膀胱留置カテーテル挿入中の過活動膀胱治療薬継続の意義は?

【質問】泌尿器科の薬を服用中の方が膀胱留置カテーテルを挿入することになった場合の内服を継続する意義についてご教示ください。 過活動膀胱の薬を内服中の方が入院後に尿カテ留置となりました。一時的で早々に抜去する予定であるならば継続していても気にならなかったのですが、なかなか抜去できず経過しているため持参薬からの継続ということで服薬を続けていましたが継続する意義はあるのか疑問になりました。例えば前立腺肥大の薬の場合はこのような場合でも継続するメリットがあることは何となく分かるのですが・・・。 このような場合の考え方についてご教示頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。

【回答】

まとめ

α1遮断薬はカテーテル抜去成功率を向上させるため、可能な限り継続が推奨されます。一方、抗コリン薬やβ3作動薬は症状緩和が主な目的であり、患者状態に応じて適切な調整が必要です。5α還元酵素阻害薬は前立腺肥大症患者では再尿閉予防の観点から継続が望ましいとされます。

詳細は下記のとおりです。


【α1遮断薬】
尿道カテーテル留置中でも、特に前立腺肥大症による尿閉患者においてはα1遮断薬の継続投与は有用と考えられます。急性尿閉後のカテーテル抜去後の自己排尿再開の成功率を向上させるという報告も多数あります。プラセボ群で約38%だったカテーテル抜去成功率が、α1遮断薬群では60%程度に上昇したとの報告があります。そのため、カテーテル抜去の可能性がある場合、α1遮断薬を継続することが推奨されると考えられます。ただし副作用として起立性低血圧に注意が必要です。

参考:
Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(6):CD006744
愛知県資料(https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/15.pdf)


【抗コリン薬】

抗コリン薬は排尿筋の収縮を抑えるため、カテーテル抜去後も膀胱収縮不全が続く可能性があります。特に高齢男性では尿閉のリスクが高く、抜去前には必要最小限の使用、あるいは一時休薬を検討する必要があります。一方で、抗コリン薬はカテーテル関連膀胱不快感(CRBD)を改善する可能性もあります。

抗コリン薬の副作用(口渇、便秘、認知機能低下など)は高齢者では特に問題となりやすく、症状がカテーテル留置中は表面化しにくいため、副作用リスクを考えると、不要な服薬を避けることが重要と考えられます。

参考:
J Urol. 2009;182(4):1442-1448.
Int Neurourol J. 2020;24(4):324-331


【β3作動薬について】
β3作動薬(ミラベグロン、ラベグロンなど)は抗コリン薬より、排尿筋への抑制作用が少なく、尿閉リスクも低いことから、抗コリン薬に比べ抜去後の自然排尿への悪影響は少ないとされています。ただし、排尿力の低下や残尿が増加するの可能性もあります。特に抜去直後の排尿状態を評価するため、必要性が低ければ一時的な休薬を考慮することも重要です。β3作動薬もCRBD改善効果が報告されています。

参考
Medicine (Baltimore). 2022;101(48):e32052.
Int Neurourol J. 2020;24(4):324-331


【5α還元酵素阻害薬について】
5α還元酵素阻害薬(フィナステリドなど)は尿道抵抗や排尿筋に直接作用しませんが、長期的に前立腺体積を縮小させることで、尿道閉塞を緩和し排尿機能を改善させます。カテーテル留置中の排尿には影響しませんが、前立腺肥大がある患者では抜去後の尿閉予防の目的で継続が推奨されます。

参考
Medicine (Baltimore). 2022;101(48):e32052.

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