【A】以下のことから、最も空咳の副作用が少ないACE阻害薬は「イミダプリル」であると考えられます。
ACE阻害薬による副作用は、 ブラジキニンの作用増強による空咳が代表的な副作用として知られ ており、 日本人を含む東アジア人において他と比較して高頻度で認められることが報告さ れている。
ただし、空咳は副作用として認識されることが多いが、 高齢者等の誤嚥性肺炎の予防として使用される場合もある。
空咳の副作用が発現したからといって、忍容性の高い同系統薬剤( RAS阻害薬)であるARBへの安易な変更は、 高齢者の場合には誤嚥性肺炎を助長させる可能性があるため、 注意が必要である。
開発治験時における各種ACE阻害薬使用による空咳発生頻度(% )は、以下の通りである。
なお、試験に関しては2 つのACE阻害薬を比較しており、二重盲検試験となっている。
また、試験のほとんどがエナラプリルを対象としていること、 全てを同時に直接比較したわけではないことなどを念頭に置く必要 がある。
イミダプリル 0.9%(1/108):エナラプリル 7.0%(8/115)
シラザプリル 6.8%(10/148):エナラプリル 12.6%(19/151)
リシノプリル 7.0%(11/157):エナラプリル 5.6%(9/162)
ベナゼプリル 10.6%(12/113):エナラプリル 7.2%(8/111)
また、作用機序は不明であるものの、 サイアザイド系利尿薬を併用すると、単独群と比較して、 咳嗽の頻度が減少することも報告している。
笹栗らは自施設において、 イミダプリル以外のACE阻害薬から最も空咳の副作用が低いとさ れるイミダプリルへの切り替え試験を行っている。
対象者は本態性高血圧患者48名となっており、 切り替えにより83.3%の患者が咳嗽が軽減し、47.9% の患者が咳嗽が軽減したと報告している。
参考:
McDowell SE, et al:Systematic review and meta-analysis of ethnic differences in risks of adverse reactions to drugs used in cardiovascular medicine. BMJ, 332(7551):1177-1181, 2006.
荒川規矩男, ACE阻害薬新分類法の提案. PROGRESS IN MEDICINE, 13(10): 2191-2195, 1993.
McDowell SE, et al:Systematic review and meta-analysis of ethnic differences in risks of adverse reactions to drugs used in cardiovascular medicine. BMJ, 332(7551):1177-1181, 2006.
荒川規矩男, ACE阻害薬新分類法の提案. PROGRESS IN MEDICINE, 13(10): 2191-2195, 1993.
笹栗学ほか, ACE阻害薬の展望. 治療学, 30(8):923-926, 1996.
笹栗学ほか, 咳嗽発生に関するイミダプリルと他のACE阻害薬の比較予備試験 . 新薬と臨牀 43(12): 2467-2473, 1994.