【Q】デュロキセチン (サインバルタ) を疼痛緩和目的に服薬する場合、頓服ではなく継続することが必要か?

【質問】抗うつ剤は効果を実感できるまで継続の必要がありますが、これを痛み止めとして使用する場合も継続しなければ効果は得られないのでしょうか? それとも頓用のような使い方もできるのでしょうか? 「眠気がでないか飲めるときに飲んで試してみて」と指示されている患者さんがいたのですが、副作用の有無はチェックできるとして、その期間に効果の有無を判定できるのかどうか疑問に思いました。

【A】三環系抗うつ薬、SSRI、SNRIなどの抗うつ薬の「鎮痛効果」は、「抗うつ効果」と比較して投与後4〜7日の短期間で発現すると報告されています。抗うつ薬の中でも、SNRIは疼痛に対する効果発現が早いとされており、デュロキセチンに関しては、投与1週目で効果が発現したと報告されています。
以上より、抗うつ薬は2週間程度の期間が必要とされている「抗うつ効果」に比べて、「鎮痛効果」の効果発現時間は速やかとされていますが、数日はかかると考えられ、頓用による1日のみでの効果判定はできない可能性が高いと考えられます。

「鎮痛効果」の用量は、「抗うつ効果」よりも低用量の1/2〜1/3程度で「鎮痛効果」が現れるとされています。

(参考 : 神経障害性疼痛診療ブック, サインバルタカプセル インタビューフォーム, Neurology. 2006;67(8):1411 )

 

「抗うつ効果」と「鎮痛効果」のそれぞれの作用機序は下記の通りです。。

【抗うつ効果】
セロトニンやノルアドレナリンなど神経伝達物質を再取り込み阻害することにより、脳内の神経終末間におけるこれらの濃度を増加させることにより、抗うつ効果が発現します。

【鎮痛効果】
脳内におけるセロトニンとノルアドレナリンを増やすことにより、過度な疼痛を抑える下行性疼痛抑制系を活性化させることで、疼痛の伝達を遮断させ、鎮痛効果が発現します。さらに、α1受容体遮断作用、交感神経抑制作用、ヒスタミン受容体遮断作用、プロスタグランジン合成阻害作用、Caチャネル遮断作用、Naチャネル阻害作用による鎮痛機序も考えられます。さらに一定量のモルヒネで三環系抗うつ薬を投与するとモルヒネの血中濃度が上昇することが示されています。

 

 

デュロキセチン60 mg は迅速な作用発現を示し、24時間平均疼痛重症度スコアにおいて第1週目からプラセボとの差が生じた。
(A randomized controlled trial of duloxetine in diabetic peripheral neuropathic pain. Neurology. 2006;67(8):1411 )

会員登録していただくとできること
記事を全文閲覧できます。 記事を全文閲覧できます。
記事の全文が検索できます 記事の全文が検索できます。
週1回メルマガが届きます 週1回メルマガが届きます
質問投稿することができます 質問投稿することができます

関連記事

【Q】サインバルタを朝食後に投与する理由は?

【A】臨床試験時の用法が朝食後であったためという理由だけのように思われる。以下の記載の通り、飲み忘れを避けるために国内では朝食後としたとのこと。 眠気などの副作用が出る可能性があるため、就寝前の服薬...

新着記事

「用時懸濁」指示時における粉末服用の可否は?

【質問】ドライシロップについて。用法に用時懸濁とだけ記載ある場合は、粉のまま服用できる患者だとしても必ず水に溶かしてから服用する必要があるのでしょうか。 テオフィリンDSのように顆粒のままでも服用でき...

亜鉛製剤による銅欠乏リスク:血清亜鉛値が正常でも銅の定期測定は必要か?

【質問】貧血傾向がある方で、ポラプレジンクや酢酸亜鉛などの亜鉛補充の薬を長期的に内服していた場合の銅欠乏の副作用についてどのようにフォローすべきなのかご教示ください。 採血で亜鉛の項目を確認すること...

欠食はSERMの血栓症、活性型VD3の高Ca血症リスクを高めるか?

【質問】欠食は、SERMと活性型VD3製剤の副作用リスク因子となるか。 SERMの静脈血栓症、活性型VD3製剤の高カルシウムの副作用について。 1食抜くと400mlの水分不足となると言われていますが、摂取水分の減少の面...

新着記事をもっと見る