高気圧酸素治療では、貼付剤や軟膏は除去すべきか?

【質問】高気圧酸素治療についてご教示ください。 高気圧酸素治療を受ける際、貼付剤や軟膏などの塗り薬は剥がしたり拭き取ったりした方が良いのか、そのままでも治療を受けて可能なのか、その考え方はMRIと同じでしょうか。

【回答】高気圧酸素治療(HBOT)は、高い気圧環境で高濃度の酸素を吸入することにより、組織への酸素供給を増やし、創傷治癒の促進や炎症の改善を行う治療です。一酸化炭素中毒やガス壊疽のように緊急性の高い疾患だけでなく、難治性潰瘍や術後治癒促進など幅広い目的で使用されています。ただし、酸素濃度が高い環境下では火災や爆発のリスクが高まるため、酸素チャンバー内に持ち込む物質の可燃性や引火性の管理を厳格に行う必要があります。

治療中に使われる貼付剤や軟膏などの塗り薬については、油脂系や石油系基剤、アルコールを含む製品に注意が必要になります。油脂やアルコールを多く含む塗り薬は、通常よりも燃えやすくなる可能性があるため、治療前には貼付剤や軟膏の成分をチェックし、必要に応じて拭き取りや貼付を外すことが必要な場合があります。

しかし、すべての軟膏や貼付剤が危険物に該当するわけではありません。文献によると(Journal of Japanese Associaiton for Clinical Hyperbaric Oxygen and Diving, 2018, 15(2), 111.) 軟膏や貼付剤を有効成分や添加物で分類した結果、消防法上の危険物に該当しないものも一部存在することが報告されています。たとえばアズノール軟膏やペンレステープなどは、添加物の組成上、可燃性・引火性のリスクが低い薬剤もあります。

ニトログリセリンパッチや、医療用麻薬のフェンタニルパッチなどは、血中濃度の維持が非常に重要となる場合が多いため、効果が低下してしまうリスクがあります。このような貼付剤は、高気圧酸素治療が安全に実施できるように配慮しつつ、火災リスクと治療上の必要性のバランスを考慮して用いられます。

MRIは磁場が問題となり、磁性体や金属を含む物質の持ち込みや装着が制限されます。一方、高気圧酸素治療は可燃性物質の有無が重要であり、油脂系・石油系成分やアルコール類などが特に注意が必要です。両者とも「何かを外す」点は同じですが、MRIと同じ基準ではありません。

高気圧酸素治療を受ける際に貼付剤や軟膏を剥がしたり拭き取ったりする必要があるかどうかは、使用している医薬品の成分や添加物、そして患者の治療上の重要性を総合的に評価して決定されると考えられます。

 

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