炭酸リチウムの塩分制限はどの程度まで許容されるか?

【質問】炭酸リチウムについて。 塩分制限の患者にはリチウム中毒の危険があるため禁忌ですが、どの程度の塩分制限患者のことを示すのでしょうか。例えば高血圧で塩分を控えてる方には炭酸リチウムは禁忌なのでしょうか。高血圧でも塩分制限していなければ、禁忌には該当しないのでしょうか。

【回答】炭酸リチウムを使用する場合、塩分制限を行っている患者には、リチウム中毒のリスクが上昇するため十分な注意が必要です。しかし、リチウム中毒のリスク要因は塩分だけではなく、NSAIDs、利尿剤のような腎機能に影響を与える薬剤との併用、循環量の減少、水分摂取量の減少、サウナ、発熱を伴う感染、下痢や嘔吐を伴う胃腸炎などがあり、「どの程度の塩分制限患者」かどうかは明らかな情報はありません。高血圧で塩分を控えてる方にはもちろん注意が必要と考えられます。さらに薬物治療を開始する前や治療中には、リチウム中毒の症状の有無や、血中リチウム濃度のモニタリングすることが重要となりそうです。

詳細は以下の通りです。

禁忌
食塩制限患者

リチウムイオンはその大部分が腎から排泄される。したがって、腎障害のある患者ではリチウムの体内貯留を生じ、重篤な副作用を生じる危険が高く、腎障害の既往歴のある患者ではそのおそれがある。衰弱又は脱水状態、発熱、発汗又は下痢を伴う疾患、食塩制限はいずれも、リチウムの体内貯留を起こさせる危険が高い。このため、これらの患者を禁忌とした。(リーマス錠 インタビューフォーム)

1. 炭酸リチウムと塩分制限
炭酸リチウムは腎臓での排泄が調節されるため、塩分の摂取が減少するとリチウムの排泄が減少し、その結果血中リチウム濃度が上昇する。そのため塩分制限を行っている患者はリチウム中毒の危険が増加する

2. 高血圧と炭酸リチウム
高血圧は炭酸リチウム投与の禁忌対象患者ではありません。ただし、塩分制限が勧められている高血圧患者は注意が必要となる

3. リチウム治療の注意点
リチウムは治療濃度と中毒濃度が隣接しているため、安全域が狭く、定期的な血中濃度測定が必要である腎機能、水分・塩分バランスの変化などは、リチウムの血中濃度に影響を与える。これらが変動する可能性がある患者は特に注意が必要です。また、NSAIDs、利尿剤のような腎機能に影響を与える薬剤との併用、循環量の減少、水分摂取量の減少、サウナ、発熱を伴う感染、下痢や嘔吐を伴う胃腸炎などはリチウムの血中濃度を上昇させる危険因子となりえる

4. リチウム中毒のリスク
リチウムは治療濃度と中毒濃度が近接しているため、血中濃度のモニタリングが重要です。
1978年の報告では、リチウム中毒による死亡率が9-25%とされていたが、近年のデータでは1%未満の死亡率となっている、
日本中毒情報センターへのリチウム中毒に関する報告は比較的少ないものの、米国のデータでは症候性リチウム中毒の報告が数千件あり、死亡例も存在する。

(参考 : 重篤副作用疾患別対応マニュアル リチウム中毒 令和3年3月 厚生労働省)

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