ゼビアックスと過酸化ベンゾイル製剤の併用で着色した場合の対処法は?洗えば落ちるのか?

【質問】ゼビアックスと過酸化ベンゾイル製剤の併用による着色について。添付文書に「重ねて塗布すると黄色に変色することがあるため、皮膚や衣服等への着色に注意すること」とあります。まずは着色しないようにすることが前提ではありますが、それでも皮膚に着色した場合、洗浄することで除去できるのでしょうか。調べましたが明確な回答が得られず、臨床では皮膚への着色に対してどのように対処しているのかご教示いただけますと幸いです。

1. 結論

  • 着色が洗浄で落ちるかを直接検討したデータは存在しません。除去率も持続期間も未検討です1)
  • ただしインタビューフォームは、これを「重ね塗りによる本剤の変色によるもの」と記載しています。皮膚上にあるのが変色した製剤であるなら、低刺激の洗顔料とぬるま湯で一度やさしく洗い流すことがまず試したい対応になります。ただし完全に落ちる保証はありません1)
  • 落ちなかったときにこすらないことが最も重要です。アルコール、オキシドール、漂白剤による脱色は根拠がなく、皮膚を傷めるだけです5)

2. 背景

  • ゼビアックスローション/油性クリーム(オゼノキサシン)は表在性皮膚感染症とざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)に用いる外用抗菌薬で、過酸化ベンゾイル(BPO)製剤を併用するケースも臨床現場ではみられます。2024年1月の自主改訂で着色に関する注意が新設されました(マルホの改訂のお知らせには、この内容がDSU No.324に掲載される旨も記載されています)1) 3)
  • 公表情報は「予防」で止まっている点が、この質問に答えが見つからない理由です。添付文書もインタビューフォームも患者向け資材も重ね塗りを避ける方法までは丁寧に書いていますが、着色してしまった後の対処には触れていません。インタビューフォームの「洗顔で除去してから塗る」も、あくまで重ね塗りを防ぐための予防策です1)
  • もうひとつ知っておきたいのが機序です。「BPOが薬を酸化して変色させる」と説明されることがありますが、PMDAの再審査報告書は「本剤に酸を添加することで白色から黄色に変色することが確認された」と記載しています。再現因子は酸化ではなくであり、実際にBPOを含まないアダパレン単剤でも同じ黄変が再現されています。警戒すべき相手はBPO製剤だけではありません2) 4)

3. 着色に関する報告

・ゼビアックス 電子添文・インタビューフォーム (2025). 電子添文14.1.2に「本剤は過酸化ベンゾイル製剤と重ねて塗布すると黄色に変色することがあるため、皮膚や衣服等への着色に注意すること」と記載されています。これは「適用上の注意」の項であり、ゼビアックスに併用禁忌・併用注意は設定されていません。薬理学的な相互作用ではなく、製剤同士の変色として扱われている点がポイントです。インタビューフォームの解説は、集積した副作用報告を「過酸化ベンゾイル製剤との重ね塗りによる本剤の変色によるものと考えられた」と説明しています。ただしこれは企業による評価であり、角層への吸着や洗浄後の残留は検討されていません1)

・マルホ 電子添文改訂のお知らせ (2024). 承認から2023年7月31日までに、塗布部位が黄色に変色したという副作用報告が4例集積し、いずれも過酸化ベンゾイル製剤(単剤またはアダパレン配合剤)が併用されていました。社内試験でも本剤とBPO製剤を混合すると黄色に変色することが確認されています3)

・PMDA 再審査報告書 (2025). 機序について。「適用部位変色:過酸化ベンゾイルを含む薬剤との併用により黄色変色した旨の報告が複数あり、社内試験の結果、本剤に酸を添加することで白色から黄色に変色することが確認された」として、これを受けて適用上の注意に追記したと述べられています。再現因子は「酸」であり、過酸化ベンゾイルによる酸化そのものではありません。あわせて、再審査期間中に収集された予測できない副作用として、「適用部位変色」26例27件(いずれも非重篤)が集計されています。ただしこの用語は適用部位の変色全般を指し、黄色変色やBPO併用例に限りません。報告書自身も「過酸化ベンゾイルを含む薬剤との併用により黄色変色した旨の報告が複数あり」と述べるにとどまり、内訳は公表されていません。変色は電子添文11.2の副作用欄には収載されておらず(2024年1月改訂で11.2に加わったのは接触皮膚炎のみ)、発現頻度はわかりません1) 4)

・マルホ 配合変化試験 (2019). ゼビアックスローション(pH 10.64)とエピデュオゲル(pH 3.53)を1:1で混合すると、開始時pH 8.97で微黄色、12時間後pH 8.32で黄褐色、24時間後pH 7.85で黄褐色へと変化しました。強アルカリ性の本剤が酸性側の製剤と混ざり、pHが低下して中性寄りへ動くことが原因と説明されています。重要なのは対照実験で、BPOを含まないディフェリンゲル(pH 4.86)でも同じ黄変が生じています。つまりBPOによる酸化は黄変の必須条件ではありません。ただし酸化の関与を全面的に否定するデータではなく、企業の記載も「と考えられた」という推定表現で、黄色の発色物質は同定されていません2)

・マルホ 配合変化試験 — 含量低下 (2019). 着色以外にも注意が必要な所見があります。ゼビアックス油性クリームとエピデュオゲルの混合ではオゼノキサシンの残存率が2週後83.4%に低下し、ベピオゲルとの試験では24時間後に過酸化ベンゾイルの含量低下が確認されています(この試験でのオゼノキサシンは2週後97.7%)。ただしこれらは一定比率で混合・保存した試験であり、皮膚上で短時間重なった場合の力価低下や治療効果への影響は不明です。それでも重ね塗りを避ける物理化学的な根拠のひとつにはなります2)

・ACZONE (dapsone) 米国添付文書 / Dubina, 2009. 海外ではダプソンゲルとBPOの併用で同様の変色が知られています。米国添付文書には、95例中7例で皮膚と顔の毛に一時的な黄色〜橙色の変色が生じ、4〜57日で消退したと記載があります。ただしダプソンとオゼノキサシンでは薬剤も反応機序も異なり、この期間をゼビアックスに当てはめることはできません。また洗浄を試みた結果ではないため、「洗っても落ちない」という根拠にもなりません。時間経過で消退する変色がありうる、という参考例として読みます6)

・飯島ら, 2017 / 2019. 過酸化ベンゾイルによる接触皮膚炎の国内報告です。アレルギー性接触皮膚炎20例の検討では、発症までの期間が1〜2日が3例、9〜28日が9例、30日超が8例(最長24か月)と幅広く、既に感作されていた例では1〜2日で発症していました。そのため発症日数だけで刺激性とアレルギー性を鑑別することはできません5) 7)

・日本医療機能評価機構 共有すべき事例 (2025). 10歳代女性へゼビアックスローションとベピオゲルの同一部位重ね塗りが指示され、薬剤師の疑義照会により朝ゼビアックス・夜ベピオへ変更された事例が公開されています。8)

4. 関連した質問

  • Q: 皮膚に黄色く着いてしまいました。まず何をしますか?
    A: その部位への追加の重ね塗りをやめ、一度やさしく洗い流します。 低刺激の洗顔料をよく泡立て、ぬるま湯で洗います。皮膚上にあるのは変色した製剤と考えられているため、まず試したいことです。ただし完全に落ちると確認されたデータはありません。熱い湯(40℃以上)やゴシゴシ洗いは避けます。なおこの洗顔方法はマルホの患者向け資材が示すニキビ患者一般のスキンケア指導です1

 

  • Q: 洗っても落ちない場合はどうしますか?
    A: 繰り返し洗ったりこすったりせず、炎症症状の有無を確認します。 赤み・腫れ・かゆみ・痛み・水疱がなければ、使い方を処方医や薬局で整理したうえで経過をみます。炎症症状があれば接触皮膚炎を疑い、原因候補薬を中止して受診をすすめます。炎症が治まった後に残る褐色調は炎症後色素沈着で、数週から数か月かけて退色すると考えられます5) 7)

 

  • Q: 過酸化ベンゾイル製剤を避ければ着色しませんか?
    A: それだけでは不十分です。 PMDAの再審査報告書は、社内試験で本剤に酸を添加すると白色から黄色に変色したと記載しています。実際、配合変化試験ではBPOを含まないアダパレン単剤(ディフェリンゲル)でも同じ黄変が生じました。酸性側の外用薬で起こりうると考えて、他剤との重ね塗り自体を避けるのが安全です。マルホの患者向け資材も「ゼビアックス以外のニキビのお薬と重ね塗りをすると」と案内しています。ただし「すべてのニキビ薬で黄変する」と一般化はできません2)

 

  • Q: 衣服に付いた場合はどうですか?
    A:  黄色い製剤の付着であれば、こすって広げず、洗濯表示に従って早めに水洗い・通常洗濯をします(ただし除去試験はありません)。一方、布地が白っぽく色抜けしている場合は過酸化ベンゾイルの漂白作用によるもので、元には戻りにくいと考えられます。添付文書は「髪、衣料等に付着しないように注意すること」(デュアックは「毛髪、布織物、家具及び絨毯」)としており、乾く前に衣類やタオルへ触れさせないことです4)

5. まとめ

  • 着色が洗浄で落ちるかを直接示した公表資料はない
  • 企業は皮膚の色素変化ではなく製剤自体の変色と説明。低刺激洗顔料+ぬるま湯で一度やさしく洗うのがまず試したい対応だが、完全に落ちる保証はない。落ちなくてもこすらない
  • 再現因子は「酸」。PMDA再審査報告書に「本剤に酸を添加することで白色から黄色に変色」と記載があり、pHの低下が黄変を招く(pH約10.5の本剤が酸性側の製剤と混ざり中性寄りへ動く)。発色物質は未同定
  • BPO非含有のアダパレン単剤でも黄変するため、他剤との重ね塗り全般を避ける
  • アルコール・オキシドール・漂白剤は使わない。落ちない色は炎症症状の有無で鑑別する(発症日数だけでは刺激性とアレルギー性を区別できない)
  • 配合試験では含量低下も確認。予防は朝夜に分け、洗顔で前剤を除去してから塗る

※最終的な判断は各施設の医療担当者の裁量になります。

6. 参考文献

  1. ゼビアックスローション2%・ゼビアックス油性クリーム2% 電子添付文書(2025年5月改訂 第3版)・インタビューフォーム(第10版). マルホ
  2. マルホ株式会社 CMC研究部 分析研究グループ 社内資料. ゼビアックスローション2%とエピデュオゲルの配合変化に関する検討(CH16219)/ ゼビアックスローション2%とディフェリンゲル0.1%の配合変化に関する検討(CG16079). 2019年7月4日/マルホ 社内資料. 各種薬剤との配合変化試験(ゼビアックス油性クリーム2%). 2021年2月作成 https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/zebiax/haigou_zebiax1.pdf https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/zebiax/haigou_zebiax3.pdf
  3. マルホ 電子添文改訂のお知らせ(2024年1月〜2月、自主改訂). マルホ ※同お知らせに、本改訂内容が医薬品安全対策情報(DSU)No.324に掲載される旨が記載されている https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/products/zebiax/news/2401zebiax_os.pdf
  4. PMDA ゼビアックスローション2%・同油性クリーム2% 再審査報告書(2025年2月17日付、2025年3月19日公表)/ ベピオゲル2.5%・ベピオローション2.5%・ベピオウォッシュゲル5%・エピデュオゲル・デュアック配合外用ゲル 電子添付文書
  5. 飯島茂子, 角田孝彦. 過酸化ベンゾイルによる接触皮膚炎の7例. 日本皮膚科学会雑誌. 2017;127(1):23-30
  6. ACZONE (dapsone) Gel 5% US Prescribing Information(DailyMed)/ Dubina MI, Fleischer AB Jr. Interaction of Topical Sulfacetamide and Topical Dapsone With Benzoyl Peroxide. Arch Dermatol. 2009;145(9):1027-1029. PMID: 19770443 https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/712184
  7. Iijima S, Tsunoda T. Twenty cases of allergic contact dermatitis due to benzoyl peroxide in acne patients in Japan. J Cutan Immunol Allergy. 2019;2(4):108-112. doi:10.1002/cia2.12069
  8. 日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 共有すべき事例 2025年No.5 事例2(配合変化) https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/sharingcase/sharingcase_2025_05_02G.pdf
  9. マルホ 患者向け情報「ゼビアックスローション、ゼビアックス油性クリームをニキビに使用される方へ」
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