【質問】マクロライド少量長期投与について質問です。 「少量」というのは半量なのか、回数を減らすのか、どちらが一般的なのでしょうか? また、効果の判定はどの程度の期間が一般的ですか?
【A】「マクロライド少量長期投与」は好中球性炎症性気道疾患に対して保険適応になったこともあり、徐々に認められてきました。
※注 「好中球性炎症性気道疾患」に対する保険適応の通知があったのは「クラリスロマイシン【内服薬】」のみ、他のマクロライド系は通知されていないため注意が必要
マクロライド少量長期投与は「エリスロマイシン400〜600mg / 日」、「クラリスロマイシン200〜400mg / 日」が一般であると考えられます。ただし、これらの用量は経験則によるものとされています。
個人的には実際の臨床現場において「クラリスロマイシン200mgを1日1回」で投与されるケースが散見されます。
投与期間については、慢性副鼻腔炎に用いる場合は3〜6ヶ月と報告されていますが、COPDや中耳炎に関しては明確にはされていません。
以下に詳細を記載します。
「マクロライド少量長期投与」がCOPDの増悪予防など呼吸器領域 (びまん性汎肺細気管支炎・慢性閉塞性肺疾患(COPD)) や耳鼻咽喉科領域 (慢性副鼻腔炎・小児滲出性中耳炎) において使用される理由は、マクロライドには「免疫調節作用、抗炎症作用」があるためとされています。
①慢性副鼻腔炎
以下の用量は経験則的に決められたものであり、二重盲検試験などの信頼性が高い臨床試験が行われていないことに注意が必要です。
慢性副鼻腔炎に対するマクロライド療法のガイドライン(試案)
成人 : エリスロマイシン400〜600mg、クラリスロマイシン200〜400mg
小児 : エリスロマイシン8〜12mg / 日、クラリスロマイシン4〜8mg / 日3ヶ月の投与で全く無効な症例は他剤に変更し、有効でも3〜6ヶ月で中止し、再燃した場合は再投与する。
(参考 : 副鼻腔炎に対するマクロライド療法 Vol.47. (8), 2006)
→成人の慢性副鼻腔炎に使用する場合はエリスロマイシン400〜600mg、クラリスロマイシン200〜400mgとされており、期間は3〜6ヶ月程度であると考えられます。
②浸出性中耳炎
学会発表レベルの症例報告ですが、浸出性中耳炎(高齢者)に対して以下の用量で使用されています。
a. クラリスロマイシン400mg/日 1週間投与後→クラリスロマイシン200mg/日 2週間投与後、改善
b. セフポドキシム・プロキセチル 2週間投与後→クラリスロマイシン200mg/日 4週間投与後、改善
c. トスフロキサシン2週間投与後→クラリスロマイシン200mg/日 1週間投与後、改善
d. シタフロキサシン3週間投与後→クラリスロマイシン200mg/日 2期に分けて14週間投与後、改善
(第117回日本耳鼻科咽喉科学会 2016 P-056)
→このように浸出性中耳炎に対して、マクロライド少量長期投与が有効であった症例が報告されており、クラリスロマイシン200mg/日の投与期間は1〜14週間となっています。
③COPD (慢性閉塞性肺疾患)
マクロライド (クラリスロマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン)による全増悪および重症増悪頻度の特性、増悪による外来受診や入院頻度の抑制、治療介入時の増悪の持続期間の短縮、次の増悪が生じるまでの期間の延長、QOLの向上などが報告され (エビデンスB-C)、メタ解析でも増悪抑制が報告されている(エビデンスB)。マクロライドのCOPD増悪抑制効果には、気道炎症や喀痰分泌抑制、細菌病原性抑制、抗ウイルスなど作用の関与が報告されている、(エビデンスB)
増悪予防目的のマクロライドを主とした抗菌薬投与は、COPDの増悪を有意に減少させるが、副作用・耐性菌のリスクを考慮すると適応は慎重に判断すべきである。(エビデンスA)
※エビデンスAがもっともエビデンスレベルが高い
(引用 : COPD診断と治療のためのガイドライン2018)
→「COPD診断と治療のためのガイドライン2018」にもマクロライドのCOPD増悪抑制効果が言及されています。
アジスロマイシン250mg/日
COPDの患者で、アジスロマイシン250mg/日の1年間服薬により、COPD増悪の頻度が減少し、QOLが向上した。しかし、聴力低下を引き起こた患者がみられた。
(Azithromycin for Prevention of Exacerbations of COPD N Engl j med 365;8 689-698)
→海外の論文において、アジスロマイシン250mg/日の少量長期服薬でCOPDの増悪が低下したと報告されています。
適応は?
呼吸器疾患である「びまん性汎肺細気管支炎」、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」、耳鼻科領域疾患である「慢性副鼻腔 炎」「小児滲出性中耳炎」が適応などの「好中球性炎症性気道疾患」に対してマクロライド少量療法が保険適応となりました。(厚生労働省保険局医療課長通知 2011 年 9 月 28 日)
※「好中球性炎症性気道疾患」に対する保険適応の通知があったのは「クラリスロマイシン【内服薬】」のみ、他のマクロライド系は通知されていないため注意が必要
耐性菌について
エリスロマイシンやクラリスロマイシンの長期投与については、喀痰中のマクロライド耐性菌の検出頻度に変化は認められていない。アジスロマイシンの長期投与において、アジスロマイシンの耐性化率の上昇が指摘されている。COPD診断と治療のためのガイドライン2018)
→エリスロマイシンやクラリスロマイシンは耐性菌が生じにくい抗菌薬とも考えられますが、明確にはされていません。一般的には耐性化に注意が必要と考えられます。