ケミカルメディエーター遊離抑制薬(トラニラストなど)と抗ヒスタミン薬(第2世代)は併用可能か?

【質問】トラニストを服用している患者でオロパタジンの併用がよくないとのことでモンテルカストに変更になった患者がいました。投薬時、恥ずかしながら理由が分かりませんでした。ネットで調べたところ下記の理由が分かりました。第2世代抗ヒスタミン薬にはケミカルメディエーター遊離阻害作用があるため併用できません。ただ、実務上、複数の抗ヒスタミンの併用はありますので、そのことを考えるとなぜダメなのかが分かりません。

【A】第2世代抗ヒスタミン薬の多くは、ケミカルメディエーター遊離抑制作用がありますが、その作用は弱いとされています。( 鼻アレルギー診療ガイドライン2023)

オロパタジン塩酸塩は、選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用とし、更に化学伝達物質(ロイコトリエン、トロンボキサン、PAF等)の産生・遊離抑制作用を有し、神経伝達物質タキキニン遊離抑制作用も有する。(アレロック錠 添付文書)

ケミカルメディエーター遊離抑制薬の経口剤には、トラニラスト経口剤、アンレキサノクス経口剤、ペミロラスト経口剤などがありますが、これらの鼻閉に対する有効性は第1世代の抗ヒスタミン薬よりも高いと報告されています。そのため、薬理作用だけを考えれば、第2世代抗ヒスタミン薬とケミカルメディエーター遊離抑制薬との併用は第2世代抗ヒスタミン薬単剤使用と比較して、鼻閉症状のある患者に対して有効であると考えられます。しかし、実際に併用した効果に関しての情報はありません。

一方で、鼻アレルギー診療ガイドライン2023において、アレルギー鼻炎やスギ花粉症患者の中等症以上の患者には症状に応じて、第2世代抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬の併用が行われていると明記されています。

アレルギー性鼻炎は鼻粘膜に存在するマスト細胞や好酸球から遊離されるヒスタミンやロイコトリエン、PGD2、TXA2などの化学伝達物質が直接作用することで、鼻粘膜の容積血管平滑筋の弛緩と血漿漏出による間質浮腫が生じる疾患です。

プランルカストによる鼻閉の改善率は抗ヒスタミン薬よりも有意に優れており、さらにモンテルカストは投与期間に応じて治療効果が増し、鼻閉を含むすべての鼻症状に有効なことが報告されています。これらのエビデンスがあるため、第2世代抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬が併用されることが多いと考えられます。
(参考 : 鼻アレルギー診療ガイドライン2023)

 

トラニラストは、抗原抗体反応に伴って起こる肥満細胞等からのヒスタミンやロイコトリエンC4・D4などのケミカルメディエーターの遊離を抑制し、抗アレルギー作用を示す。受容体拮抗はない。
(トラニラストカプセル 添付文書)

 

ケミカルメディエーターとは化学伝達物質で生体が生命活動を支えるために細胞間で行う様々な情報伝達を仲介する物質の総称と定義されています。セロトニン、ヒスタミン、ロイコトリエンなどもこちらに含まれています。(医学書院 医学大辞典 第2版)

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