重度腎機能低下患者の感染性心内膜炎に対してダプトマイシン8-10mg/kg q48hは妥当か。

添付文書によると、感染性心内膜炎に対するCCr<30の推奨量は6mg/kg q48hと記載されている。一方でこの投与量は通常量(腎機能正常)が6mg/kg q24hの場合の推奨量とみなすこともできる。

MRSA感染症の治療ガイドラインによると、感染性心内膜炎に対しては8-10mg/kg q24hの高用量が推奨されており、ガイドライン上の推奨量を想定した場合、上記の減量方法で妥当かは明記されていない。

国外の投与方法(Epocratesの記載を参考)によると、「CrCl <30: give usual dose q48h」と記載されており、疾患による通常量に応じて減量することが示唆される。 そこで、8-10mg/kg q48hの用法の妥当性について、薬物動態的に比較する。

A) キュビシン(ダプトマイシン)添付文書より、 CCr 30-50;半減期t1/2 15h CCr<30;半減期t1/2 28h

① CCr 30-50;8-10mg/kg q24h
② CCr<30;8-10mg/kg q48h 以上、2つの投与方法について、 以下の式を用いて、それぞれの定常状態平均血中濃度、ピーク値、トラフ値を比較する。

蓄積率:R=1/(1-(exp(-0.693/t1/2)×τ)
定常状態平均血中濃度:Css,ave=Co×1/((0.693/t1/2)×τ)
定常状態最高血中濃度(ピーク値):Css,max=Co×R
定常状態最低血中濃度(トラフ値):Css,min=Css,max×(exp(-0.693/t1/2)×τ) ※Co=単回投与時の最高血中濃度、τ=投与間隔(h) 蓄積率を計算すると、

① R=1.49
② R=1.44 ダプトマイシン8-10mg/kg単回投与時の最高血中濃度をCoとすると、それぞれの定常状態におけるCss,ave、Css,max、Css,minは、
① 0.90Co、1.49Co、0.49Co ② 0.84Co、1.44Co、0.44Co 以上より、上記2つの投与方法で定常状態平均血中濃度、ピーク値、トラフ値すべてほとんど差がないことがわかる。

以上から、重度腎機能低下患者(CCr<30)における感染性心内膜炎に対する投与量として、8-10mg/kg q48hは薬物動態的に妥当と考えられる。

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