になります。その後、維持量200-400mg/日へ減量します。国内では400mg/日で開始し、1-2週後に維持用量である200mg/日とすることが基本です。
背景
アミオダロンは致死的不整脈に用いるClass III抗不整脈薬で、終末半減期は非常に長いという特徴があります。終末半減期とは組織に蓄積した薬物が最終的に体外へ排出される半減期で、アミオダロンは脂溶性が高いため、脂肪組織に蓄積し、分布容積が約5,000L(血液量の1,000倍)と大きいため、組織からゆっくり放出されます。そのため、効果は中止後も数週間〜数ヶ月持続し、副作用や相互作用も長期化してしまいます。点滴は急性期に用いられ、切り替え時は不整脈の再発防止と徐脈・低血圧の防止が重要です。ワルファリン(INR上昇)やジゴキシン(血中濃度約70%上昇)との相互作用もあるため、適切なモニタリング重要な薬剤といえそうです。
報告
米国心臓協会(AHA)ガイドライン(2020年+2023年更新)
「心室細動/無脈性心室頻拍にアミオダロン300mg→150mgまたはリドカインを考慮」と推奨されています。。急性期安定後は経口へ移行します。
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AHA公式アルゴリズム
https://cpr.heart.org/en/resuscitation-science/cpr-and-ecc-guidelines/algorithms
https://cpr.heart.org/-/media/CPR-Files/CPR-Guidelines-Files/Algorithms/AlgorithmACLS_CA_200402.pdf
米国注射薬添付文書(NEXTERONE アミオダロン注)
「初日約1,000mg(150mg/10分→1mg/分×6時間→0.5mg/分×18時間)」「Table 3に点滴期間別の経口開始量」が明記されています。
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Nexterone製品情報(Table 3)
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2011/022325s002lbl.pdf
Arnouk S, et al.(2019)/ 後ろ向きコホート
ICU患者90例で、短時間重複(≤2時間)vs長時間(>2時間)で再発・低血圧・徐脈に有意差なし。延長の利点はみとめられませんでした。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jcpt.12841
Lam JC, et al. IOTA(2022)/ 後ろ向き研究
心臓外科184例で、重複時間と24時間内心房細動再発・徐脈/低血圧は無関連です。特定の長時間併用は不要です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35170491/
国内添付文書
導入400mg/日×1-2週→維持200mg/日が標準。副作用頻度が高く最小の有効維持量を目標とする旨が明記されています。
ただしこれらは経口単独、点滴単独の用法であり、切り替えではありません。
保険適用について
一般論として同一成分の内服薬と注射薬の併用は原則認められません。ただし、経口不能・迅速性が必要・切替に伴う短時間の必要最小限の重複など医学的必要性が明確で、カルテに理由を記載していれば認められるかもしれません。「原則NG、例外は医学的必要性+記録」
関連した質問
Q: 持続点滴から経口薬への切り替え時、点滴はいつ止める?
A: 経口薬初回投与と同時〜数時間以内に中止が基本です。重複延長に臨床的利点は示されていないため、必要最小限でよいです。
Q: 経口薬の開始量はどう決める?
A: 点滴期間で層別します(1週未満:800-1600、1-3週:600-800、3週超:400mg/日)。その後維持200-400mg/日(米国の資料)。国内は導入400→維持200mg/日も妥当です。
Q: 初回から持続点滴で始めるのはどんな時?
A: 心室細動/無脈性心室頻拍、血行動態不安定、経口摂取不可などの急性期です。米国では300→150mgボーラス(数秒〜数分で一気に薬液を静脈内に注入する)+持続、国内では125mg急速投与(ボーラスよりはゆっくり、数分〜15分程度)→維持を規定しています。
Q: 併用薬との相互作用の管理は?
A: ワルファリンはINR上昇に注意し、開始時に1/3〜1/2減量+頻回INR測定。ジゴキシンは血中濃度約70%上昇のため50%減量+血中濃度測定が必要です。
Q: 終末半減期が長いことの臨床的意味は?
A: 効果が中止後も数週間〜数ヶ月持続するため、副作用発現時も改善に時間がかかります。また、相互作用も長期化するため、併用薬の用量調整とモニタリングを長期間継続する必要があります。
まとめ
・切り替えは血行動態安定後速やかに実施し、点滴との重複は必要最小限に
・経口開始量は点滴期間により800-1600/600-800/400mg/日から開始→維持200-400mg/日へ(米国添付文書)
・国内同剤型では導入400mg/日×1-2週→維持200mg/日が基本(添付文書)
・初回から持続点滴は心室細動等の急性期に使用される国内は125mg急速投与
・終末半減期58日のため、効果・副作用・相互作用は長期化することに注意
・ワルファリンは1/3-1/2減量+INR測定、ジゴキシンは50%減量+血中濃度測定を長期間継続
・保険適用は原則NG、例外は医学的必要性とカルテ記載が無難
参考文献
- Arnouk S, et al. Clinical effects of intravenous to oral amiodarone transition strategies in critically ill adult patients. J Clin Pharm Ther. 2019;44:693-700.
- Lam JC, et al. Intravenous to Oral Transition of Amiodarone (IOTA). J Cardiovasc Pharmacol. 2022;79:808-814.
- American Heart Association. Adult Cardiac Arrest Algorithm. 2022.
- Perman SM, et al. 2023 AHA Focused Update on Adult ACLS. Circulation. 2024;149:e1-e27.
- DailyMed. NEXTERONE (amiodarone HCl) Premixed Injection Prescribing Information.
- アンカロン錠100 添付文書
- アンカロン注150 添付文書
更新履歴
初版:2025-08-30
最新更新:2025-08-30