【コメント】2017年7月に製造販売承認された。適応は「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」であり、作用機序はJAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類のうちJAK1及びJAK2活性を阻害する薬剤である。
同薬効のJAK阻害剤としてゼルヤンツ錠が2013年5月に販売開始となっている。オルミエント錠とゼルヤンツ錠の違いは、ゼルヤンツ錠はJAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類すべて阻害するのに対し、オルミエント錠はJAK1及びJAK2活性のみを選択的に阻害する点である。これら二つの薬剤の効果を直接比較した試験はないが、臨床試験結果から同程度と考えられる。参考として以下に、ヒュミラとの比較を記載する。
メソトレキサート+ヒュミラ (アダリムマブ) 群 VS メソトレキサート+オルミエント (バリシチニブ) 群
→メソトレキサート+オルミエント (バリシチニブ) 群の方が痛み、疲労およびQOLに優位な改善が見られた。
Patient-reported outcomes from a phase 3 study of baricitinib versus placebo or adalimumab in rheumatoid arthritis: secondary analyses from the RA-BEAM study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28798049
- 用法の大きな違いはゼルヤンツは1日2回投与に対してオルミエントは1日1回投与である。また、両薬剤ともに腎機能障害の患者に対して減量する必要がある。
- 上気道感染、帯状発疹やLDLコレステロール上昇の副作用が比較的頻度が高く、注意が必要である。
以下、オルミエント錠の添付文書記載項目をまとめる。
【作用機序】JAK1及びJAK2活性を阻害し、STATのリン酸化及び活性化を抑制する。
JAKは炎症、免疫機能に関与するサイトカインや成長因子に関係している。
STATはシグナル伝達兼転写活性化因子であり、サイトカインに反応する遺伝子群の転写を亢進する。
【適応】既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
過去の治療においてメトトレキサートなどの少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。
【用法用量】通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。患者の状態に応じて2mgに減量する。
eGFR によって減量基準が決められている。
【副作用】本剤が投与された総症例3439例中、本剤との因果関係が否定されなかった有害事象は、41.5%に認められました。主な事象は、上気道感染(9.7%)、帯状疱疹(3.9%)等でした。主な臨床検査値異常は、LDLコレステロール上昇(43.2%)等でした1)。日本人の関節リウマチ患者を対象に含む臨床試験(第Ⅱ相及び第Ⅲ相試験)において、本剤が投与された総症例514例中、本剤との因果関係が否定されなかった有害事象は、68.7%に認められました。主な事象は、上気道感染(24.5%)、帯状疱疹(8.2%)等でした。主な臨床検査値異常は、LDLコレステロール上昇(51.5%)等でした1)。
オルミエント錠 医薬品インタビューフォーム 第2版
https://www.lillymedical.jp/jp/ja/_Assets/non_public/Olumiant/PDF/OLM_IF.pdf