【Q】キシロカインのアレルギー患者に対してエステル型局所麻酔薬は投与可能か?

【質問】キシロカイン(メチルパラベン含有)製剤に対してアレルギー疑いのある患者にエステル型局所麻酔薬は投与可能か?

【A】キシロカイン自体が原因でアレルギーが起きた場合と、添加物であるメチルパラベンが原因でアレルギーが起きた場合とで分けて考える必要があります。

キシロカイン自体が原因薬物として、アレルギーが起きた場合は、エステル型局所麻酔薬を投与することは、可能と考えられます。一方で、キシロカイン内に含まれている添加物のメチルパラベンによってアレルギーが起きた場合は、エステル型局所麻酔薬を避けた方が望ましいとは考えられます。エステル型局所麻酔薬は、血漿中のコリンエステラーゼで加水分解されてパラアミノ安息香酸が生成されます。このパラアミノ安息香酸とメチルパラベンは化学構造が類似しており、交差抗原性があるためです。

また、エステル型局所麻酔薬自体のアレルギー頻度は、アミド型のものに比べ高いことに注意が必要です。パラアミノ安息香酸が高い抗原性をもち、抗体産生やTリンパ球の感作を促すためです。
(参考 : 日本ペインクリニック学会誌 Vol.21 (1),  2014)

以上より「添加物のメチルパラベンが原因薬物として、アレルギーが起きた場合は、他のアミド型の局所麻酔薬を使用する」など、実臨床においては、局所麻酔薬の代替薬は多くないため、柔軟に考える必要がありそうです。

局所麻酔薬一覧

  • テトラカイン(商品名 コーパロン、テトカイン)‥エステル型
  • プロカイン(商品名 プロカニン、ロカイン)‥エステル型
  • ジブカイン‥アミド型
  • ブピバカイン(商品名 マーカイン)‥アミド型
  • メピバカイン(商品名 カルボカイン)‥アミド型
  • レボブピバカイン(商品名 ポプスカイン)‥アミド型
  • ロピバカイン‥(商品名 アナペイン)‥アミド型
  • リドカイン‥(商品名 キシロカイン)‥アミド型

 

禁忌
(次の患者には投与しないこと)
[共通(硬膜外麻酔・伝達麻酔・浸潤麻酔・表面麻酔)]
本剤の成分又はアミド型局所麻酔薬に対し過敏症の既往歴のある患者
(添付文書 : キシロカイン注射液0.5%, 1%, 2%)

会員登録していただくとできること
記事を全文閲覧できます。 記事を全文閲覧できます。
記事の全文が検索できます 記事の全文が検索できます。
週1回メルマガが届きます 週1回メルマガが届きます
質問投稿することができます 質問投稿することができます

関連記事

キシロカイン注射液1%Eの代替薬は?

【質問】キシロカイン注射液1%Eに規制がかかり、病院としての使用量をカバー出来ない状況となっています。 麻酔科医や形成外科医からは「アドレナリン入りが無いと困る」と言われるのですが、他の麻酔薬での代替...

【Q】漢方薬で注意すべき食物アレルギーは?

【A】特定原材料や特定原材料に準ずるものに指定されている食物が含有された漢方薬は特に注意が必要です。 具体例を挙げると、山芋アレルギーは山薬が含有されている「八味地黄丸」「牛車腎気丸」「六味丸」、小...

新着記事

「用時懸濁」指示時における粉末服用の可否は?

【質問】ドライシロップについて。用法に用時懸濁とだけ記載ある場合は、粉のまま服用できる患者だとしても必ず水に溶かしてから服用する必要があるのでしょうか。 テオフィリンDSのように顆粒のままでも服用でき...

亜鉛製剤による銅欠乏リスク:血清亜鉛値が正常でも銅の定期測定は必要か?

【質問】貧血傾向がある方で、ポラプレジンクや酢酸亜鉛などの亜鉛補充の薬を長期的に内服していた場合の銅欠乏の副作用についてどのようにフォローすべきなのかご教示ください。 採血で亜鉛の項目を確認すること...

欠食はSERMの血栓症、活性型VD3の高Ca血症リスクを高めるか?

【質問】欠食は、SERMと活性型VD3製剤の副作用リスク因子となるか。 SERMの静脈血栓症、活性型VD3製剤の高カルシウムの副作用について。 1食抜くと400mlの水分不足となると言われていますが、摂取水分の減少の面...

新着記事をもっと見る