【Q】化学療法実施中の患者に対してインフルエンザワクチンを投与することは可能か?

【A】可能であると考えられる。有害事象は増加しないという報告があり、インフルエンザワクチンの投与を推奨する報告が多数ある。
また、化学療法開始前なら2週間前までに,また治療中であれば骨髄機能の最下点(nadir)の時期を避けて接種することが望ましいとの報告もある。インフルエンザワクチンを打つタイミングを化学療法のインターバル期間に摂取するなど報告は様々であり、各施設の医療担当者の裁量と判断になる。
以下を参考とした。

 

2015年 乳癌診療ガイドライン 
推奨グレードはB 。(推奨はすすめられる)
化学療法中は一時的な免疫能低下状態となるため感染の高リスク群である。その状態でインフルエンザに罹患すると重篤な状況になることが懸念されるほか,化学療法のスケジュールが遅延する可能性もあり,インフルエンザワクチン投与が検討されるが,一方,化学療法中のワクチン投与の安全性や有効性も懸念される。

 

接種のタイミングについては、化学療法施行中より、化学療法のインターバルに打つ方が抗体産生能は良いと報告されている。
Ortbals DW, Liebhaber H, Presant CA, Van Amburg AL, 3rd, Lee JY. Influenza immunization of adult patients with malignant diseases. Annals of internal medicine. 1977;87:552-7.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/921082

 

軽度から中等度の化学療法を受けているがん患者では予防摂取すべきである。化学療法中のインフルエンザワクチン投与の安全性に関する報告は少ないが,特に重篤な有害事象が増加するという報告はない。

Nordøy T, Aaberge IS, Husebekk A, Samdal HH, Steinert S, Melby H, et al. Cancer patients undergoing chemotherapy show adequate serological response to vaccinations against influenza virus and Streptococcus pneumoniae. Med Oncol. 2002 ; 19 (2) : 71‒8.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12180483

 

 

メキシコにおける研究。がん患者では予防摂取すべきである。化学療法以外の乳癌症例も含めた解析であるが,接種部位の疼痛(12.7%),頭痛(12%),鼻汁(10%),疲労感(9.2%),8~12時間程度の微熱など軽度の有害事象を認めた。
4) Vilar‒Compte D, Cornejo P, Valle‒Salinas A, Roldán‒Marin R, Iguala M, Cervantes Y, et al. influenza vaccination in patients with breast cancer:a case‒series analysis. Med Sci Monit. 2006;12 (8) :332‒336.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16865064

 

HIV感染患者、癌患者、移植レシピエント、HIV陽性患者など免疫能が低下した患者に対するインフルエンザワクチンは,血清学的な反応は健常人と比較して劣る可能性はあるものの,予防的な医学的な意義は明らかであることがメタアナリシスにより示されている。

Beck CR, McKenzie BC, Hashim AB, Harris RC, Zanuzdana A, Agboado G, et al. Influenza vaccination for immunocompromised patients:systematic review and meta‒analysis from a public health policy perspective. PLoS One. 2011;6(12):e29249.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22904335

Beck CR, McKenzie BC, Hashim AB, Harris RC, Zanuzdana A, Agboado G, et al. Influenza vaccination for immunocompromised patients:summary of a systematic review and meta‒analysis. Influenza Other Respir Viruses. 2013;72:72‒75.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24034488

 

化学療法開始より少なくとも2週間前の接種が望ましいというレビューがあるため,具体的な接種時期を推奨するエビデンスはないが,化学療法開始前なら2週間前までに,また治療中であれば骨髄機能の最下点(nadir)の時期を避けて接種することが望ましい。

Arrowood JR, Hayney MS. Immunization recommendations for adults with cancer. Ann Pharmacother. 2002;36(7‒8):1219‒29.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/120865

 

悪性腫瘍の患者に対するインフルエンザ予防接種に関するガイドラインは存在しない。 124,125件の推奨ワクチン接種から、化学療法開始より少なくとも2週間前の接種が望ましいと思われる。

Kunisaki KM, Janoff EN. Influenza in immunosuppressed populations:a review of infection frequency, morbidity, mortality, and vaccine responses. Lancet Infect Dis. 2009;9 (8) :  493‒504.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19628174

 

 

 

 

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