【質問】ヒルドイドフォーム0.3 % 92 g(先発品)を処方された患者に対し、薬局在庫や供給不安を理由にジェネリックであるヘパリン類似物質泡状スプレー0.3 % 100 gへ(あるいは逆方向に)変更調剤してよいか。変更時に必要な条件・手順は何か。
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結論
医薬品の供給不良を理由とするやむを得ない場合に限り、疑義照会なしでの変更調剤が可能です。具体的には、ヒルドイドフォーム92gと後発品のヘパリン類似物質泡状スプレー100gとの相互変更(92g⇔100g)は、患者への説明と同意を前提に特例として認められています。この措置は、製薬会社が厚生労働省に直接確認した結果であり、薬剤料が変更後(92g→100g)に高くなる場合でも、患者同意があれば査定対象外となります。ただし、処方箋に「変更不可」の指示がある場合はこの限りではありません。
背景
ジェネリックのヘパリン類似物質泡状スプレー(100g)に加え、一部地域では先発品のヒルドイドフォーム(92g)も供給が不安定になっています。こうした状況を受け、患者への医薬品供給を滞らせないため、2024年3月15日付の厚生労働省通知(3月28日周知)に基づき、含量規格や剤形が一部異なる医薬品への変更調剤に関する暫定的な緩和措置が講じられました。本件はその具体的な運用事例の一つです。
報告
- 厚生労働省通知(2024-03-15付)の運用 供給不安を背景に、処方箋に「変更不可」の記載がない限り、含量規格が異なる先発・後発医薬品への変更が可能とされました。変更後の薬剤料が上回る場合でも、患者への説明と同意、および処方医への情報提供を条件に認められます。
- 製薬会社による厚労省への直接確認 日東メディックやポーラファルマなどの製薬会社が厚生労働省経済課に確認した結果、「ヒルドイドフォーム92g」と「ヘパリン類似物質外用泡状スプレー100g」の相互変更は、供給不良を理由とする場合に限り、疑義照会不要で可能との見解が示されています。これは含量が異なる医薬品間の変更としては異例の特例措置です。
- 剤形が異なる場合の取り扱い ヘパリン類似物質の外用剤には複数の剤形が存在しますが、実務上、以下の通り整理されています。・フォーム剤 ⇔ 泡状スプレー剤: 相互に変更可能(患者に使用感の違いを説明し同意を得る必要あり)。
・通常のスプレー剤 ⇔ 泡状スプレー剤: 同一カテゴリーと見なされ、相互に変更可能。
・フォーム剤 ⇔ 通常のスプレー剤: 剤形の特性(塗布感や液垂れのしやすさ等)が大きく異なるため、原則として疑義照会が推奨されます。 - 一般名処方の場合の取り扱い
・【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 92g:ヒルドイドフォーム92gのみが該当。この処方に後発品100gを調剤することは、供給不安を理由に患者同意を得れば可能です。
・【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 100g:複数の後発品が該当。通常通り、銘柄を選択して調剤します。
関連した質問
- Q1. 92g処方を100g後発品に変更すると薬価が上がりますが、査定されませんか?
A. 2024年3月の通知で「薬剤料が変更前を上回る場合でも、患者への説明と同意があれば差し支えない」と明記されているため、適切な手順を踏めば査定対象外となります。 - Q2. 100g処方を92g先発品に変更することも可能ですか?
A. はい、可能です。100g⇔92gの双方向での変更が特例として認められています。ただし、総量が少なくなるため、その旨を患者に説明し、同意を得る必要があります。 - Q3. フォーム剤とクリーム剤など、泡状スプレー以外の剤形への変更は可能ですか?
A. いいえ、疑義照会なしではできません。今回の緩和措置はあくまで「同一剤形」またはそれに準ずる範囲(フォーム剤と泡状スプレー剤など)が対象です。フォーム剤からクリーム剤やローション剤への変更は、剤形区分が異なるため、必ず処方医への疑義照会が必要です。 - Q4. この特例措置はいつまで有効ですか?
A. 明確な期限は定められていません。通知名に「現下の医療用医薬品の供給状況における」とある通り、供給不安が解消されるまでの一時的な措置と解釈されています。供給状況が改善すれば、本措置は終了する可能性があります。
まとめ
- 在庫確認: 自薬局の在庫と医薬品の供給状況を確認し、変更調剤の必要性を判断する。
- 処方箋確認: 処方箋の「変更不可」欄にチェックがないことを確認する。
- 患者への説明と同意取得:
・供給状況により、処方された医薬品を用意できないこと。
・【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 92g:ヒルドイドフォーム92gのみが該当。この処方に後発品100gを調剤することは、供給不安を理由に患者同意を得れば可能です。
・【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 100g:複数の後発品が該当。通常通り、銘柄を選択して調剤します。代替薬の製品名、含量(g数)、および薬剤費の差額。
・【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 92g:ヒルドイドフォーム92gのみが該当。この処方に後発品100gを調剤することは、供給不安を理由に患者同意を得れば可能です。
・【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 100g:複数の後発品が該当。通常通り、銘柄を選択して調剤します。(必要に応じて)使用感の違い。
上記を説明し、変更に対する明確な同意を得る。
- 調剤と記録:・実際に調剤した医薬品の銘柄・規格でレセプトを請求する。
・調剤録に、変更の経緯と患者の同意を得た旨を必ず記載する。 - 処方医への情報提供: 調剤後に、変更内容(調剤した医薬品名、規格)を処方医に情報提供する(FAX、お薬手帳など)。
参考文献
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- 厚生労働省保険局医療課. 「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」事務連絡(2024-03-15)
- 製薬会社・薬剤師会等による2024年3月通知の解釈に関する調査報告
更新履歴
- 2025-08-03 初版作成