【質問】副作用の重症度を評価する際にCTCAEのGradeが一つの参考になりますが、重症度を評価できてもどの辺りからそれが被疑薬の中止や治療薬追加の提案の必要があるかまでは記載されていません(抗がん剤であれば添付文書に記載されていますが)。これについて参考になる基準、もしくは実際の介入例があれば教えていただきたいです。
【A】CTCAEは「有害事象の共通用語規準」の略です。National Cancer Institute (アメリカ国立がん研究所) のCancer Therapy Evaluation Program(CTEP)から公表されており、日本語版はJCOG (Japan Clinical Oncology Group/日本臨床腫瘍研究グループ) が日本語訳を行なっています。
CTCAEはがんの治療法の安全性評価を容易にし、全てのがん領域での有害事象の記録や報告を標準化し、世界共通で使用する目的で開発されたため、有害事象が比較的多いがん領域において使用されることが多くなっています。また、「がん化学療法の臨床試験における副作用評価」に用いられていることから、抗がん剤の添付文書においてCTCAEによる休薬、減量及び中止基準が記載されているものがあります。
例えば、「経口ヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤であるロンサーフ配合錠」、「リンパ腫などに使用されるトレアキシン点滴静注」、「インターフェロン製剤のペグイントロン皮下注」が挙げられます。
ロンサーフ配合錠
末梢神経障害 【投与開始基準・投与再開基準 Grade 2以下】 【休薬基準Grade 3以上】
非血液毒性 【投与開始基準 投与再開基準 Grade 1以下(脱毛、味覚異常、色素沈着、原疾患に伴う症状は除く) 休薬基準Grade 3以上レンビマカプセル
高血圧【中止基準 Grade 4】
血液毒性及び蛋白尿【休薬基準 Grade 3。投与開始前の状態又はGrade 2以下に回復するまで休薬】
上記以外の副作用【休薬基準 忍容性がないGrade 2。投与開始前の状態若しくはGrade 1以下に回復するまで休薬する、又は本剤の投与量を1段階減量して投与を継続する】
【中止基準 Grade 4】トレアキシン点滴静注用100mg
【休薬基準 Grade2以下の非血液毒性 減量または中止基準 】【Grade3以上の非血液毒性】ペグイントロン皮下注用50μg/0.5mL用
【非血液毒性 休薬基準 Grade 3。Grade 1以下になるまで本剤の投与を休薬する。本剤の投与を再開する場合、投与量を1段階下げる】
【中止基準 Grade4 】ランマーク皮下注120mg
【中止基準 Grade3又は4 】(各社 添付文書 改変)
米国FDAは、腫瘍においては、Grade3、Grade4の有害事象に加えて、心臓、肝臓などの重要な臓器に影響を与えるGrade2の有害事象のデータも報告すべきであると言及されています。(Determining the Extent of Safety Data Collection Needed in Late-Stage Premarket and Postapproval Clinical Investigations (FDA))
一方で、抗がん剤以外の薬剤については、明確な中止基準が定められていません。以下は個人的な見解となります。
・抗がん剤の添付文書のCTCAEを確認すると、休薬や中止基準がGrade3や4が多いことがわかります。
・抗がん剤以外の薬剤は、どのGradeの有害事象発現で中止とするかは、決定しづらいとは考えられます。それは、CTCAEをどのような理由で使用するのかによって異なり、患者に対する忍容性や効果によって判断する必要があるからです。
・抗がん剤の添付文書や実臨床においてはGrade2以上であれば、報告する必要があるとは考えています。
・CTCAEはカンファレンスなどにおける他職種連携で、情報共有する際に非常に有用だと思います。
添付文書においてCTCAEを用いて休薬や中止基準が設定されている薬剤
・5-FU注
・アーリーダ錠
・アイクルシグ錠
・アイクルシグ錠
・アフィニトール錠
・アラノンジー静注用
・イクスタンジ錠
・イストダックス点滴静注用
・イブランス錠・カプセル
・イミフィンジ点滴静注
・イムブルビカカプセル
・イリノテカン塩酸塩点滴静注液
・ヴァンフリタ錠
・ヴォトリエント錠
・エムプリシティ点滴静注用
・エルプラット点滴静注液
・エンハーツ点滴静注用
・オキサリプラチン点滴静注
・オニバイド点滴静注
・カイプロリス点滴静注用
・ガザイバ点滴静注
・カドサイラ点滴静注用
・カプレルサ錠
・カペシタビン錠
・カボメティクス錠
・カンプト点滴静注
・キイトルーダ点滴静注
・サークリサ点滴静注
・ザーコリカプセル
・ザノサー点滴静注用
・ザルトラップ点滴静注
・ジェブタナ点滴静注
・ジオトリフ錠
・ジカディアカプセル
・ジカディア錠
・ジフォルタ注射液
・スーテントカプセル
・スチバーガ錠
・ゼルボラフ錠
・ゼローダ錠
・ゾーフィゴ静注
・ゾスパタ錠
・ゾリンザカプセル
・タイケルブ錠
・タグリッソ錠
・タフィンラーカプセル
・タブレクタ錠
・ダラザレックス点滴静注
・タルグレチンカプセル
・タルセバ錠
・テセントリク点滴静注
・テプミトコ錠
・トポテシン点滴静注
・トレアキシン点滴静注用
・ニンラーロカプセル・バベンチオ点滴静注
・ハラヴェン静注
・ビーリンサイト点滴静注用
・ビジンプロ錠
・ビダーザ注射用
・ビラフトビカプセル
・ファリーダックカプセル
・フルオロウラシル注
・ベージニオ錠
・ペグイントロン皮下注用
・ベスポンサ点滴静注用
・ベネクレクスタ錠
・ベルケイド注射用
・ベレキシブル錠
・ボシュリフ錠
・ポマリストカプセル
・マブキャンパス点滴静注
・ムンデシンカプセル
・メキニスト錠
・メクトビ錠
・ヤーボイ点滴静注液
・ヨンデリス点滴静注
・ランマーク皮下注
・リムパーザ錠
・レブラミドカプセル
・レンビマカプセル
・ローブレナ錠
・ロズリートレクカプセル
・ロンサーフ配合錠T