【Q】中等度腎機能低下患者の重症感染症に対してレボフロキサシン500mg隔日投与は妥当か。

【質問】サンフォードガイドによると、20≦CCr<50の推奨量(維持量)は750mg q48hと記載されている。
日本で販売されている規格は500mg錠or 250mg錠であり、1回量750mgの投与は通常ではない。 一方で、ニューキノロン系は濃度依存型であり、最高血中濃度に依存して効果を示すため、1回量を高めることでより効果が期待できると考えられる。 中国の添付文書(第一三共 クラビット錠に関する資料より)によると、腎機能障害患者に対する推奨量は一般感染症と院内肺炎等の重症感染症で異なっており、一般感染症については日本国内添付文書と同一、重症感染症についてはサンフォードガイドと同一の推奨量となっている。 そこで、500mg q48hの用法の妥当性について、20≦CCr<50における国内添付文書、サンフォードガイドそれぞれの推奨量をもとに薬物動態的に比較する。

 

【A】クラビット錠添付文書より

20≦CCr<50のとき、半減期t1/2 15.88h
20≦CCr<50における推奨量の例として、
① 750mg q48h(サンフォードガイド)
② LD 500mg, 250mg q24h(添付文書)

また、その他の比較対象として
③ 500mg q24h
④ 500mg q48h

以上、4つの投与方法について、 以下の式を用いて、それぞれのトラフ値を比較する。

蓄積率:R=1/(1-(exp(-0.693/t1/2)×τ)
定常状態平均血中濃度:Css,ave=Co×1/((0.693/t1/2)×τ)
定常状態最高血中濃度(ピーク値):Css,max=Co×R
定常状態最低血中濃度(トラフ値):Css,min=Css,max×(exp(-0.693/t1/2)×τ)
※Co=単回投与時の最高血中濃度、τ=投与間隔(h)

蓄積率を計算すると、

①,④ R=1.14
②,③ R=1.54

LVFX 500mg単回投与時の最高血中濃度Coをαとすると、750mgでは1.5α、250mgでは0.5αとなることから、それぞれの定常状態におけるCss,ave、Css,max、Css,minは、

① 0.72α、1.7α、0.21α
② 0.48α、0.77α、0.27α
③ 0.95α、1.54α、0.54α
④ 0.48α、1.14α、0.14α

以上より、
定常状態平均血中濃度について、
750mg q48h vs 250mg q24h:1.5倍
500mg q48h vs 250mg q24h:1.0倍
500mg q24h vs 250mg q24h:2.0倍
500mg q24h vs 750mg q48h:1.3倍

 

ピーク値について、
750mg q48h vs 250mg q24h:2.2倍
500mg q48h vs 250mg q24h:1.5倍
500mg q24h vs 250mg q24h:2.0倍
500mg q24h vs 750mg q48h:0.91倍

 

トラフ値について、
750mg q48h vs 250mg q24h:0.78倍
500mg q48h vs 250mg q24h:0.52倍
500mg q24h vs 250mg q24h:2.0倍
500mg q24h vs 750mg q48h:2.6倍

以上から、500mg q48hの用法は、

1. 定常状態平均血中濃度については国内添付文書推奨量と同一。
2. ピーク値・トラフ値についてはサンフォードガイド推奨量での予想濃度を超えない。
3. 国内添付文書推奨量よりもピーク値は高く、トラフ値は低くなる。

したがって、中等度腎機能低下患者(20≦CCr<50)の重症感染症に対してレボフロキサシン500mg隔日投与は、薬物動態的に妥当と考えられる。

一方で、20≦CCr<50で減量せず、国内添付文書の常用量(500mg q24h)で投与した場合、

4. 定常状態平均血中濃度、ピーク値、トラフ値すべてにおいて添付文書推奨量での予想濃度の2倍となる
5. 定常状態平均血中濃度、トラフ値についてはサンフォードガイド推奨量での予想濃度を超え、ピーク値についてはやや低くなる。

以上のことから、CCr<50の場合は少なくとも減量が必要であることが予想できる。

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