【質問】メトホルミンとツイミーグの併用について教えてください。
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1. 結論
メトホルミン+ツイミーグ(イメグリミン)の併用は禁忌ではなく、臨床的に可能です。ただし「追加で効かせる」より先に、腎機能(eGFR: estimated glomerular filtration rate)で併用可否と用量上限を決めるのがよさそうです。1) 2)。メトホルミンはeGFR<30で禁忌、eGFR 30〜<45では1日最高750mg目安、eGFR 45〜<60では1日最高1,500mg目安。ツイミーグはeGFR 15〜<45で500mg×2回/日、eGFR 10〜<15では有益性が危険性を上回る場合に限り500mg×1回/日、eGFR<10は推奨されないため、用量を確定します1) 2)。併用初期は下痢・悪心などの消化器症状が増えやすく、嘔吐・食欲低下から脱水が疑われる場合はメトホルミンを速やかに中止します。イメグリミンも重度の食欲減退・嘔吐が認められた場合は中止し、受診を勧めるよう患者に説明します1) 2) 4)。
2. 背景
日本では「糖尿病が強く疑われる者」が約1,100万人、「糖尿病の可能性を否定できない者」が約700万人と推計されています7)。
メトホルミンは重篤な乳酸アシドーシス(lactic acidosis)のリスク管理が必要な薬剤です。ツイミーグは併用(特にビグアナイド系)で消化器症状が増えやすいと添付文書上も注意喚起されています1) 2)。なお、ツイミーグは2026年1月改訂で「重度の食欲減退、嘔吐」が重大な副作用に追加されました1)。腎機能・脱水・服薬継続性から併用を考えることが必要です。
3. 報告
3-1. ツイミーグ錠500mg 添付文書(2026年1月改訂 第6版)/メトグルコ錠 添付文書(2023年11月改訂 第5版)
両剤とも腎機能に応じた用量設定が明記されています。メトホルミンはeGFR<30で禁忌、eGFR 30〜<45で最大750mg/日目安、eGFR 45〜<60で最大1,500mg/日目安(いずれも利益>リスク時のみ)。ツイミーグはeGFR 15〜<45で500mg×2回/日、eGFR 10〜<15では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ500mg×1回/日、eGFR<10は推奨されません。eGFR<15では腎機能を頻回に検査し慎重に経過観察することも求められています。併用注意として消化器症状の増加が両添付文書に記載されています1) 2)。
3-2. 日本糖尿病学会. 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)(2023)
腎機能・併存症など安全性(Step 2)を踏まえて薬剤選択するアルゴリズムです。メトホルミンはeGFR<30で禁忌、eGFR 30〜<45で最大750mg/日、eGFR 45〜<60で最大1,500mg/日と整理されています5)。臨床で遭遇しやすい場面ですが、「使える・使えない」と「上限」を先に決めることがよいです。1) 5)。
3-3. Dubourg J, et al. (2022) / 第III相・52週オープンラベル多施設試験(TIMES 2)
日本人2型糖尿病714例にイメグリミン1000mg×2回/日を単独または既存薬1剤(メトホルミン等)に追加して52週投与した試験です。メトホルミン併用群(BIG群、64例)を含め、全体で治験薬関連の重篤有害事象は「なし」とされ、長期忍容性は概ね良好でした。一方で、メトホルミン併用では消化器系有害事象が増え、消化器症状による中止が6.25%(4/64例)と報告されています。メトホルミン併用でのHbA1cは52週で−0.67%低下し、効果は維持されました3)。なお、本試験の併用療法群はeGFR ≥60 mL/min/1.73m²が組入れ基準であり、腎機能低下例には注意が必要です。(PMID: 34866306)
3-4. Ito J, et al. (2025) / TIMES 2メトホルミン併用群の事後解析
TIMES 2の「イメグリミン+メトホルミン」64例を対象とした事後解析(post-hoc analysis)です。消化器症状(GI症状)40.6%(26/64例)、下痢17.2%(11/64例)と比較的高頻度でしたが、多くは軽度で、約半数は1週間以内に軽快しました。発現は治療初期(特に最初の4か月)に偏ります。糖尿病罹病期間<5年が下痢と関連(OR 5.979, P=0.039)という所見もあり、「起こりうるが多くは短期で落ち着く」という開始初期の患者説明が継続率に直結します4)。(PMID: 39723797)
3-5. Dubourg J, et al. (2021) / 二重盲検RCT・単独療法(TIMES 1)
日本人2型糖尿病でイメグリミン1000mg×2回/日を24週投与し、HbA1cはプラセボ比で−0.87%改善(95%CI −1.04〜−0.69, P<0.0001)しました。有害事象発現はイメグリミン44.3% vs プラセボ44.9%で大差なく、通常用量の安全性がプラセボ同等というで0田があります。その上で、メトホルミン併用時に消化器症状が増える、という位置づけです6)。(PMID: 33574125)
4. 関連した質問
Q1. 併用は「禁忌」ですか?
A: 禁忌ではありません。ただし両添文文書で併用注意として消化器症状増加が明記されており、初期の下痢・悪心に注意する必要があります1) 2)。
Q2. 併用するならツイミーグは何mgで開始しますか?
A: 通常は1000mgを1日2回(朝・夕)。ただしeGFR 15〜<45は500mg×2回/日、eGFR 10〜<15は有益性が危険性を上回る場合に限り500mg×1回/日へ減量です1)。
Q3. 腎機能が悪い患者で、併用可否はどう決めますか?
A: メトホルミンはeGFR<30で禁忌、eGFR 30〜<45は最大750mg/日目安、eGFR 45〜<60は最大1,500mg/日目安(いずれも利益>リスク時のみ)。ツイミーグはeGFR<10は推奨されないため、この閾値で併用可否が決まります。加えて、脱水・重症感染症・手術前後など全身状態も確認してください1) 2)。
Q4. 下痢・嘔吐が出たら、続けてよいですか?
A: 併用で消化器症状は40.6%と多い一方、約半数は1週間で軽快します。ただし脱水兆候(摂取低下、尿量減、倦怠感)があれば少なくともメトホルミンは中止・受診とします。イメグリミンも重度の食欲減退・嘔吐が認められた場合は中止し、メトホルミンの乳酸アシドーシス症状(過呼吸、強い倦怠感、筋肉痛等)も確認します1) 2) 4)。
5. まとめ
- 併用前にeGFR(腎機能)を確認する。メトホルミンはeGFR<30で禁忌、eGFR 30〜<45は最大750mg/日、eGFR 45〜<60は最大1,500mg/日2)。
- ツイミーグはeGFR 15〜<45で500mg×2回/日、eGFR 10〜<15は有益性が危険性を上回る場合に限り500mg×1回/日、eGFR<10は推奨されない。併用可否と用量を確定する1)。
- 併用初期は消化器症状(下痢・悪心)を想定して事前説明する。「多くは1週間以内に軽快する」と伝える1) 4)。
- 嘔吐・食欲低下が強い/脱水が疑わしい時は「続けない」。少なくともメトホルミンは速やかに中止する。イメグリミンも重度の食欲減退・嘔吐(2026年1月改訂で重大な副作用に追加)が認められた場合は中止し、乳酸アシドーシス症状(過呼吸、強い倦怠感、筋肉痛等)も確認する1) 2)。
- 造影剤検査では検査前にメトホルミンを一時中止し、ヨード造影剤投与後48時間は再開しない。シックデイ(発熱・下痢・嘔吐・摂取不良)ではいったん服用を中止し医師に相談する2)。
上記の用量設定と患者説明を徹底した上で、TIMES 2ではメトホルミン併用でもHbA1c改善(−0.67%/52週)が示されています3)。ただしこの試験はeGFR ≥60の患者が対象であり、腎機能低下例への適用は添付文書に基づいた個別判断が必要です。
6. 参考文献
【引用文献】
- ツイミーグ錠500mg(イメグリミン塩酸塩)電子化された添付文書(2026年1月改訂 第6版). PMDA 医療用医薬品情報.
- メトグルコ錠250mg/500mg(メトホルミン塩酸塩)電子化された添付文書(2023年11月改訂 第5版). PMDA 医療用医薬品情報.
- Dubourg J, et al. Long-term safety and efficacy of imeglimin as monotherapy or in combination with existing antidiabetic agents in Japanese patients with type 2 diabetes (TIMES 2): A 52-week, open-label, multicentre phase 3 trial. Diabetes Obes Metab. 2022;24(4):609-619. PMID: 34866306.
- Ito J, et al. Gastrointestinal symptoms in patients receiving imeglimin in combination with metformin: A post-hoc analysis of imeglimin clinical trial data. J Diabetes Investig. 2025;16(4):629-638. [Online 2024-12-26] PMID: 39723797.
- 坊内良太郎, et al. 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版). 糖尿病. 2023;66(10):715-733.
- Dubourg J, et al. Efficacy and Safety of Imeglimin Monotherapy Versus Placebo in Japanese Patients With Type 2 Diabetes (TIMES 1): A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled, Parallel-Group, Multicenter Phase 3 Trial. Diabetes Care. 2021;44(4):952-959. PMID: 33574125.
- 厚生労働省. 令和6年「国民健康・栄養調査」の結果(2025年12月2日公表)および別添「結果の概要」.
【参考文献】
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. 医薬品の安全性に係る調査結果報告書 メトホルミン塩酸塩(販売名:メトグルコ錠250mg、同錠500mg)及びメトグルコ錠の後発医薬品について(2023年2月9日).
- PMDA. イメグリミン塩酸塩の「効能又は効果に関連する注意」等の改訂について(2025年2月28日).
- PMDA. イメグリミン塩酸塩の「使用上の注意」の改訂について(2026年1月13日).









