【質問】薬剤逆説反応について教えてください。
【回答 200文字要点】
「薬剤逆説反応」は薬剤が通常と逆の効果を示す現象で、診断が困難であることが特徴です。フランスのデータベース(FPVDB)によると、免疫調節薬と精神作用薬による逆説反応が報告されています。日本国内では、抗結核薬の使用による「薬剤逆説反応」が添付文書に記載されています。治療開始後、結核菌が減少し陰性化しても、胸部X線で異常が見られることがあり、通常は治療継続で改善します。
【A】「薬剤逆説反応」とは、薬剤が通常予想される反対の効果を示す現象です。そのため、非典型的な臨床症状を示すため診断が難しいことがあり、発生頻度は比較的まれです。
フランスのデータベース(French PharmacoVigilance DataBase (FPVDB) )によると逆説的反応は免疫調節薬と精神作用薬が報告されています。具体的にはベンゾジアゼピンによる不眠、ドネペジルによる認知機能低下やバレニクリンによる衝動的な喫煙依存症の再発などが報告されています。 (Eur J Clin Pharmacol 2020 Vol. 76 Issue 8 Pages 1169-1174)
- 中枢神経刺激薬 ‥眠気
- 抗うつ薬‥暴力的な傾向や自殺衝動
- 抗精神病薬‥興奮や幻覚、不眠、悪夢、精神症状の悪化
- 免疫調節剤‥皮膚関連の副作用
国内においては、薬剤逆説反応について添付文書に明記されたものは抗結核薬による治療のみです。
本剤を含む抗結核薬による治療で、薬剤逆説反応を認めることがある。治療開始後に、既存の結核の悪化又は結核症状の新規発現を認めた場合は、薬剤感受性試験等に基づき投与継続の可否を判断すること。(イスコチン原末,100mg 添付文書)
この場合の「薬剤逆説反応」は結核治療における特定の現象を指します。治療を開始して結核菌が喀痰中から減少し、陰性化したにもかかわらず、胸部X線には陰影の増大や新たな陰影、胸水の出現、リンパ節の腫脹などが見られることがあります。この現象は、初期悪化とも呼ばれます。
この反応は、大量の結核菌が急激に死滅することで引き起こされ、その菌体に対する局所的なアレルギー反応と考えられています。しかし、抽出された結核菌が感受性菌(抗結核薬に感応性のある菌)であり、患者が規則的に薬を服用している場合、化学療法を中止または変更する必要はありません。通常、結核治療を継続することで、3~6カ月後に症状が改善されることが認められます。
添付文書上、逆説反応について記載されている医薬品を下記に示します。
- アルミノニッパスカルシウム顆粒99%
- イスコチン原末、イスコチン100mg
- イスコチン注100mg
- エサンブトール錠125mg・250mg
- エブトール錠125mg錠・250mg錠
- クラビット錠250mg・500mg・細粒10%
- サイクロセリンカプセル250mg「明治」
- サチュロ錠100mg
- レボフロキサシン内用液250mg「トーワ」
- レボフロキサシン粒状錠250mg・500mg「モチダ」
- レボフロキサシン錠250mg・500mg 各メーカー
- レボフロキサシンOD錠250mg・500mg