【Q】妊婦・授乳婦に投与禁忌または、疑義照会の対象となる漢方薬は?

【質問】妊婦・授乳婦に投与禁忌または、疑義照会の対象となる漢方薬は?様々なホームページで禁忌の生薬、比較的安全に使用可能な生薬等について紹介されているが、参考文献等の記載がないことが多い。まとまったリストがあれば、多くの薬剤師や患者さんが救われると思います。

【A】漢方薬は欧米においては使用されることは少なく、妊婦・授乳婦におけるデータはほとんどありません。具体的には

・Medications and Mother’sMilk Seventeenth Edition
・Drug in pregnancy and Lactation
・Drugs and Lactation Database (Lact Med)

など、一般的に「妊婦・授乳婦に対する投与」を検討する際に参考とする情報源には記載されていません。

授乳婦に関しては「禁忌とされる薬」以外の薬は、基本的には服薬は可能とされています。漢方の服薬も同様の考え方でいいかと思います。
一方で、妊婦に関しては、漢方薬の必要性の有無を考慮することが重要であり、必ずしも漢方薬でなければいけないケースは多くはないと思われます。例えば、便秘の妊婦患者であれば、わざわざ情報が少ない大黄甘草湯や大建中湯を使用するのではなく、妊婦に対する情報が充実している酸化マグネシウムなどを使用すると考えられます。つまり、妊婦に対する情報が少ない漢方薬を使用するのではなく、情報が多い西洋薬を検討する必要があるということです。

これらを踏まえた上で、添付文書上で「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい」と記載されている生薬が含有された漢方薬に注意しながら服薬の検討をすることはいかがでしょうか。これらの生薬は禁忌ではないため、必ずしも疑義照会が必要ではないと考えられます。

  • ダイオウ‥子宮収縮作用、骨盤内蔵器の充血作用により流早産の危険性がある
  • ボタンピ‥流早産の危険性がある
  • ブシ‥副作用が現れやすくなる
  • トウニン‥流早産の危険性がある
  • ゴシツ‥流早産の危険性がある
  • 硫酸ナトリウム・無水ボウショウ (子宮収縮作用)を含有する製剤
  • 当帰芍薬散は適応症となっているが、他のデータがないためわからない。

 

ダイオウ
・三黄瀉心湯
・乙字湯
・大承気湯
・大柴胡湯
・大黄牡丹皮湯
・大黄甘草湯
・桂枝加芍薬大黄湯
・桃核承気湯
・治打撲一方
・治頭瘡一方
・潤腸湯
・茵ちん蒿湯
・調胃承気湯
・通導散
・防風通聖散
・麻子仁丸

ボタンピ
・八味地黄丸
・六味丸
・加味逍遙散
・大黄牡丹皮湯
・桂枝茯苓丸
・ヨクイニン 桂枝茯苓丸
・温経湯

ブシ
・二朮湯
・八味地黄丸
・大防風湯
・女神散
・川きゅう茶調散
・柴胡桂枝湯
・桂枝加朮附湯
・滋陰至宝湯
・真武湯
・竹茹温胆湯
・香蘇散

トウニン
・大黄牡丹皮湯
・桂枝茯苓丸
・桂枝茯苓丸加苡仁
・桃核承気湯
・潤腸湯
・疎経活血湯
・ゴシツ
・大防風湯
・牛車腎気丸
・疎経活血湯

(参考 : 実践 妊娠と薬 第2版 薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳)

会員登録していただくとできること
記事を全文閲覧できます。 記事を全文閲覧できます。
記事の全文が検索できます 記事の全文が検索できます。
週1回メルマガが届きます 週1回メルマガが届きます
質問投稿することができます 質問投稿することができます

関連記事

PL顆粒は食後?食前?どちらがいいか?

【質問】新型コロナや風邪症状で PL顆粒(ピーエイ配合錠) 1日3回 毎食後 漢方(症状に合わせて麦門冬湯など) 1日3回 毎食前 という処方がみられると思います。漢方薬は空腹時が効果的ということで食前...

【Q】注腸・坐剤として使用される漢方薬は?

【質問】小児における「五苓散注腸」という手法を拝見しました。そこで気になったのですが、五苓散以外の漢方薬や内服薬についても、経口投与困難な時に注腸されるケースはあるのでしょうか? 【A】漢方の注腸に...

【Q】漢方薬で注意すべき食物アレルギーは?

【A】特定原材料や特定原材料に準ずるものに指定されている食物が含有された漢方薬は特に注意が必要です。 具体例を挙げると、山芋アレルギーは山薬が含有されている「八味地黄丸」「牛車腎気丸」「六味丸」、小...

【Q】プロトピック軟膏は妊婦に使用可能か?

【質問】プロトピック軟膏は妊婦や授乳婦には有益性投与、ハンドブックにも情報がなかったのですが、内服ではなく外用でも血中への移行が問題になる程度あるのでしょうか?実際、使用されるケースはありますか? ...

新着記事

シングリックス接種間隔は1か月でもいい?2か月に設定されている理由は?

【質問】 シングリックス筋注用の投与間隔について調べています。添付文書では、通常の方は初回と2回目の接種間隔が2か月、「帯状疱疹にかかりやすい18歳以上の方」の場合は1か月まで短縮できるとなっています。...

ループ利尿薬の併用目的・用量設定・降圧効果は?

【質問】 ループ利尿薬の使い分けについて。フロセミド+アゾセミド/フロセミド+トラセミド、時に3剤の併用を見かけます。どのような目的で併用しているのでしょうか?用量設定の目安は?また、降圧効果の比較...

2025年9月 承認の新医薬品22品目まとめ

2025年9月19日新医薬品として22品目承認   新医薬品 ネフィー点鼻液1mg / 点鼻液2mg ・成分名:アドレナリン ・効果効能:アナフィラキシー反応に対する補助治療 (既往がある人、または発現リスクが高い人に...

新着記事をもっと見る

医薬品供給状況

【供給停止】デノシン点滴静注用500mg、他1品目【限定出荷】ラリキシン錠250mg、他2品目【限定出荷解除】マーズレン配合錠0.5ES

2025年10月17日 供給状況の変更情報 【供給状況の変更】 供給停止に移行:2品目 限定出荷に移行:3品目 限定出荷解除に移行:1品目 【その他情報(理由・見込み)の更新】 限定出荷中の品目:1品目 =============...

過去の供給情報を見る

週間ランキング

ランキングをもっと見る