ロコアテープ使用患者への 経口NSAIDs(ロキソニン)併用は可能か?

【質問】
皮膚科で指の痛みで、ロキソニンが9回分処方されたとき、他病院で坐骨神経でロコアテープ、トアラセット配合、タリージェが処方されていた場合ロキソニンは、最小限で服用することはありますか?

ビジュアル回答はこちら→ https://closedi.jp/vshare/539743975/

結論

併用は可能な限り避け、やむを得ず併用する場合はロキソニン (ロキソプロフェン)は必要最小限の頓用にとどめます。外用NSAIDsのロコアテープ使用中は、全身作用のNSAIDs併用を避け、必要時は最小限と明記されています。ロキソプロフェン添付文書でも他の消炎鎮痛剤との併用回避が示されています。上限は60–120 mg/回、最大180 mg/日です。。


背景

坐骨神経痛は侵害受容痛と神経障害性疼痛が混在し、治療ではNSAIDs・アセトアミノフェン・α2δリガンド(プレガバリン/ミロガバリン)・トラマドール/アセトアミノフェンなどを病態に応じて組み合わせます。高齢者・胃潰瘍既往・抗凝固薬などではNSAIDs関連の消化管出血や腎障害リスクが上昇します。外用NSAIDsでも多量使用や内服との重複で全身曝露が増えるため、重複NSAIDsは避け、最小限投与が原則です。


報告

  1. PMDA 患者向医薬品ガイド:ロコアテープ
    「この薬の使用中は、他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けてください。…やむを得ず使用する場合は…必要最小限の使用にとどめてください」と記載あり。(1)。さらに同時2枚貼付で体内濃度はフルルビプロフェン経口通常量と同程度に達すると記載(外用でも全身曝露が増える根拠)。
  2. ロキソプロフェン錠 添付文書
    「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」(2)、用法:60 mg/回、1日3回;頓用60–120 mg、最大180 mg/日。併用・長期には消化管・腎への安全性配慮が必要。
  3. トアラセット配合錠添付文書
    通常1回1錠、1日4回、必要により1回2錠まで;最大1日8錠=アセトアミノフェン 325×8=2,600 mg/日、トラマドール 37.5×8=300 mg/日。他の同成分製剤との重複回避が明記。
  4. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版(日本ペインクリニック学会, 2016)
    坐骨神経痛の薬物療法にNSAIDs/アセトアミノフェン、三環系抗うつ薬、α2δリガンド、オピオイド(トラマドール等)が記載。病態に応じた多剤併用の位置付けを示す(重複NSAIDsは推奨せず)。
  5. Jansen etal., 2018 / RCT
    ミロガバリン+トラマドールで有意なPK相互作用はなく、悪心増加・傾眠など過度の中枢抑制がみられた(PMID: 29870596)。
  6. 消化性潰瘍診療GL 2020(日本消化器病学会)
    NSAIDs関連潰瘍の一次・二次予防ではPPIが第一選択。潰瘍既往・高齢・抗血栓薬併用は高リスク。
  7. CKD診療GL(日本腎臓学会 2023/2024 関連資料)
    脱水時や腎機能低下ではNSAIDsでAKIリスク上昇、休薬・最小限使用の検討を推奨。国際的にもeGFR<30 mL/min/1.73 m²ではNSAIDs回避、eGFR < 30–59では長期使用回避が推奨。

関連した質問

Q1: ロコアテープを貼っている日にロキソニンを飲んでも良い?
A: 可能な限り避けます。やむを得ず飲む場合は60 mgを食後に単回から、最小限の回数で。最大180 mg/日を超えない、連用は避ける。

Q3: トアラセット・タリージェとの相互作用は?
A:傾眠・めまいなど中枢抑制に注意(トラマドール+ミロガバリンのDDIで傾眠・悪心増加)。運転等は避ける。

Q4: 胃薬は要る?高リスクならPPI併用を検討?
A: 胃潰瘍既往・高齢者・抗血栓薬併用などはPPI併用で予防が推奨。


まとめ

  • 重複NSAIDsを避ける:ロコアテープ中はロキソニンは必要最小限の頓用に限定。
  • 用量管理:ロキソプロフェン60–120 mg/回、最大180 mg/日を遵守、連用回避
  • 中枢抑制:トアラセット+タリージェで傾眠・ふらつき増強に注意
  • 胃腸/腎への負担:高リスクではPPI併用、脱水・CKDではNSAIDs回避/最小限

参考文献

6-1 引用文献
(1) PMDA 患者向医薬品ガイド:ロコアテープ
(2) ロキソプロフェン錠60 mg「EMEC」添付文書(2024年10月改訂)。「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」、用量上限の記載あり。
(3) トアラセット配合錠「DSEP」添付文書(2024年8月改訂)。最大8錠/日=APAP 2,600 mg/日、トラマドール 300 mg/日。
(4) 日本ペインクリニック学会. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版(2016)。坐骨神経痛の薬物療法の位置づけ。
(5) Jansen M, et al. 2018. Clin Pharmacol Drug Dev. Mirogabalin×Tramadol等のDDI:PK影響小だが傾眠・悪心増加。(PMID: 29870596)
(6) 日本消化器病学会. 消化性潰瘍診療ガイドライン 2020(改訂第3版):NSAIDs潰瘍予防はPPI推奨。
(7) 日本腎臓学会. CKDに対する薬物治療(2023):脱水時や腎機能低下でNSAIDsはAKIリスク↑、最小限使用。国際的にはeGFR<30で回避等。

6-2 参考文献(背景理解・補助)

  • 日本整形外科学会/日本腰痛学会. 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版(2019)。
  • 日本整形外科領域 資料:坐骨神経痛の診療指針(JSPC資料)

一言まとめ

ロコアテープ使用中のロキソニンは原則回避。やむを得ずは60–120 mg頓用で最小限、最大180 mg/日。高リスクはPPI併用やNSAIDs回避を。

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