レボドパ内服困難時のドパミンアゴニスト貼付剤への切り替えは?

【質問】レボドパ・カルビドパ水和物配合剤(ネオドパストンなど)を内服中の患者が内服困難な場合に、レボドパ注(ドパストンなど)に置き換える目安として、L-ドパ/DCI配合剤100mgにつきL-ドパ50-100mg程度を静脈内に1-2時間かけて点滴投与することがパーキンソン病診療ガイドライン2018に記載されています。 自宅へ退院などで点滴を継続できないケースがありまして、他のドパミンアゴニスト(ニュープロパッチやハルロピテープ)の貼付剤へ切り替える際の参考値や換算比、切り替える具体的な方法などをご教授いただけないでしょうか。

1. 結論

レボドパからドパミンアゴニスト貼付剤への「確立された換算比」は、添付文書や国内外のガイドラインに明記されておらず、直接比較した臨床試験も存在しません⁴⁾。実臨床ではLED換算係数¹⁾(ロチゴチン貼付剤1mg≒レボドパ30mg、経口ロピニロール1mg≒レボドパ20mg)を用いた推定値が参照されることがあります。この理論値から算出すると、ニュープロパッチ4.5mg≒レボドパ約135mg(臨床的には100〜150mg程度)となりますが、これらはあくまで理論上の目安であり、実際の臨床効果には個人差が大きいとされています。貼付剤同士の切り替えについては、ハルロピテープ適正使用ガイドにニュープロパッチからの換算表が記載されており、ニュープロパッチ4.5mg≒ハルロピテープ8mgの対応関係が示されています⁶⁾。この貼付剤間換算はLED換算係数から導かれる数値とは異なる点に注意が必要です。

切り替え方法として「漸減漸増法」が提案されることがありますが、ガイドラインや添付文書に明確な切り替え手順は記載されておらず、専門医の経験的判断となるのが現状です。


2. 背景

パーキンソン病患者において、嚥下障害や周術期の絶飲食などにより経口薬の継続が困難となる状況は十分ありえます。抗パーキンソン病薬の急激な中断は、悪性症候群(Parkinsonism-hyperpyrexia syndrome)を誘発するリスクがあります。悪性症候群の致死率は1984年以前には約25%と報告されていましたが、早期認識と集中治療の進歩により1984年以降は約11.6%まで低下し²⁾、近年のレビューでは約10%程度³⁾と報告されています。重篤な合併症であり、経口投与が不可能な場合でも何らかの代替経路でドパミン補充を継続することが重要です。パーキンソン病診療ガイドライン2018では内服困難時のレボドパ静注が推奨されていますが⁴⁾、在宅療養への移行に際しては点滴継続が困難な場合があり、経皮吸収型ドパミンアゴニスト製剤への切り替えが選択肢として検討されます。


3. 報告

・日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン2018⁴⁾ 内服困難時の対応としてレボドパ静注製剤の使用を推奨。L-dopa/DCI配合剤100mgにつきL-dopa 50〜100mgを1〜2時間かけて点滴投与する換算が記載されています。同ガイドラインでは「内服薬から静注への切替時に正確な換算用量の明確な報告はない」と記載されており、ドパミンアゴニスト貼付剤への切り替え換算についても明確な記載がありません。

・Tomlinsonら(2010)/ システマティックレビュー¹⁾ 抗パーキンソン病薬のLED換算係数に関する国際的に広く引用される研究です。ロチゴチン貼付剤の換算係数は1mg≒レボドパ30mg、経口ロピニロールは1mg≒レボドパ20mgと報告されています。ただし、これらは異なる薬剤間の相対的力価を示す理論値であり、直接的な切り替え試験で検証されたものではありません。なお、本研究は主に欧米で実施された臨床試験データに基づいており、日本人を対象とした検証研究は報告されていません。(PMID: 20443055)

・Schnitzlerら(2010)/ 多施設観察研究⁵⁾ 経口ドパミンアゴニスト(ロピニロール)からロチゴチンパッチへのオーバーナイトスイッチングの安全性を検討しました。116例中、翌日一括切り替えでも離脱症状や重篤な有害事象の増加は認めず、忍容性は良好でした。ただし、本研究はアゴニスト間の切り替えであり、レボドパ単剤からの切り替えは対象に含まれていません。(PMID: 19931514)

ハルロピテープ添付文書  経口ロピニロール徐放錠からの切り替え換算表を記載。経口ロピニロール2mg≒ハルロピテープ8mg、8mg≒32mgの対応が示されています。AUC比較に基づき、経口製剤の約4倍のmg数で同等の曝露量となる設計。レボドパからの直接換算については記載ありません。


4. 関連した質問

Q: LED換算係数を用いた理論的換算はどのように計算するか?

A: ニュープロパッチ(ロチゴチン)の場合、LED係数×30を用いて4.5mg×30=レボドパ135mg相当となる。一方、ハルロピテープ適正使用ガイドに記載された貼付剤間換算表では、ニュープロパッチ4.5mg≒ハルロピテープ8mgとされており、段階的に9mg≒16mg、13.5mg≒24mg、18mg≒32mgと対応している⁶⁾。ハルロピテープ8mgを添付文書上の経口ロピニロール換算(テープ:経口=4:1)で計算すると経口ロピニロール2mg相当となり、これにLED係数×20を適用するとレボドパ40mg相当となる。このようにLED換算係数と貼付剤間換算は一致しない。LED換算係数は異なる薬剤クラス間の相対的力価を示す理論値であり、個々の製剤間の直接換算には必ずしも適用できない点に留意が必要である。

Q: ニュープロパッチとハルロピテープの選択基準は?

A: 両製剤とも貼付部位の皮膚障害(紅斑、そう痒感等)が各添付文書に記載されている⁶⁾⁷⁾。ただし、両製剤間で皮膚副作用の発現率を直接比較した臨床試験は報告されておらず、どちらが皮膚に優しいかを示すエビデンスは存在しない。薬理学的には、ロチゴチンはD1-D5受容体に広範に作用し、ロピニロールは主にD2/D3受容体に選択的に作用するとされるが、この受容体の違いが臨床効果や副作用に与える影響を検証した質の高い比較研究は限られている。患者の状態や忍容性に応じて専門医が判断する必要がある。

Q: 貼付剤だけでレボドパを完全に置き換えられるか?

A: 貼付剤単独でレボドパを完全に置換できるかどうかを検証した直接的な臨床試験は存在しない。ドパミンアゴニストはレボドパと作用機序が異なり、専門家の経験的見解として、特に進行期や運動合併症を有する患者では貼付剤への完全切り替えが困難な場合があると考えられている

Q: 高齢者での注意点は?

A: ニュープロパッチ添付文書では「高齢者では生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすいので慎重に投与すること」と記載されている⁷⁾。通常成人の開始用量は4.5mg/日とされているが、高齢者や認知機能低下例における具体的な減量基準は添付文書に明示されていない。幻覚、傾眠、起立性低血圧などの副作用に注意しながら、個々の患者に応じて慎重に用量調節を行う。


5. まとめ

・レボドパからドパミンアゴニスト貼付剤への「確立された換算比」は国内外のガイドラインに存在しない⁴⁾
・LED換算係数¹⁾を用いた理論的目安:ニュープロパッチ4.5mg≒レボドパ100〜150mg、ハルロピテープ20mg≒レボドパ100mg程度(ただし直接比較試験で検証されたものではない)

・貼付剤間換算:ハルロピテープ適正使用ガイドではニュープロパッチ4.5mg≒ハルロピテープ8mgの対応が記載されている⁶⁾(LED換算係数から導かれる数値とは異なることに注意)
・切り替えは漸減漸増法で段階的に行い、急激な切り替えや抗パーキンソン病薬の中断は厳禁
・ニュープロパッチとハルロピテープの皮膚副作用について、両製剤を直接比較した臨床試験は報告されていない⁶⁾⁷⁾
・高齢者への具体的な減量基準は添付文書に明示されておらず、個々の患者に応じた慎重な用量調節が必要⁷⁾


6. 引用文献

1)Tomlinson CL, et al. Systematic review of levodopa dose equivalency reporting in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2010;25(15):2649-2653. PMID: 20443055

2)Shalev A, et al. A systematic review of mortality in neuroleptic malignant syndrome. Clin Neuropharmacol. 1989;12(4):313-325. PMID: 2680078

3)Strawn JR, et al. Neuroleptic malignant syndrome. Am J Psychiatry. 2007;164(6):870-876. PMID: 17541044

4)日本神経学会. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院; 2018. p.150-158.

5)Schnitzler A, et al. Overnight switching from ropinirole to transdermal rotigotine patch in patients with Parkinson disease. Clin Neuropharmacol. 2010;33(4):167-170. PMID: 19931514

6)ハルロピテープ添付文書(第1版). 協和キリン/久光製薬; 2019年9月承認.

7)ニュープロパッチ添付文書(電子添文). 大塚製薬; 2024年改訂. 8)Parkinson’s UK. Parkinson’s and ‘nil by mouth’ – medication management guidelines. 2023.


7. 参考文献

・Antonini A, et al. Rotigotine transdermal patch in the management of Parkinson’s disease. Expert Rev Neurother. 2018;18(2):111-119. PMID: 29271274 ・協和キリン. ハルロピテープ適正使用ガイド. 2023年改訂版. ・協和キリン. ハルロピテープを使用されている方へ(患者指導箋). 2023年.

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