【質問】ステロイドに対する過敏症・アレルギーはあり得るのか。その場合の治療法は?ほとんどすべての薬剤の禁忌の項目には「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」と記載されており、ステロイドに関しても同様の記載があります。一方で、薬剤性過敏症症候群の治療としてPMDAの重篤副作用疾患別対応マニュアルによると、ステロイドの全身投与が有効とあります。過敏症の治療にステロイドが使用されることから、ステロイドの投与により他の薬剤による過敏症の症状がマスクされることはあったとしても、ステロイド自体による過敏症の症状が起こり得るのか疑問に思えます。さらに、ステロイドによる過敏症があったとして、その際の治療法は被疑薬の中止以外あり得るのでしょうか。使用中のものとは別のステロイドが考慮されるのでしょうか。
【回答】コハク酸エステル型のステロイド注射薬は過敏症が見られることから、ステロイドによる過敏症はあり得ると考えられます。この場合の、過敏症による治療法は、「被疑薬の中止」、もしくは「リン酸エステル型のステロイド注射薬」、「経口ステロイド薬」が考慮されると考えられます。
また、併用薬はなく、経口ステロイドのみを服薬した患者に過敏症が発生したという副作用報告があります。(独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用データベース」より)
以上から、ステロイドの自体の過敏症の可能性はあると考えられます。
※情報不足した回答であるため、今後、追記が必要と考えられます。(2020年4月29日)
以下に詳細を記載します。
・「ソル・メドロール静注用」などの「コハク酸エステル型」のステロイド注射薬はアスピリン喘息既往やアレルギー素因がある患者に対して使用すると過敏症が誘発する可能性があります。その理由は「コハク酸エステル型」の構造を持つと体内のタンパク質と結合し、抗原として作用するため、過敏症が起こるとされています。一方で「デカドロン注射液」などのような「リン酸エステル型」の薬剤であれば、この機序による過敏症が起きないとされています。
・ステロイド自体の過敏症ではなく、NSAIDs過敏患者が反応しやすい「亜硫酸塩」や「パラベン」などの添加物による過敏症が起こる可能性があるため、注意が必要です。
・ステロイド注射薬が「コハク酸エステル型」に製剤化されている理由は、ステロイドは水に難溶性であるため、エステル構造にすることで溶解度を上昇させることができます。
・内服用ステロイドは「コハク酸エステル型」や「リン酸エステル型」ではない非エステル構造で、内因性コルチゾールに類似しているため、この機序の過敏症が起きないとされています。
・経口プレドニゾロンの単剤服薬による過敏症が副作用として報告されています。ただし、詳細については記載されていません。(独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用データベース」)