【質問】アレルギー性鼻炎でナゾネックスの点鼻を定期継続している方がいるのですが、鼻に色がついてきたのか抗生剤が処方されていました。ナゾネックスはアレルギー性鼻炎にしか適応がなく、添付文書には「有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身性の真菌症の患者には禁忌」とあります。この場合、ナゾネックスは鼻汁が透明になるまでは中止すべきなのでしょうか?それとも点鼻は継続のまま、追加処方分も使用して問題ないのでしょうか?
【A】ナゾネックス点鼻液は「鼻汁が透明になるまで中止すること」は不要と考えられます。
ナゾネックス点鼻液のインタビューフォームに「有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身性の真菌症の患者」に対して禁忌に設定した理由が、記載されています。
副腎皮質ステロイド剤は一般的に日和見感染などの感染症を引き起こす可能性がある。点鼻液であり全身投与の副腎皮質ステロイドに比べて全身吸収性は極めて低いものの、有効な抗菌剤の存在しない感染症や全身性の真菌症を有する患者では、症状が増悪した場合に致命的な転帰をたどるおそれがある。(ナゾネックス点鼻液 インタビューフォーム 一部改変)
つまり、ナゾネックス点鼻液の成分はステロイドであるため、ステロイドの一般的な注意事項に基づいて、「有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身性の真菌症の患者」に禁忌と設定されたと考えられます。
なお、経口ステロイド剤の添付文書には「有効な抗菌剤の存在しない感染症や全身性の真菌症」に対しては「原則禁忌」として記載されています (2024年3月末までに、全ての添付文書を新記載要領に基づき作成・改訂されるため、「原則禁忌」は削除される) 。
ナゾネックス点鼻液は全身の吸収性が極めて低いため、易感染のリスクは低いと考えられますが、「有効な抗菌剤の存在しない感染症や全身性の真菌症」などの重症の感染症のある患者には注意が必要です。
鼻汁が着色している患者は、細菌感染の可能性が高いと考えられますが、重症である可能性でなければ、禁忌には該当しません。
急性副鼻腔炎 治療
抗菌薬に併用して充血除去剤を用いる。専門家によっては局所のステロイド剤も併用。
(レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版)
→副鼻腔炎に対して、粘膜の炎症を抑えるために、ステロイド点鼻薬を使用することもあると、書籍に記載されています。
以上より、本質問の症例において、「鼻汁が透明になるまで中止すること」は不要と考えられます。
禁忌(次の患者には投与しないこと)
有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身性の真菌症の患者[症状を増悪させるおそれがある。
理由
副腎皮質ステロイド剤は一般的に強力な抗炎症作用、免疫抑制作用により生体の感染防御機能を低下させ、日和見感染などの感染症を引き起こす可能性がある。本剤は点鼻液であり全身投与の副腎皮質ステロイドに比べて全身吸収性は極めて低いものの、有効な抗菌剤の存在しない感染症や全身性の真菌症を有する患者では、症状が増悪した場合に致命的な転帰をたどるおそれがあることから、このような患者には本剤を投与しないこと。
(ナゾネックス点鼻液 インタビューフォーム)
プレドニン錠、リンデロン錠、コートリル錠、添付文書
原則禁忌
1. 有効な抗菌剤の存在しない感染症,全身の真菌症の患者[免疫機能抑制作用により,症状が増悪することがある。]
2. 消化性潰瘍の患者[肉芽組織増殖抑制作用により,潰瘍治癒(組織修復)が障害されることがある。]
3. 精神病の患者[大脳辺縁系の神経伝達物質に影響を与え,症状が増悪することがある。]
4. 結核性疾患の患者[免疫機能抑制作用により,症状が増悪することがある。]
5. 単純疱疹性角膜炎の患者[免疫機能抑制作用により,症状が増悪することがある。]
6. 後嚢白内障の患者[症状が増悪することがある。]
7. 緑内障の患者[眼圧の亢進により,緑内障が増悪することがある。]
8. 高血圧症の患者[電解質代謝作用により,高血圧症が増悪することがある。]
9. 電解質異常のある患者[電解質代謝作用により,電解質異常が増悪することがある。]
10. 血栓症の患者[血液凝固促進作用により,症状が増悪することがある。]
11. 最近行った内臓の手術創のある患者[創傷治癒(組織修復)が障害されることがある。]
12. 急性心筋梗塞を起こした患者[心破裂を起こしたとの報告がある。]