【A】エンシュアHは1.5kcal/mLと高濃度の経腸栄養剤であり、下痢の副作用の可能性が考えられる。経腸栄養療法における下痢の発現は、「単位時間に多量の栄養剤の投与」「高浸透圧の栄養剤の投与 (高浸透圧の経腸栄養剤を投与すると腸管内の浸透圧が上昇し、下痢が発現する。)」「粘度が低く流動性が高い栄養剤の投与」などが要因と考えられる。そのため、投与時間を長くすること、量を少なくすること、水で薄めて浸透圧を下げることや粘度が高く流動性が低い栄養剤に変更することが下痢の予防となる。
また、エンシュアHは冷やすと服用感がよくなるが、下痢を引き起こす要因となる。そのため、冷たいまま薬剤を服用することを避け、体温に近い温度で服用することなども予防と一つとなる。
以下はエンシュアHの添付文書、インタビューフォームからの情報である。
164例中 23例 (14.0%) に副作用がみられた. その内訳は下痢15例 (9.1%), 胃部不快感3例(1.8%), 腹部膨満感2例 (1.2%) 等の消化器症状が主であった.
本剤は1ml あたり1.5kcalに調製されているため, 本剤を投与する場合, 低濃度 (1kcal / mL以下) の他の経腸栄養剤を投与し,下痢等の副作用が発現しないことを確認すること. また, 消化吸収障害がない患者には当初から本剤を投与してもよい.
本剤は他の経腸栄養剤に比べ, 高濃度 (1.5kcal / mL) に調製されているので, 下痢などの消化器系の副作用を生じる可能性が高い. このため, 低濃度の経腸栄養剤でこのような副作用の発現がないことを確認後, 本剤の投与に切り替えることにより副作用の発現を抑制できると考えられる.
高齢者では生理機能が低下していることが多いので,例えば1時間に50mLの低速度から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること (「心不全患 者への投与」「腎障害患者への投与」の項参照).
(解説) 消化器系の副作用(特に下痢の発生頻度が最も高い)は投与量,投与速度,患者側の身体的,精神的要因等さまざまな原因によって生じるが,投与法の調節により改善,消失し, 継続投与が可能であることもある.
(参考 : エンシュアH 添付文書, インタビューフォーム , Nutrition support journal, vol14, 5,9-11, 2005)