ツロブテロールテープの先発品と後発品、吸収速度に差はあるか?

【質問】ツロブテロールテープにおいて、先発品と後発品で薬物貯留システムの違いにより薬物吸収速度に差があるのは本当でしょうか。

ビジュアル回答はこちら→ https://closedi.jp/vshare/379759375/

1. 結論

条件付きで本当です。先発品(ホクナリンテープ)は「結晶レジボアシステム」という独自の製剤設計を採用しており、薬物の放出をゆるやかに平滑化する仕組みになっています。一方、後発品の一部はこの仕組みを持たないため、貼付直後の初期放出が大きくなりやすいことが膜透過試験や皮膚バリア低下モデルで示されています1) 2) 4)

ただし、後発品は承認時にAUCとCmaxの生物学的同等性(幾何平均比の90%信頼区間が0.80〜1.25)が確認されています。健常な皮膚であれば、大きな全身曝露差は生じにくいと考えるのが一般的です6) 8) 10)

ここが実務上のポイントですが、皮膚バリアが低下した患者(アトピー・損傷皮膚など)ではこの前提が崩れる可能性があります。切替時は「皮膚の状態」「貼付部位」「副作用(振戦・動悸等)」を軸に、1〜2週間で有効性・安全性を再評価することが適切です3) 7)


2. 背景

小児喘息の有症率は低下傾向にあります。西日本11県の小学生を対象とした反復横断調査では、2022年に全体2.7%(男児3.2%・女児2.1%)まで減少しました9)。一方で、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患との併存は依然として臨床的に重要な課題です。

ツロブテロール貼付剤は皮膚を介して全身に薬物を届ける製剤です。吸収速度は「製剤からの放出」と「皮膚の透過」の2つで決まります。先発品と後発品では製剤設計が異なるため、皮膚バリアが低下した患者で切り替えると、血中濃度の立ち上がりやピークが想定より変動する可能性があります。この点は現場で十分に認識されていない部分です1) 2) 3)


3. 報告

3-1. Tojo K, Hikima T. (2007) / in vitro比較(放出・皮膚透過)+シミュレーション
先発(A)と後発3製剤(B〜D)を比較した試験です。製剤からの放出パターンは設計の違いを強く反映し、後発の一部では貼付直後の「初期の上昇」が大きいと報告されています。具体的には、初期1時間の放出量が先発で約20%であるのに対し、後発では約40%・70%・80%と製剤によって大きく異なりました。

一方、健常皮膚(角層が正常な状態)での透過量は、放出パターンほどの差は出ていません。角層が調整役として機能するためです。ただし角層バリアが損なわれた状況では高曝露の懸念があり、角層厚が10 µm未満になるとデバイス設計の違いも透過量に影響し得るとシミュレーションで示しています(PMID: 17666825)1)

3-2. Yoshihara S, et al. (2010) / in vivo(ラット背部・皮膚バリア低下モデル)
先発品は粘着層に結晶と溶解分子を併せ持つ「結晶レジボアシステムを採用しています。後発品は当時の特許保護により、結晶を持たないマトリックスタイプで設計されていました。

この研究ではラット背部の経皮水分蒸散量で皮膚バリアの状態を評価しています。健常皮膚の経皮水分蒸散量は約3 g/m²·hですが、角層をテープストリッピングで除去した群では約108 g/m²·hまで跳ね上がりました。バリアが低下した皮膚では、後発2製剤の皮膚内移行量が先発より有意に高い時間帯が確認されています。つまり、皮膚の状態によって製剤間差が顕在化し得るということです(PMID: 20930390)2)

3-3. Watanabe T, et al. (2011) / PKモデル解析
この研究では「製剤からの放出速度(k1)」と「皮膚の透過速度(k2)」の関係に注目しています。先発品はk1とk2がほぼ同程度(k1≈k2)であるのに対し、一部後発品ではk1がk2の2〜4倍と推定されました。

通常の状態ではこの差は血中濃度にあまり影響しません。しかし皮膚バリアが低下してk2が上昇すると、後発品ではCmaxが高くなり、立ち上がりが速く、消失も速い挙動が予測されています。臨床で注意すべきリスク因子として、アトピー性皮膚炎、ステロイド長期使用、高齢が挙げられており、切替後は有効性低下や副作用のモニタリングが必要と提案されています(PMID: 21963976)3)

3-4. 第33回ジェネリック医薬品・バイオシミラー品質情報検討会 資料33-3-2(QA4)に紹介された和田らの報告 (2024)
先発品ホクナリンテープ2 mgを含む計9製剤を、日局に準拠した膜透過試験で比較した報告です。全製剤とも開始1時間後に最大膜透過速度へ到達し、その後は漸減しています。先発品と「YP」は最大膜透過速度が低めで、他の後発品は先発品より有意に高い製剤が多い、との結果でした。

ただし、これはあくまでin vitroの試験です。膜透過試験の結果から生物学的同等性や臨床での同等性を直接判定することはできません。各後発品は承認時にヒトPK等で同等性が評価されている点も併記されています4)


4. 関連した質問

Q1. 「吸収速度差」は、どの指標を見ればよいですか?
承認審査での主要評価項目はAUCとCmaxです。ただし、先発・後発で初期放出や膜透過に差がある以上、吸収の「速さ」を考える場面ではTmaxや貼付後の濃度の立ち上がりも補助的に参照されます6) 8)

Q2. どんな患者で差が臨床的に出やすいですか?
皮膚バリアが低下している患者です。具体的にはアトピー性皮膚炎、擦過傷、角層が薄い部位への貼付が該当します。先発品の電子添文でも、損傷皮膚では血中濃度が上昇する旨が注意喚起されています2) 7)

Q3. 切替後、どれくらいで評価・再受診を促すべきですか?
電子添文では「正しく使用しても効果が認められない場合(目安1〜2週間程度)は中止」とされています。切替後もこの期間を目安に、症状・SABA(短時間作用型吸入β2刺激薬)の使用回数・副作用を確認し、必要に応じて製剤の変更を検討するのが現実的です7)

Q4. 貼付部位をどう運用すると安全ですか?
貼付前に皮膚を清拭し、毎回貼る場所を変えて刺激を減らします。創傷面への貼付は避けてください。損傷皮膚では血中濃度が上昇するおそれがあります7)


5. まとめ

  • 切替時は製剤の違いよりも先に、患者の皮膚状態(アトピー・損傷の有無)を確認する2) 7)
  • 後発品は生物学的同等性で幾何平均比0.80〜1.25(90%CI)を満たす設計だが、初期放出の差は皮膚バリアが低下した条件で表面化し得ることを理解しておく1) 3) 6)
  • 貼付手技は「清拭→貼付」「毎回部位変更」「創傷面は避ける」を標準化し、切替後は1〜2週間で有効性・副作用を再評価する7)
  • 用法用量を超えて貼らない(不整脈〜心停止のリスクがある)。急性増悪にはSABA等の別手段を指導し、貼付剤がコントローラーの代わりになるという誤解を防ぐ7)

6. 参考文献

【引用文献】

  1. Tojo K, Hikima T. Bioequivalence of Marketed Transdermal Delivery Systems for Tulobuterol. Biol Pharm Bull. 2007;30(8):1576-1579. PMID: 17666825.
  2. Yoshihara S, Fukuda H, Abe T, Arisaka O. Comparative Study of Skin Permeation Profiles between Brand and Generic Tulobuterol Patches. Biol Pharm Bull. 2010;33(10):1763-1765. PMID: 20930390.
  3. Watanabe T, Satoh H, Hori S, et al. ツロブテロール貼付後の血漿中濃度に及ぼす製剤特性と皮膚透過性の影響に関する薬物動態学的解析. 薬学雑誌. 2011;131(10):1483-1492. PMID: 21963976.
  4. 第33回ジェネリック医薬品・バイオシミラー品質情報検討会 資料33-3-2 後発医薬品文献調査結果のまとめ
  5. Kato H, Nagata O, Yamazaki M, et al. Development of transdermal formulation of tulobuterol for the treatment of bronchial asthma. Yakugaku Zasshi. 2002;122(1):57-69. PMID: 11828751.
  6. 厚生労働省. 薬生薬審発0319第1号(後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン). 2020.
  7. 医薬品医療機器総合機構. ホクナリンテープ(ツロブテロール)電子添付文書. 2024年7月改訂.
  8. ツロブテロールテープ0.5 mg「YP」インタビューフォーム(ホクナリンテープとの生物学的同等性試験成績).
  9. Nishima S, et al. Surveys on the prevalence of pediatric asthma in Japan: A comparison between the 1982, 1992, 2002, 2012, and 2022 surveys conducted in the same region using the same methodology (WJSAAC Phase I-V). World Allergy Organ J. 2025;18(5):101052. PMID: 40331227.
  10. 泉太郎, ほか. ツロブテロールテープ製剤の銘柄間切り替えに伴う喘息症状, 副作用, 製剤使用感の変化に関する実態調査. 薬学雑誌. 2012;132(5):617-627. PMID: 22687698.

【参考文献】

  1. ホクナリンテープ電子添文:損傷皮膚で血中濃度上昇、貼付時の実務注意(清拭・部位変更・創傷面回避). 2024.
  2. Ishimura A, Tabayashi H, Inoue M. Clinical Implications of Mechanical and Adhesive Differences Between Branded and Generic Tulobuterol Patches in Asthma Management. Cureus. 2025;17(11):e96638. PMID: 41393675.
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