【A】アザルフィジンEN錠に含有されている「5-アミノサリチル酸」はアスピリン喘息やNSAIDs喘息を引き起こす可能性があります。さらに、アザルフィジン(成分名 : サラゾスルファピリジン)服薬後に喘息症状が誘発された副作用報告もあるため、投与は避けたことが望ましいと考えられます。
【解説】アザルフィジン(成分名 : サラゾスルファピリジン)の添付文書には「サルファ剤又はサリチル酸製剤に対し過敏症の既往歴のある患者に対し、禁忌である」と記載されています。
禁忌
サルファ剤又はサリチル酸製剤に対し過敏症の既往歴のある患者本剤は体内で5-アミノサリチル酸(5-ASA)とスルファピリジン(SP)に分解される。従って、サルファ剤又はサリチル酸製剤に過敏症の既往歴のある患者に本剤を投与すると、過敏反応を示すおそれがあるので、これらの患者には投与しないこと。
(アザルフィジンEN錠 添付文書)
なぜアザルフィジンはサリチル酸製剤に過敏症がある患者に禁忌なのか?
サラゾスルファピリジンは抗炎症作用を有する5-アミノサリチル酸と抗菌作用を有するスルファピリジンを結合組織への親和性を高める目的でアゾ結合させた化合物である。
(アザルフィジンEN錠 インタビューフォーム )
→サラゾスルファピリジンは体内で「5-アミノサリチル酸」とスルファピリジンに分解されるため、サリチル酸製剤に過敏症がある患者には禁忌となっています。
「5-アミノサリチル酸」はアスピリン喘息(NSAIDs喘息)の既往患者に対して、投与可能か?
アスピリン喘息(NSAIDs喘息)は、COX阻害作用(特にCOX-1阻害)をもつアスピリンなどのNSAIDsにより喘息発作などが生じる過敏症です。
「5-アミノサリチル酸」にアスピリンと同様のCOX-1阻害作用があれば、アスピリン喘息(NSAIDs喘息)を引き起こす可能性があります。しかし「アミノサリチル酸」の作用機序は不明であり、COX-1阻害作用があるかどうかが不明です。
アスピリン喘息(NSAIDs喘息)はCoX-1阻害薬をしないセレコックスなどでは起こらないと報告されています。(日本内科学会雑誌第102巻, 第6 号)
「5-アミノサリチル酸」がCOX-1を阻害しない薬剤であれば、アスピリン喘息(NSAIDs喘息)は発症しないとは考えられますが、逆に「5-アミノサリチル酸」がCOX-1を阻害する薬剤であれば、アスピリン喘息(NSAIDs喘息)は発症する可能性があると考えられます。
実臨床におけるアスピリン喘息(NSAIDs喘息)の診断について
実臨床においては、アスピリンの服薬後に、過敏症状が発現したため、アスピリン喘息と診断されたケースもありえると考えられます。つまり、アスピリン自体にアレルギーがあり、過敏症が発生したケースです。
アスピリンは『アセチルサリチル酸』であり、「5-アミノサリチル酸」と基本骨格は似ています。そのため、このような患者が『アセチルサリチル酸』と基本骨格が似ている「5-アミノサリチル酸」を服薬すると過敏症を引き起こしてしまう可能性があります。
サラゾスルファピリジンの副作用報告は?
厚生労働省の副作用データベースで検索してみると、2つの症例を検索することができました。
症例1 : サラゾスルファピリジンを服薬後、6日後に喘息、薬疹、呼吸不全、血小板減少、肝障害、薬物過敏症が発現した。併用薬としてロキソプロフェンNa、ランソプラゾール、アセトアミノフェン。被疑薬としてサラゾスルファピリジンが挙げられている。
症例2 : サラゾスルファピリジンを開始してから約1ヶ月後に好酸球増加と全身症状を伴う薬物反応、約2ヶ月後に白血球増加症と喘息が発現した。併用薬としてイブプロフェン、セフテラムピボキシル、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物・l-グルタミン。被疑薬としてサラゾスルファピリジンが挙げられている。
【独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用データベース」
医薬品副作用データベース(英名:Japanese Adverse Drug Event Report database、略称;JADER)はPMDAのホームページで無料公開されています。
結論は、アザルフィジンEN錠に含有されている「5-アミノサリチル酸」はアスピリン喘息やNSAIDs喘息を引き起こす可能性があります。また、実際に喘息症状が誘発された副作用報告もあるため、アザルフィジンEN錠はアスピリン喘息(NSAIDs喘息)既往の患者への投与は避けたほうが望ましいと考えられます。
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