【質問】自家製剤加算について質問です。半錠は「同剤形」に「同規格」がなく割線があれば算定していますが、粉砕は「シロップ」や「散剤」「顆粒剤」など別剤形に変更可能なものがあれば算定していません。「サムスカ錠を粉砕して散剤としているが、顆粒剤しか存在しないため請求が通っている」といったような話を耳にしたのですが、改めて自家製剤加算の要件、条件分けを噛み砕いて教えていただきたいです。
【A】厚生省と審査機関の見解が異なりこともあり、レセプト審査機関による判断のため、明確は回答はできませんが、以下のとおり考えられます。
“「半錠は「同剤形」に「同規格」がなく割線があれば算定しています」”
→自家製剤加算は割線がなくても、均一に半割できると薬剤師が判断すれば、レセプト審査において算定が可能とされる場合があります。例えば、添付文書上において、「フルイトラン錠は割線である」と明確に記載されていませんが、以下のとおり、疑義解釈ではフルイトランなど客観的に均一にできる根拠があれば算定可能と記載されています。
処方せんに「半錠」の指示がある場合、自家製剤加算を算定できるか。
自家製剤加算の算定要件としては、剤形の変更が伴うものであるが、割線のある錠剤を半分に割る場合は剤形の変更が認められると判断し算定可能である、当然ながら割線のない錠剤の場合は、薬物動態及び品質上の問題がないことが前提であり、また、半錠の含量の製品が薬価収載されている場合には算定できない。 (平成16年3月10日 疑義解釈 P.8 )
割線ある錠剤の4分割は算定可能か?
フルイトランなど客観的に均一にできる根拠があれば算定可能。また、医師の了解を得た上で散剤として製剤した場合には、自家製剤加算が算定可能である。(平成16年3月10日 疑義解釈 P.8 )
割線がない錠剤を分割しても、薬物動態に影響なければ算定可能か。
含量の均一性を保障できない場合がある。ただし、医師の了解を得た上で散剤として場合には、自家製剤加算が算定可能である。(平成16年3月10日 疑義解釈 P.8 )
“「サムスカ錠を粉砕して散剤としているが、顆粒剤しか存在しないため請求が通っているといったような話を耳にしたのですが」”
→顆粒剤が服薬できない患者であるため、錠剤を粉砕していると考えれば、自家製剤加算の算定が可能と考えられます。しかし、サムスカ顆粒は微粒状の薬剤であり、粒径はかなり小さいので、「サムスカ顆粒は服薬できないが、粉砕されたサムスカ錠は服薬できる状況」は一般的には考えにくいです。
これらを踏まえて「サムスカ錠を粉砕して散剤としているが、顆粒剤しか存在しないため請求が通っている」のかは、それぞれの地域における審査機関の判断となりそうです。
日本薬局方第十五版以前は、散剤と顆粒剤は粒径の違い (ふるいによる粒度試験)によって分類されていました。
「散剤」‥「医薬品を粉末又は微粒状に製したもの」
「顆粒剤」‥「医薬品を粒状に製したもの」
日本薬局方第第十六改正以降は、製法の違いに変更されました。
「散剤」‥「経口投与する粉末状の製剤」
「顆粒剤」‥「経口投与する粒状に造粒した製剤」第十五版以前では微粒状の薬剤は「散剤」に分類されていたが、現在は「顆粒剤」に分類されています。
“自家製剤加算の要件、条件分けを噛み砕いて教えていただきたい”
自家製剤加算 まとめ
- 医師の指示に基づき、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫を行う
- 割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、算定可能
- 分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。(例 : アーチスト錠2.5mg 半錠 ‥アーチス錠1.25mgの規格があるため算定不可)
- 自家製剤加算を算定した場合は、計量混合調剤加算は算定不可
- 賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載する
- 医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行う
自家製剤加算 (厚生労働省)
ア 「注6」の自家製剤加算は、イの(1)に掲げる場合以外の場合においては、投薬量、投薬日数等に関係なく、自家製剤による1調剤行為に対し算定し、イの(1)に掲げる錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬を自家製剤の上調剤した場合においては、自家製剤を行った投与日数が7又はその端数を増すごとに所定点数を算定する。
イ 本加算に係る自家製剤とは、個々の患者に対し市販されている医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づき、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫 (安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等必要と認められる添加剤の使用、ろ過、加温、滅菌等)を行った次のような場合であり、既製剤を単に小分けする場合は該当しない。
(イ) 錠剤を粉砕して散剤とすること。
(ロ) 主薬を溶解して点眼剤を無菌に製すること
(ハ) 主薬に基剤を加えて坐剤とすること。ウ 「注6」のただし書に規定する「別に厚生労働大臣が定める薬剤」とは、薬価基準に収載されている薬剤と同一剤形及び同一規格を有する薬剤をいう。
エ 薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形剤を加え、当該医薬品と異なる剤形の医薬品を自家製剤の上調剤した場合に、次の場合を除き自家製剤加算を算定できる。
(イ) 調剤した医薬品と同一剤形及び同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合
(ロ) 液剤を調剤する場合であって、薬事法上の承認事項において用時溶解して使用することとされている医薬品を交付時に溶解した場合オ 割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、錠剤として算定する。ただし、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。
カ 自家製剤加算を算定した場合には、計量混合調剤加算は算定できない。
キ 「予製剤」とは、あらかじめ想定される調剤のために、複数回分を製剤し、処方せん受付時に当該製剤を投与することをいう。
ク 通常、成人又は6歳以上の小児に対して矯味剤等を加える必要がない薬剤を6歳未満の乳幼児(以下「乳幼児」という。)に対して調剤する場合において、薬剤師が必要性を認めて、処方医の了解を得た後で、単に矯味剤等を加えて製剤した場合であっても、 「注6」の「イ」を算定できる。
ケ 自家製剤を行った場合には、賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載すること。
コ 自家製剤は、医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行うこと。