【Q】抗菌薬の投与量、1日量が同じであれば1回量と投与間隔を変更することは可能か

Q1. 同じ1日量で、1日4回6時間ごとを1日2回12時間ごとに投与方法を変更することは薬物動態的に可能か。
Q2. 投与方法を変更した場合の副作用リスクはどうなるか。

 

【A】ゾシン(タゾバクタム/ピペラシリン)の添付文書より、CCr≦20のとき、PIPC半減期t1/2 3h

CCr≦20における推奨量の例として、

① 2.25g q6h(サンフォードガイド)
② 4.5g q12h(フランス添付文書;ゾシンのインタビューフォームより)

以上、2つの投与方法について、 以下の式を用いて、それぞれを比較する。

* 定常状態平均血中濃度:Css,ave=Co×1/((0.693/t1/2)×τ)・・・(A)
* 蓄積率:R=1/(1-(exp(-0.693/t1/2)×τ)
* 定常状態最高血中濃度(ピーク値):Css,max=Co×R
* 定常状態最低血中濃度(トラフ値):Css,min=Css,max×(exp(-0.693/t1/2)×τ)
※Co=単回投与時の最高血中濃度、τ=投与間隔(h)

TAZ/PIPC 2.25g単回投与時の最高血中濃度Coをαとすると、4.5gでは2αとなることから、①,②の投与方法における定常状態平均血中濃度Css,aveは、式(A)よりどちらも同じになる。

したがって、【 2.25g q6h→ 4.5g q12h 】のように、1回量と投与間隔(h)が同じ倍率での変更であれば、定常状態平均血中濃度Css,aveは同一となることから、同じ1日量で投与方法を変更することは薬物動態的に可能と言えるが、βラクタム系抗菌薬のように時間依存型薬剤の場合は同じ1日量でも分割投与した方が望ましく、ニューキノロン系抗菌薬のように濃度依存型薬剤の場合は投与回数は減らし、1回量を増やした方が望ましい。

一方で、上記①,②の投与方法におけるピーク値、トラフ値はそれぞれ異なっており、

① Css,max=1.33α、Css,min=0.33α
② Css,max=1.06α、Css,min=0.13α

以上より、 ピーク値については4.5g q12hが2.25g q6hの1.3倍、トラフ値については2.25g q6hが4.5g q12hの2.5倍となる。

副作用発現がピーク値、トラフ値(もしくはその両方)のどちらが高い場合に起こりやすいかで判断が異なるが、1回量を減らし、投与回数を増やすほどトラフ値は高くなり、1回量を増やし、投与回数を減らすほどピーク値は高くなるため、副作用発現のリスクの考慮は別に行う必要がある。

A1. 同じ1日量で1回量と投与間隔を同一倍率で変更することは定常状態平均血中濃度の観点からは可能と言えるが、時間依存型薬剤、濃度依存型薬剤の特性、および患者の状況に応じて判断が分かれる。

A2. 同一の定常状態平均血中濃度が得られる投与方法であっても、1回量を減らし、投与回数を増やすほどトラフ値は高くなり、1回量を増やし、投与回数を減らすほどピーク値は高くなるため、副作用発現リスクの考慮は別に行う必要がある

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