【質問】チュアブルについて、錠剤の服用が難しい方に練習にもなる「噛んで飲める≒飲み込めるなら噛まなくてもよい」剤形であると考えていましたが、ピートルのように噛み砕く必要がある薬剤もあると学びました。添付文書やインタビューフォームを見ても、噛まずに水で服用した動態や効果、可否についての記載がないものもあります。チュアブルという剤形について、各薬剤の注意点など個別に理解しておく必要のある情報はなにかありませんか?
余談にはなりますが、噛み砕かなくてもよいものと、必ず噛み砕かなければならないものではどちらが多いのでしょうか?
【A】チュアブル錠は基本的には「噛み砕く or 口腔内で溶かす」必要がある製剤です。しかし、チュアブル錠には「噛み砕く必要がある薬剤」と「噛み砕かなくてもよい薬剤」があります。例えば、「ホスレノールチュアブル錠」は効果が低下する可能性があるため噛み砕く必要があります。反対に、「ピートルチュアブル錠」や「キプレス・シングレアチュアブル錠」は噛み砕かなくても十分な効果が期待できると考えられます。以下に詳細を記載します。
チュアブル錠は,咀嚼して服用する錠剤である。 本剤は,服用時の窒息を防止できる形状とする。(第十七改正日本薬局方)
咀嚼‥口腔内の食物を上下の歯列間で切断、圧砕し、大量の唾液と混和させて一つの食塊を形成し、嚥下に引き継ぐまでの消化過程。(医学書院 医学大辞典 第2版)
→日本薬局方において、チュアブル錠は「咀嚼して服用する製剤」と定義されています。現在薬価収載されているチュアブル錠は以下の通り、5成分しかありません。(商品名にチュアブルがついている薬剤)
- ピートルチュアブル錠250mg,500mg
- キプレスチュアブル錠5mg
- シングレアチュアブル錠5mg
- デノタスチュアブル配合錠
- ホスレノールチュアブル錠250mg,500mg (後発品はOD錠になっており、チュアブル錠はない)
- キプレス/ シングレアチュアブル錠5mgの後発品
1. 噛み砕かなくても効果発現する薬剤
ピートルチュアブル錠
適応 : 透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
本剤は口中で噛み砕いて服用すること。チュアブル錠の有効成分であるスクロオキシ水酸化鉄は主に水にほとんど溶けない成分で構成されており,また,チュアブル錠に占める有効成分の割合も高いため,通常のチュアブル錠の服用方法である「口中で溶かすか,噛み砕いて服用すること」とは異なる設定とした。(インタビューフォーム)
→インタビューフォームには噛み砕く必要があると記載されています。
崩壊試験
【pH1.2、pH4.0、pH6.8、水】の条件で平均崩壊時間が12〜15分 (最小11- 最大16)
崩壊試験の判定は、日局 一般試験法 崩壊試験法に従った。試験液は以下の通り。
pH1.2 液:日局溶出試験第1 液、pH4.0 液:薄めたMcIlvaine 緩衝液、pH6.8 液:日局溶出試験第2液
(インタビューフォーム )崩壊試験法とは?
錠剤
試験液に水を用い、補助盤を入れ、30分間上下運動を行った後、観察するとき、試料の残留物をガラス管内に認めないか、又は認めても海綿状の物質であるか、若しくは、軟質の物質若しくは泥状の物質がわずかなときは適合とする。
→ ピートルチュアブル錠の崩壊試験の結果を確認すると、平均12〜15分程度で崩壊することがわかります。崩壊試験法から錠剤は「30分以内に崩壊すること」が規定されていますが、ピートルチュアブル錠は体内で最大でも16分で溶解するので、噛み砕かずに服薬することは可能であると考えられます。しかし、薬剤が大きく、安全性と飲みやすさを考慮すると、やはり噛み砕いて服用することが推奨されます。
キプレスチュアブル錠、シングレアチュアブル錠
適応 : 気管支喘息
本剤は、口中で溶かすか、噛み砕いて服用すること。(添付文書)
→添付文書には、口内で溶かすか噛み砕く必要があると記載されています。
添加物の中には崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムが含有されています。
モンテルカストチュアブル
試験液にラウリル硫酸ナトリウム溶液(1→ 200) 900 mLを用い、パドル法により、毎分50回転で試験を行うとき、本品の20分間の溶出率は85%以上である。(第十七改正日本薬局方)過酷試験(室温25%・湿度85%)開始時に崩壊時間を測定したところ、1.8分で崩壊する。(月刊薬事 58,15)
→これらの記載から、胃に到達すれば、チュアブル錠が崩壊して、効果発現するため、咀嚼は必要ないと考えられます。
2. 噛み砕く必要がある薬剤
ホスレノールチュアブル錠
適応 : 慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
本剤は噛み砕かずに服用すると溶けにくく、腸管穿孔、イレウスを起こした例の中には噛み砕いていない例もある。また、十分に噛み砕かずに服用し、本剤を誤嚥した症例が報告されているので、口中で十分に噛み砕き、唾液又は少量の水で飲み込むよう指導す ること。なお、噛み砕くことが困難な患者(高齢者等)には、本剤を粉砕して投与することが望ましい。(インタビューフォーム )
→噛み砕く必要があるとインタビューフォームに記載されています。
炭酸ランタン咀嚼群 9例 VS 炭酸ランタン非咀嚼群
→非咀嚼群は内服前と内服後の3ヶ月間の平均血清リン濃度の有意差はないが、咀嚼群は有意に平均血清リン濃度が低下した。腹部単純X線
咀嚼3回群→消化管内に5mm以上の残像
咀嚼10回群→小さな残像をわずかに認めた
咀嚼20回分→残像はほとんど認められない。
炭酸ランタンは回数10回以上の咀嚼が必要である
(Therapeutic Research Volume 32 : 661 – 666, 2011)
→ホスレノールチュアブル錠は噛み砕かないと効果が低下すると報告されています。
3. 噛み砕く必要があるか不明な薬剤
デノタスチュアブル配合錠
適応 : RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防
用法及び用量に関連する使用上の注意
かみ砕くか、口中で溶かして服用すること。
(添付文書)
→デノタスチュアブル配合錠に関して、咀嚼する必要があるかどうかの情報はありません。大きさが大きいこともあり、チュアブル錠の本来の服薬方法である噛み砕くか、口中で溶かして服用することが必要と考えられます。