【質問】経皮吸収の貼付剤について
貼付部位がそれぞれ指定されていますが、「吸収がかわる」「AEDのとき見つけやすいように」「はがれやすいため」などなにか理由があるのでしょうか?他の場所に貼付することも可能なのでしょうか?・ツロブテロール ・イクセロン ・ニュープロ ・エストラーナ ・メノエイド ・フランドル ・ニコチネル ・ニトロダーム ・ビソノ ・フェントス ・ノルスパン など
【A】各製剤の臨床試験時における資料などから、貼付部位における「バイオアベイラビリティの差」を主な検討対象として、試験が実施され、貼付部位の決定がされていると考えられます。
以下に挙げる薬剤は「胸部」と「腹部」のいずれかが貼付部位となっており、「胸部」と「腹部」を基準として、バイオアベイラビリティの同等性から他の部位が設定されていると考えられます。質問者にあるように、「AEDのとき見つけやすいように」「はがれやすいため」などの理由でも、貼付部位の検討の一つにもなるとは思います。
経皮吸収型製剤は以下に示す通り、貼付剤の種類によって異なっています。
・ホクナリンテープ‥胸部、背部、上腕部
・イクセロンパッチ‥胸部、背部、上腕部
・フランドルテープ‥胸部、背部、上腕部
・ビソノテープ‥胸部、背部、上腕部
・ノルスパンテープ‥前胸部、上背部、上腕外部、側胸部
・ニュープロパッチ‥上腕部、腹部、側腹部、臀部、大腿部
・エストラーナテープ‥下腹部、臀部
・メノエイドコンビパッチ‥下腹部
・ニコチネルTTS‥上腕部、腹部、腰背部
・ニトロダームTTS‥胸部、腰部、上腕部
・フェントステープ‥胸部、腹部、上腕部、大腿部等
・ハルロピテープ‥胸部 、腹部 、側腹部 、大腿部、上腕部
この中で、ノルスパンテープ、メノエイドコンビパッチ、ニトロダームTTS、ハルロピテープの貼付場所の設定方法について調査しました。
①ノルスパンテープ
部位における吸収の違い ‥ 側胸部=上腕外部=前胸部=上背部
高齢者
上背部 (100%) > 下側腹壁部群(73.6%) > 大腿側上部群(57.0%) > 膝蓋骨上部群(29.2%)
異なる貼付部位でのバイオアベイラビリティ(外国人)
海外第Ⅰ相試験において、本剤の貼付部位がブプレノルフィンの薬物動態に及ぼす影響を検討するために、健康成人20例に対し、異なる貼付部位(上腕外部、前胸部、上背部)に本剤10mgを7日間貼付した時のバイオアベイラビリティを対照部位(側胸部)と比較した。前胸部への本剤10mg貼付は対照部位への本剤10mg貼付と生物学的に同等であった。上腕外部及び上背部への貼付については、いずれも対照部位への貼付とは生物学的同等性を示すことができなかったが、対照部位に対する上腕外部への本剤10mg貼付時のCmax及びAUC0-192の比は112%及び118%、上背部への本剤10mg貼付時のCmax及びAUC0-192の比は123%及び126であり、いずれの部位も対照部位と大きな差はなかった。残渣法により算出された本剤10mgのブプレノルフィン放出速度(貼付期間:7日)は、4つの貼付部位間で差はなく、本剤のブプレノルフィン放出特性に貼付部位間で差は認められなかった。また、安全性にも貼付部位間に差は認められなかった。これらの結果から、本剤(貼付期間:7日)は上腕外部、前胸部、上背部、側胸部の貼付部位に交互に適用できると考えられた。
→ノルスパンテープの貼付部位別のバイオアベイラビリティは「側胸部=上腕外部=前胸部=上背部」となっています。
高齢健康者
30 例を対象に、本剤5mgの1枚を上背部に1回貼付と、本剤5mgの1枚を大腿側上部、下側腹壁部、膝蓋骨上部のいずれかに1回貼付、計2回貼付したとき、上背部を対照部位としたときの AUCの比は、下側腹壁部群がもっとも高く( 73.6%)、 次いで、大腿側上部群57.0%及び膝蓋骨上部群(29.2%)で あり 、大腿側上部群及び膝蓋骨上部群では十分な血中濃度が得られなかった 。また、腰部へ貼付したときの薬物動態は確立されていない。
→「上背部 (100%) > 下側腹壁部群(73.6%) > 大腿側上部群(57.0%) > 膝蓋骨上部群 (29.2%)」であることがわかります。
外国人健康成人
本剤10mgを交叉比較法により上腕外部、前胸部、 上背部又は側胸部に7日間単回貼付したとき、血漿中末変化体の薬物動態パラメータは表13のとおりであり、 側胸部に貼付したときのCmax及びAUCに対する幾何平均値の比は、それぞれ上腕外部で1.12及び1.18、前胸部で1.06及び1.07、上背部で1.23及び1.26であり、貼付部位による大きな差は認められなかった。
→「側胸部=上腕外部=前胸部=上背部」であることがわかります。
高齢者における貼付部位の影響
外国人高齢者30 例を対象に、 本剤5mgを交叉比較法により大腿側上部、下側腹壁部及び膝蓋骨上部のいずれか又は上背部に7日間単回貼付したとき、 血漿中未変化体の薬物動態パラメータは表14 のとおりであ り、上背部に貼付したときのCmax及びAUCに対する幾何平均値の比は、それぞれ大腿側上部で 0.78及び0.57、下側腹壁部で0.78及び0.74、膝蓋骨上部で0.53及び0.29と低値であった。変形性関節症又は慢性膀痛症患者では本剤を誤って膝、腰等の疼痛部位に貼付されるおそれがあることから、本剤の貼付部位に関する注意喚起について申請者に説明を求めた。
申請者は、本剤を大腿側上部、下側腹壁部及び膝蓋骨上部に貼付したときの血漿中末変化体濃度(Cmax 及び AUC) は上背部に貼付したときと比較して0.3~ 0.8倍と低値であったことを踏まえ、本剤の添付文書(案)においては、本剤は前胸部、上背部、上腕外部又は側胸部に貼付し、膝や腰部には貼付しないよう注意喚起していることを説明した。(ノルスパンテープ 審査報告書)
→貼付部分を誤って、「膝や腰部」に貼ってしまったときの吸収について調査したところ、「膝や腰部」に貼付すると上背部と比較して、低吸収であったことがわかります。
②メノエイドコンビパッチ
外国人閉経後健康女性 18 例を対象に、腹部と臀部に貼付した時のバイオアベイラビリティ(BA) を評価する目的で、非盲検2部位2期クロスオーバー試験が実施された。本剤16cm2製剤を腹部又は臀部に4日間貼付したときの薬物動態パラメータは以下のとおりである。
・血清中 E2 濃度 AUC 腹部 5720.3 臀部 4612.2
・血清中 E1 濃度 AUC 腹部 8050.2臀部 7954.6
・血清中 NET 濃度 AUC 腹部 78294臀部 60916腹部貼付時の血清中E2及びNET濃度のCmax及びAUCは、臀部貼付時より大きかったが、血清中E1については両投与部位で同様であった。
→腹部と臀部のみで比較されています。臀部の方が若干吸収が低下することがわかります。
③ニトロダームTTS
健康成人9名にニトロダームTTS 50mg/20cm2システム1枚を、クロスオーバー法にて、胸郭部外側、上腕外側および腸骨陵に貼付し、6時間後の血漿中濃度を比較した結果、3部位で有意差は認めなかった。Gerardin,A.et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res.35(II),2,530-532,19
→胸郭部外側、上腕外側および腸骨陵で差はありませんでした。それ以外の部分では検討されていません、
④ハルロピテープ
貼付部位検討試験
健康成人男性15例を対象に、貼付部位別の本剤のPKを検討する目的で、本剤4.8mgを胸部、腹部、側腹部、大腿部又は上腕部に単回経皮投与(24 時間貼付)する5群5期クロスオーバー試験が実施され た (休薬期間 : 9~13日間)。貼付部位別の本薬の PKパラメータは、以下のとおりであった。貼付部位別の薬物吸収割合
胸部28.0±6.3%
腹部 31.5±5.1%
側腹部 33.9±6.8%
大腿部 31.1±7.2%
上腕部 32.4±10.2%
→胸部、腹部、側腹部、大腿部又は上腕部では吸収に大きな差はありませんでした。
貼付部位検討試験
本剤を胸部、腹部、側腹部、大腿部又は上腕部に貼付したときの安全性及びPKを検討する目的で、健康成人を対象に、本剤 4.8mgを24時間貼付する非盲検5群5期クロスオーバー試験が国内1施設で実施された(休薬期間 : 9~13日間、目標症例数 : 15例)。治験薬が投与された15例全例が安全性解析対象集団とされたが、2例が側腹部への治験薬が未投与であり、当該貼付部位の安全性解析対象として不採用とされた。中止例はなかった。有害事象の発現割合は、胸部貼付時20.0%(3/15 例)、腹部貼付時20.0% (3/15例)、側腹部貼付時7.7% (1/13例)、大腿部貼付時 20.0% (3/15例)及び上腕部貼付時26.7% (4/15例) (以下、同順)であり、主な事象は、起立性低血圧 (1例、0例、0例、2例、3例)及び下痢(0例、2例、0例、0例、0例) であった。死亡、重篤な有害事象及び治験薬の投与中止に至った有害事象は認められなかった。申請者は、貼付部位について、以下のように説明した。健康成人男性を対象とした JP-01 試験で本剤4.8mgを胸部、腹部、側腹部、大腿部及び上腕部にそれぞれ24時間単回投与したときのPK及び安全性は、いずれの投与部位でも同様であったことから)、後期第II相試験以降の試験では投与部位を胸部、腹部、側腹部、大腿部又は上腕部のいずれかの皮膚に貼付することとした。
→吸収と副作用の面から、貼付部位が設定されたと考えらます。