【A】「アズノール軟膏0.033%」は口腔内への適応はないため、原則として使用は不可です。しかし、「アズノール軟膏0.033%」の添加物は【精製ラノリン、白色ワセリン】であり、口腔内に入っても刺激感は少ないと考えられます。そのため、歯科領域において臨床では使用されることがありますが、使用について慎重に考える必要があります。
(参考 : アズノール軟膏0.033%添付文書)
アズノール軟膏を口腔内で使用することを積極的に推奨する明確な「通達」は、主要な歯科口腔関連学会からは確認されていません。
むしろ、各学会はその使用について下記の通り慎重な姿勢を示しています。
学会・企業の見解
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製薬会社からの見解 (日本新薬)
「口腔内への使用は適応外であり、有効性・安全性の確認は行っていない。口腔用製剤 (アズノールST錠、うがい液など)への変更を推奨します。」と明確に記載されています。口腔用製剤への変更を推奨しています。 -
日本口腔外科学会
口腔粘膜炎治療のガイドラインにはアズノール軟膏を含めておらず、明確な推奨はありません。 -
日本口腔ケア学会
ガイドラインでは主要治療薬にアズノール軟膏を挙げておらず、あくまで「口唇の保湿」としての使用報告がある程度で、広範な病変への使用は推奨されていません。 -
日本歯周病学会などの倫理的指針
適応外使用には、インフォームドコンセントや必要性の明確な証明が必要とされ、安易な使用は戒められています。
適応と成分に関する留意点
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承認適応は皮膚疾患(湿疹・熱傷・潰瘍など)のみ
口腔内は適応外です -
添加物に注意
精製ラノリンはまれにアレルギーを起こし、白色ワセリンは閉塞性が高く口腔内では違和感や汚れの付着の原因となる可能性があります。
実際の現場
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歯科現場での保湿目的の例
藤枝市の資料では、唇や口角炎への塗布例が紹介されており、保湿剤として処方されることもありますが、これも限定的な使用にとどまります。https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/material/files/group/111/kouku.pdf
まとめると
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安全性・有効性は未検証
ラノリンアレルギーや広範囲病変では特に慎重な評価が必要です。 -
使用判断は医師の責任で限定的に
承認薬が使用できない場合や、ごく限られた局所に対して、医師がリスク・ベネフィットを評価したうえで使用されることになります。 -
第一選択は口腔用製剤
アズノールST錠や含嗽液など、口腔用に承認された製剤の使用が最も推奨されます。