【質問】沈降炭酸カルシウム (商品名 カルタン)は、何故、甲状腺機能低下の患者に投与禁忌なのですか
【A】甲状腺機能低下症の患者は、カルシトニンの分泌が抑制されるため、血中のカルシウム濃度が高くなってしまう場合があるためです。
カルシトニンとは?
血中カルシウム濃度が上昇すると分泌され、血中カルシウム濃度を低下させる作用があります。骨形成を促進させるホルモンです。
甲状腺機能低下症の患者は、カルシトニンの分泌が低下するため、高カルシウム血症のリスクが生じてしまいます。
この理由から、沈降炭酸カルシウム (商品名 カルタン)は、甲状腺機能低下の患者に投与禁忌となっていると考えられます。
一方で、「甲状腺機能亢進症」や「副甲状腺機能亢進症」の患者にもカルシウム上昇の可能性がありますが、「カルタン」には記載されていません。当時の日本薬局方「沈降炭酸カルシウム」の使用上の注意に準じて「甲状腺機能低下症」のみで設定されたようです。なお、制酸剤としての「沈降炭酸カルシウム」には「甲状腺機能低下症」と「副甲状腺機能亢進症」の両疾患に対して禁忌である旨が記載されています。
また、炭酸カルシウムは甲状腺機能低下症で使用されるレボチロキシン (商品名 : チラーヂン)と同時に服薬すると吸収が低下すると添付文書にかかれています。この相互作用は4時間空けて投与すれば相互作用を防止できます。(厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 甲状腺機能低下症)
禁忌 (次の患者には投与しないこと)
2. 2.1 甲状腺機能低下症の患者[カルシウムの利用が亢進し、症状を増悪するおそれがある。]4. 2.2 炭酸カルシウムに対し過敏症の既往歴のある患者
甲状腺機能低下症の患者ではカルシウムの利用が亢進し、症状を増悪させるおそれがあるので、日本薬局方「沈降炭酸カルシウム」の使用上の注意に準じて設定した。(カルタン錠 インタビューフォーム)