オセルタミビルDS3%は新生児・乳児は3mg/kg、幼小児は2mg/kgと用量が異なる理由は?

【質問】オセルタミビルDS3%の用法は何故、幼小児の場合:2mg/kgに対して新生児、乳児の場合:3mg/kgとなっているのでしょうか。

【A】タミフルドライシロップ3%は日本において2002年7月に発売された後、2017年03月24日に新生児・乳児への適用が追加となりました。実はすでに、2016年11月16日に開催された医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、新生児・乳児に対する公知申請に該当されていました。未承認薬・適応外薬検討会議における資料に新生児・乳児は3mg/kgとなった経緯が書かれています。

簡単にまとめると、

  • 米国、英国、ドイツ、フランス、オーストラリアなどの世界各国で1歳未満に1回3mg/kg で承認されている
  • インフルエンザウイルス感染症の治療において、国内外の医療環境に大きな違いはないと考えられる
  • 1歳以上の小児では明らかな民族差は認められない
  • 1歳未満の小児に対しても有効性が期待できる
  • 1歳未満のインフルエンザ感染児を対象としたオセルタミビルの使用実態が4報があり、安全性に問題がなかった
  • 日本小児感染症学会が1歳未満の小児に3mg/kgで使用された22例で効果と副作用に問題がなかった

以上のことから1回3mg/kgとなりました。

生後8カ月未満の乳児に対しては、1回3mg/kgが適切ですが、9〜11カ月の乳児に対する用量は3.5 mg/kgが適切であると報告や、1歳未満の乳児において1回2.35~3mg/kgが適切であると報告があります。さらに1~2歳は3~5歳よりもオセルタミビルおよびそのカルボン酸塩クリアランスが高い報告もあります。

これらを踏まえた上で、1歳未満は1回3mg/kg、1歳以上は1回2mg/kgで必ずしも分けられるわけではないが、効果と副作用が妥当である範囲と考えられ、3mg/kgとなったと考えられます。

生後8カ月未満の乳児に対するオセルタミビルの適切な1日2回経口投与量は3.0mg/kgであり,生後9~11カ月の乳児に対する用量は3.5mg/kgである。
(J Infect Dis 2013 Vol. 207 Issue 5 Pages 709-20)

4名の1歳未満の乳児において、2.35~3mg/kg/回を1日2回投与した場合、良好な忍容性を示した、目標曝露量に達した。
(Clin Transl Med 2016 Vol. 5 Issue 1 Pages 37)

1~2歳の若年層におけるオセルタミビルおよびそのカルボン酸塩の平均体重標準化経口クリアランス (259ml/min/kgおよび12.2ml/min/kg)は,3~5歳の高齢層(170ml/min/kgおよび9.4ml/min/kg)のそれよりもそれぞれ52%および30%高いことがわかった。
(Eur J Clin Pharmacol 2003 Vol. 59 Issue 5-6 Pages 411-5)

 

Tahara T et al. Investigation of the safety of oseltamivir in infants less than 1 year of age infected with influenza, 2003/2004 season in Japan. Pediatr Infect Dis J. 2011; 6: 31-5.16) (後ろ向き研究)

本研究の目的は、1歳未満の小児におけるオセルタミビル投与時の安全性を評価することであり、2003~2004年のインフルエンザ流行シーズンに157施設でオセルタミビルが投与された小児の安全性データが収集された。771 例の小児(日齢の平均値±標準偏差:272±74.86 日、 範囲:15~366 日、0~89 日齢:1.9%、90~179 日齢:11.5%、180~269 日齢:28.1%、270~ 359 日齢:52.9%、360~366 日齢:5.4%)に対して、1日平均投与量3.84 mg/kg(範囲:1.85~6.25 mg/kg、3.4mg/kg 以下:17.9%、3.5 mg/kg以上 4.4mg/kg 以下:73.5%、4.5 mg/kg以上: 6.1%、不明:2.5%)のオセルタミビルが投与された。有害事象及び副作用は、それぞれ5.3%(41/771 例)及び 3.2%(25/771 例)に認められた。有害事象として、下痢(15 例)が最も多く、次いで嘔吐(6 例)が認められた。重篤な有害事象は4例[非熱性又は熱性の痙攣3例及び呼吸不全 1 例]に認められ、いずれもオセルタミビルとの関連はないと判断された。なお、呼吸不全1 例の転帰は死亡であった。高熱を伴うインフルエンザウイルス感染により、小児では非熱性又は熱性の痙攣及び呼吸不全が発現することがよく知られている。本研究では、1 歳未満の小児に対するオセルタミビル投与の安全性に懸念は認められなかったが、今後もオセルタミビルの副作用について更なる調査が必要である。

 

Tahara T et al. Safety of oseltamivir in infants less than one year old: prospective surveillance during the 17) 2004–2005 influenza season in Japan. Pediatr Infect Dis J. 2013; 8: 71-81. (前向き研究) 

本研究の目的は、1歳未満の小児でのインフルエンザの治療及びオセルタミビルの安全性を評価することであり、2004~2005年のインフルエンザ流行シーズンに中央登録方式により219施設で調査が実施され、1歳未満の小児1,663例(月齢の平均値±標準偏差:7.9±2.5カ月、6カ月齢超:82.0%)の安全性データが収集された。オセルタミビルの 1 日平均投与量は3.8mg/kg(範囲:1.6~8.2mg/kg、第1四分位点:3.7 mg/kg、第2四分位点:3.9 mg/kg、第3四分位点:4.0mg/kg)であった。未投薬コホート(コホート A)、オセルタミビル投与コホート(コホートB)、抗ウイルス薬以外の薬剤の治療コホート(コホートC)の3コホートが設 定され、有害事象は、コホートA 26.7%、コホートB30.0%、コホートC21.5%に認められ、 副作用は、コホートB 6.7%、コホート C0.9%に認められた。コホートBで多く認められた副作用は下痢、低体温、嘔吐及び発疹であった。コホートBにおける副作用について、いずれも治療可能な症状であり、オセルタミビルが投与された1歳未満の小児で過去に報告された副作用と一致していた。本研究の解析結果から、1歳未満の小児におけるオセルタミビル投与の安全性は、臨床的に許容可能であることが示された。

 

Okamoto S et al. Experience with oseltamivir for infants younger than 1 year old in Japan. Pediatr Infect Dis J. 2005; 24: 575-6.18) (後ろ向き研究)

2002~2003年のインフルエンザ流行シーズンに、本邦の2 病院でインフルエンザに対してオセルタミビルが投与された1歳未満の小児103例について、インフルエンザ症状発現から1週間以内の精神状態の異常として定義される脳症及び死亡の発現状況が調査された。本調査では追跡不能例1例を除く102 例において、死亡又は脳症の発現は認められなかった。

 

Tamura D et al. Oseltamivir phosphate in infants under 1 year of age with influenza infection. Pediatr 19) Int. 2005; 47: 484. (後ろ向き研究) 

2001~2004年に、オセルタミビルが投与された1歳未満の小児(コホートA:47 例、月齢 7.3±2.7 カ月、範囲1~11カ月)、1 歳以上の小児(コホー B:486 例、年齢 6.8±4.1 歳、範 囲 1~15 歳)、オセルタミビル未投与の小児(コホートC:95 例、年齢 3.6±7.4 歳、範囲 1~15 歳)について有効性及び安全性が評価された。オセルタミビルの用法・用量は、4mg/kg/ 日の5日間であった。発熱期間はコホートA(2.7±1.7 日)とコホートB(2.5±2.1 日)で差異はなく、コホート C(4.2±3.8 日)よりも短かった。有害事象は、コホートA 2.1%(1/47 例)、コホートB 8.4%(41/486 例)に認められた。コホートA 及びコホートBともに、オセ ルタミビルと関連する重篤な有害事象は認められなかった。以上より、1 歳未満の小児のイン フルエンザ治療におけるオセルタミビルの安全性及び有効性が示された。

 

1 歳未満の小児を対象としたオセルタミビルの投与量の国内使用実態調査 (前向き研究)

1 歳未満の小児におけるオセルタミビルの投与量について、日本小児感染症学会が使用実態調査(実施期間:2015年12月~2016年5月、国内13施設)を実施した。1 歳未満の小児 (1カ月齢~11カ月齢)にオセルタミビル3mg/kg BID が使用された患者として22例報告さ れ、このうち81.8%(18/22 例)において、インフルエンザに対する臨床効果は「有効」と判定された。また、全ての患者において、有害事象、副作用の発現は報告されなかった。

 

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