【Q】湿布は1日何枚まで貼付可能か?

【質問】何種類もの湿布を受け取っている患者さんもいますが、1日に何枚まで貼ってもよいのか検討するためのツールや参考にするべきデータはありますか?
腕、肩、腰、膝とほぼ全身に使用されるケースも病状によってはあるかと思うのですが、こういった場合に注意すべきことほあるのでしょうか?

【A】湿布剤は添付文書における使用回数や枚数に準じて使用する必要があります。具体的な例としてロコアテープが挙げられます。「ロコアテープ 2枚貼付」が同成分の経口剤とAUCが同等であったため、添付文書においても、使用枚数は2枚/日までと明記されています。

ただし、これらの記載がない湿布剤に関しては、インタビューフォームなどで貼付剤と経口剤のバイオアベイラビリティ (AUCなど) を確認し、貼付枚数の目安にすることができます。具体的な例としてモーラステープが挙げられます。モーラステープはインタビューフォームにおいて経口剤の薬物動態の比較が記載されています。「モーラステープ20mg 8枚貼付」は、「ケトプロフェン徐放性カプセル(国内未発売)」を経口投与したと時とAUCがほぼ同等となってしまいます。そのため、「モーラステープ20mg 8枚貼付」以上は注意が必要です。

以下に詳細を記載します。

健康成人男性を対象とした臨床薬理試験〔高用量安全性試験(SFPP-01-CP01)〕において、本剤2枚(エスフルルビプロフェン80mg)反復貼付7日目の全身曝露量(AUC0-23h:47000ng・h/mL)は、フルルビプロフェン経口剤(40mg、1日3回)の定常状態の全身曝露量〔(AUC0-24h) ss:48000ng・h/mL〕と同程度であったことから、用法・用量は「同時に2枚を超えて貼付しないこと」とし、用法・用量に関連する使用上の注意において、1日貼付枚数の制限が必要となる根拠を記載し、重ねて注意喚起することとした。また、本剤は全身曝露が高く、既承認の貼付剤と同様の方法でNSAIDs経口剤と併用されると消炎鎮痛成分の過剰投与につながる可能性がある。これらにかかる懸念は用法・用量に関連した一連のものであることから、他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用の注意についても用法・用量に関連する使用上の注意に記載し、注意喚起することとした。 (ロコアテープ インタビューフォーム)

→「ロコアテープ 2枚貼付」は同成分の経口剤(40mg、1日3回)とAUCが同等であったため、2枚までの制限となっています。

 

健康成人男子6名の背部へモーラステープ20mg(ケトプロフェン:20mg/1枚) 24時間単回貼付におけるAUC0~∞、Tmax等は次の通りである。
・1枚 Cmax : 135.85 ± 18.02ng/mL 、Tmax  : 12.67 ± 1.61hr 、AUC0~∞ : 2447.83 ± 198.67ng・hr/mL
・8枚 Cmax : 919.04 ± 60.36ng/mL 、Tmax : 13.33 ± 2.23hr 、AUC0~∞ : 18209.98 ± 962.52ng・hr/mL
(モーラステープ インタビューフォーム )

ケトプロフェン速放性および徐放性カプセル剤を単回および反復経口投与したときの薬物動態パラメータは次の通りである。(※ Mean ± S.E.)

速放性カプセル剤
100mg単回 Cmax : 10100 ± 1100ng/mL、Tmax : 1.22 ± 0.28hr、AUC : 21910 ± 1570ng・hr/mL
50mg反復 Cmax : 5620 ± 510ng/mL、Tmax : 1.16 ± 0.25hr、AUC : 11550 ± 560ng・hr/mL

承認された用法・用量は「1回50mg、1日3回」である。

徐放性カプセル剤
・150mg単回 Cmax : 2383 ± 294ng/mL、Tmax : 4.8 ± 0.4hr、AUC : 25170 ± 2120ng・hr/mL
・150mg反復 Cmax 1713 ± 195ng/mL、Tmax : 5.6 ± 0.6hr、AUC : 20630 ± 2630ng・hr/mL
(モーラステープ インタビューフォーム )

→健康成人での試験結果から、「モーラステープ20mg 8枚貼付」すると、「ケトプロフェン徐放性カプセル(国内未発売)」を経口投与(反復)した時とAUCがほぼ同等になってしまいます。そのため、「モーラステープ20mg 8枚貼付」もしくは、「モーラステープL40mg」を貼付する際には注意が必要と考えられます。

ただし、「ケトプロフェン徐放性カプセル」と比較して、「モーラステープ20mg 8枚貼付」のTmaxは2倍遅く、Cmaxは半分となっており、両者の薬物動態、血中濃度推移は同じではないことも考慮する必要があります。

腕、肩、腰、膝とほぼ全身に使用されるケースであれば、湿布を8枚以上貼付するケースがあり、消化性潰瘍などの副作用に注意が必要と考えられます。

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